去る2021年9月6日、ホンダ、KTM、ピアッジオ、ヤマハの4メーカーが、2輪EVおよび小型電気自動車用の交換式バッテリーのコンソーシアム(協業)契約を締結! というニュースが業界をわかせました。今年の春・・・3月1日にコンソーシアム構想が公表され、5月には正式にコンソーシアム設立・・・と当初は公表されていましたが、ちょっとそれよりも時間が長くかかりましたね。ともあれ、日欧の大手メーカーによるコンソーシアムが、今後世界の2輪EVの発展にどのように貢献することになるのか? 注目です!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年9月10日に公開されたものを転載しています。

コンソーシアム名は・・・"SBMC"です!!!

9月6日、本田技研工業株式会社、KTM F&E GmbH, Ltd.、ピアッジオグループ、ヤマハ発動機株式会社の4社は、3月1日の「意向書」の締結に続き、"SBMC"=スワッパブル バッテリーズ モーターサイクル コンソーシアムの設立に向けた合意書に正式に署名しました。

画像: 左から、野村欣滋(本田技研工業株式会社・常務執行役員・二輪事業本部長)、ステファン・ピーラー(ピーラー・モビリティAG CEO)、ミケーレ・コラニーノ(ピアッジオグループ戦略・製品担当チーフ)、木下拓也(ヤマハ発動機株式会社 上席執行役員 ランドモビリティ事業本部長)の各氏。 hondanews.eu

左から、野村欣滋(本田技研工業株式会社・常務執行役員・二輪事業本部長)、ステファン・ピーラー(ピーラー・モビリティAG CEO)、ミケーレ・コラニーノ(ピアッジオグループ戦略・製品担当チーフ)、木下拓也(ヤマハ発動機株式会社 上席執行役員 ランドモビリティ事業本部長)の各氏。

hondanews.eu

SBMC設立メンバー4社は、モペッド、スクーター、モーターサイクル、そして3・4輪車小型電気自動車の分野での普及促進と、国際的気候変動政策の観点から交換式バッテリーによる持続可能なライフサイクル管理を目指しています。そして共通化されたEV用交換式バッテリーの開発が、上記ジャンルの電動モビリティ開発の鍵となると考えています。

またSBMCが目標とするのは、航続距離、充電時間、インフラ、コストなど、電動モビリティの将来について多くのカスタマーたちが抱く懸念を解決すること・・・とのこと。その目標達成のために、SBMCは4つの主要な課題を設定しています。

・交換可能なバッテリーシステムの共通技術仕様の策定。
・バッテリーシステムの共通利用方法の確認。
・コンソーシアムの共通仕様を欧州および国際的な標準化団体で標準化し、推進する。
・コンソーシアムの共通仕様をグローバルに展開する。

まずSBMC設立メンバー4社はステークホルダー(利害関係者)や、それぞれの国内、および欧州・国際の標準化団体と緊密に連携し、国際的な技術標準の策定に携わっていくことになります。現実問題として、2輪EVなどの充電スタンドの設置状況は国によって異なっており、各国のカスタマー向けの情報も限定的だったり、不足したりしています。そこでSBMCは、2輪EVなどの小型電気自動車の普及を促進するため、充電インフラの開発・展開を行う意思決定者に働きかける・・・政治や行政や企業などへのロビー活動を行なっていくことになります。

今後は2大バッテリーコンソーシアムの激突になるのか!? 注目しましょう!

またSBMCはすべてのステークホルダーに協力を呼びかけるとともに、コンソーシアムの専門性を高めていく・・・と説明しています。そして続けて、「SBMC参加を希望される場合は、設立メンバー4社のいずれかにお問い合わせください」と同業者たちに呼びかけています。

趣味性の高いファン領域の2輪EVは、将来電動4輪自家用車同様にカスタマーが各々の自宅で充電をするスタイルが定着するだろうと予想されています。一方、人口密集度が高い都市部で重宝されるコミューター型2輪EVに関しては、車体から取り外しが可能な共通仕様の交換式バッテリーを、街中の各場所に設置されたバッテリーステーションで「サブスクリプション」方式で交換する方法が主流になるのでは・・・? と予想されています。

画像: 台湾Gogoro社のバッテリーステーション。Gogoro社この分野で、今最も業界をリードし、成功している企業です。 www.gogoro.com

台湾Gogoro社のバッテリーステーション。Gogoro社この分野で、今最も業界をリードし、成功している企業です。

www.gogoro.com

乾電池、記録メディアなどなど、規格化された共通仕様・交換式◯◯のプロダクツは、どれだけ世界市場でのシェアを抑えるかがビジネス成功の大きな鍵となります。現在、2輪EV用交換式バッテリーのコンソーシアムは、台湾Gogoro社と手を組んだインドのヒーロー・モトコープ、そして中国のDCJ大長江集団と中国最大の2輪EVメーカーのYadea(ヤディア)の大連合、そして台湾最大のスクーターメーカーであるキムコの呼びかけに呼応した、スーパーSOCOとFELOテクノロジーからなる「アイオネックスEVリーグ」がすでに存在しています。

SBMCはそれら先行する2つの連合に続く、3番目の存在になりますが、参画するいずれの4社も半世紀以上の長い歴史を持つ、すでに世界に広いネットワークを築いている日欧の大手2輪メーカーであることが大きな特徴であり、かつストロングポイントと言えるでしょう。

2つの巨大市場を合わせて、世界中の2輪カスタマーの1/3を擁するインドと中国への足がかりを築いたGogoro連合が現状では大きく主導権争いをリードしていると言えるでしょうが、KTMグループを束ねるピーラー・モビリティは、パートナー企業であるインドのバジャジと2輪EV世界戦略車を開発中であり、ホンダ、ピアッジオ、ヤマハの各社は第二次世界大戦後間もない時代から、世界中に優れた小型ICE(内燃機関)2輪車のコミューターを供給し続け、いずれも世界的なディーラー・サービス網を張り巡らせています。

SBMCの4社の実力をもってすれば、先行するライバルのコンソーシアムをキャッチアップし、追い抜かすことも十分可能なのではないでしょうか? それぞれ4メーカーともに所帯が大きすぎて小回りが効かず、交換可能なバッテリーシステムの仕様策定までに諸々調整などの時間がかかってしまうかもしれないのが、ちょっと心配な点ではありますが・・・?

ともあれSBMCには、電動化待ったなし!! の今、大きな目的を達成するためにコンセンサス(合意形成)をガッチリと早く固めて、覇権奪取目指して邁進してほしいですね!

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

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