20年に渡って隅々にまで手を入れてきた1台

油冷エンジンは空冷同様のシンプルさの上にコンパクトでハイパワーという特性を持っていたから、プロからプライベーターまで、じつに多くのライダーがチューニングを試み、草レースにも広く使われた。とくにSS(スタンディングスタート)から1/4マイル、約402.1m先のゴールまでのタイムと先着を競うドラッグレースでは、1990年代には多く使われたものだ。

ちょうど油冷エンジンがレーサーレプリカ用からスポーツネイキッド用へと移行する頃で、レプリカ=GSX-R1100/750用エンジンのスープアップメニューはドラッグレースでさらに磨かれた。

現在でも日本最大の2輪ドラッグレースシリーズ、JD-STERに参加する油冷ユーザーは複数いる。そのうち、先の’90年代からドラッグレースに参加し続けているベテランライダーが、木内登喜雄さん。その愛車が、このGSF1200だ。

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2004年にJD-STERが始まると、そこにGSFで参戦する。リヤに公道走行可能なラウンドタイヤを履き、ウイリーバーはなしで灯火類も備えることとして、アメリカで1999年に起こって人気を得たSBS=ストリートバイク・シュートアウトクラス。JD-STERでもメインとなるオープンクラスにその概念を取り込んだこともあり、ライバルも含めてストリートスタイルの延長で戦える。有利なタイヤはあるがドラッグコース専用ではなく、灯火類もわざわざ外さなくていい。ウイリーバーを付けた時に必要となるリヤのリジッド化もしなくていい。

そこに木内さんは一貫して参戦してきた。「ここまでにやるべきところは出来うる限り、手を付けたかな。この先はもう、油冷以外は考えられない」と自ら語るように、車両にもかなりの手が入る。軸となるエンジンはドラッグチューンにもストリートチューンにも強いレッドモーターで組み上げ、それ以外の車体まわりは極力、木内さん自身が仕立てていった。

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そうそう、オレンジ×ブラックにフレアパターンを配した外装も長いことドラッグレースを見てきたファンにはおなじみだろう。さらに、今ではロングタイプの製作をしないというウイリー製のロングスイングアームやミクニレーシング(現・アグラス)といったパーツたちを見ても、歴史が感じ取れる。油冷のパフォーマンスに惚れ込み、自らそれを伸ばすべく手を入れ、乗ってきたGSF。木内さんはまだまだ現役だから、このGSFの勇姿もJD-STERドラッグレースでこの先も見られるはずだ。

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ハンドルバーはほぼ真っ直ぐな、いわゆるドラッグバーをアントライオン製ライザーでマウント。インジケーターはGSFでメーター類をGSX-R1100に換装、メーターバイザーやヨシムラ・デジタルマルチメーター、シフトライトやレバーガードも追加している。左右スイッチボックスなどの仕様については、このままナンバーを付ければストリートも走れるスタイル。外装はパトスデザインでペイント。

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エンジンはレッドモーターで組み、JE製φ82mm鍛造ピストンで1156→1246cc化。ヘッドまわりはWEB365カムや強化バルブ組み込み、ポート研磨等を行う。キャブレターはFCRφ41mmで、シフトは左側スイッチを押すと圧搾空気で作動するエアシフターによる。

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排気系は極力車高を落とせるように集合部も右に振り出したたスターレーシング製サイドワインダーEXで、後輪出力は168psをマークする。

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フロントフォークはGSF1200ノーマルφ43mmで、フロントブレーキまわりはTOKICO6ピストンキャリパー+ブレーキング製ペータルディスクの組み合わせ。

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車体のベースは15年前に中古で購入したもので、スイングアームはウイリー製(現在ロングタイプのオーダーは受け付けない)、リヤショックはオーリンズ。上に見えるボトルはエアシフター駆動用でここでは窒素を充填。ステップはミクニレーシング(現・アグラス)だ。前後ホイールは途中で変わっていて、今はゲイルスピードType-Rの3.50-17/5.50-17サイズ。タイヤはシンコー003を履く。

取材協力:レッドモーター

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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