現在は2ストロークモデルを楽しむのは難しい時代だが、バイクの歴史を振り返るとその存在はとても大きい。輝かしい歴史を持つヤマハ製2ストロークにスポットを当ててみよう。この記事では、オフロードモデルの名車として現在も語り継がれる「DT-1」を紹介する。

ヤマハ「DT-1」誕生ヒストリー

画像: YAMAHA DT-1 1968 総排気量:246cc エンジン形式:空冷2スト・ピストンバルブ単気筒 車両重量:112kg

YAMAHA DT-1 1968

総排気量:246cc
エンジン形式:空冷2スト・ピストンバルブ単気筒
車両重量:112kg

オフロードバイクを変えた衝撃的なモデルの誕生

ヤマハDT-1は、後世のオフロードバイク界に多大な影響を与えたエポックメイキングなモデルだ。

アメリカ現地法人USヤマハの前身YICは、アメリカ市場向けのモデルとして、新しいオフロードバイクのビジョンを描いた。東部の林間部、西部のデザート地帯、さらにはモトクロスコースまでを走破できるオフロード性能を備えながらも、平日はナンバー付きの公道走行車として使える実用性を兼ね備えたモーターサイクルとは…。

それはつまり、今日のデュアルパーパスの原型となるアイデアだった。この案は日本のヤマハ本社に伝えられ、1966年にDT-1の開発が正式にスタートした。

YICの提案を具現化するために、100kgを切る車重(最大で105kgに抑える)という、常識破りの開発目標を設定した。エンジンは極力小さく収めるという狙いから、125ccのYA-6をベースに選択。排気量が倍になるためシリンダーから上は大きくなったが、クランクケースは125cc並のコンパクトさを実現。フレームにはヤマハ初のハイテンション鋼管を採用したダブルクレードルタイプを選択した。

初めてとなる本格量産オフロード車の開発ゆえ、開発陣は幾多の苦難を強いられたが、1967年、ついに生産試作車が完成。その年の秋のモーターショーで姿を現したDT-1は大反響を呼んだ。同年12月よりアメリカ市場に出荷された最初の8000台は、わずか2カ月で完売。月産2500台の工場生産のうち、約1500台分をDT-1に割り当てることで、ヤマハは3カ月分のバックオーダーに対応した。
 
1968年3月からいよいよ国内でも販売が始まり、アメリカと同様に日本のライダーたちもDT-1に魅せられて、その虜になったのである。

画像: ギアボックスを構成するメインシャフト、カウンターシャフト、シフトドラムの3軸は開発ベースとなった125ccのYA-6と同位置に収まるコンパクトさ。吸入方式はシンプルなピストン・バルブ方式を採用していた。

ギアボックスを構成するメインシャフト、カウンターシャフト、シフトドラムの3軸は開発ベースとなった125ccのYA-6と同位置に収まるコンパクトさ。吸入方式はシンプルなピストン・バルブ方式を採用していた。

画像: 今見ても新鮮さを失わない美しいタンク。1968年末のモデルより以前のDT-1は、燃料タンクをフレームにボルト固定する方式を採用していた。それ以降のモデルは、一般的なはめ込み方式に改められている。

今見ても新鮮さを失わない美しいタンク。1968年末のモデルより以前のDT-1は、燃料タンクをフレームにボルト固定する方式を採用していた。それ以降のモデルは、一般的なはめ込み方式に改められている。

画像: 2連式メーターは左が160km/hを上限とするスピードメーターでオド/トリップメーターを備える。右はタコメーターで10000rpmスケール、7500rpmからレッドゾーンが始まる。燃料タンクと同様に白く塗られたヘッドライトケースで赤く点灯するのはハイビームのインジケーターランプ。

2連式メーターは左が160km/hを上限とするスピードメーターでオド/トリップメーターを備える。右はタコメーターで10000rpmスケール、7500rpmからレッドゾーンが始まる。燃料タンクと同様に白く塗られたヘッドライトケースで赤く点灯するのはハイビームのインジケーターランプ。

画像: フロントホイールは19インチを採用。ヤマハの純正チューニングキットである『GYTキット』を用いてモトクロッサーとして使う場合は、21インチホイールに交換することが多かった。

フロントホイールは19インチを採用。ヤマハの純正チューニングキットである『GYTキット』を用いてモトクロッサーとして使う場合は、21インチホイールに交換することが多かった。

画像: リアホイールは18インチ。ウインカーは1968年7月以降の中期型から採用され、それまでは装着されていなかった。マフラー下の黒い円柱状のものは車載工具を収納するツールボックスだ。

リアホイールは18インチ。ウインカーは1968年7月以降の中期型から採用され、それまでは装着されていなかった。マフラー下の黒い円柱状のものは車載工具を収納するツールボックスだ。

画像: 【動画】EXHAUST SOUNDS "DT-1" 1968 www.youtube.com

【動画】EXHAUST SOUNDS "DT-1" 1968

www.youtube.com

ヤマハ「DT-1」の主なスペック

全長×全幅×全高2060×890×1130mm
ホイールベース1360mm
車両重量112kg(乾燥)
エンジン形式空冷2スト・ピストンバルブ単気筒
総排気量246cc
ボア×ストローク70.0×64.0mm
圧縮比6.8
最高出力13.6kW(18.5PS)/6000rpm
最大トルク22.7N・m(2.32kgf・m)/5000rpm
燃料供給方式キャブレター(VM26-SH)
燃料タンク容量9.5L
変速機形式常噛5速リターン
タイヤサイズ(前・後)3.25-19・4.00-18
ブレーキ形式(前・後)ドラム・ドラム
当時価格19万3000円

※この記事は月刊『オートバイ』2021年9月号別冊付録「RIDE」の特集から一部抜粋し、再構成して掲載しています。当特集のスタッフ 文:濱矢文夫、深澤誠人、宮崎健太郎/写真:小平寛、関野温、盛長幸夫、山口真利

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