1960年代、急速に発展を遂げる他社製2ストローク車に対抗するためホンダが投入した「MT250エルシノア」。この車両がどのようにして誕生したのか、その背景を見てみよう。

本格2ストデュアルパーパスの誕生

画像: Honda ELSINORE MT250 1973 総排気量:248cc エンジン形式:空冷2ストピストンバルブ単気筒 乾燥重量:118kg 当時価格:20万8000円

Honda ELSINORE MT250 1973

総排気量:248cc
エンジン形式:空冷2ストピストンバルブ単気筒
乾燥重量:118kg

当時価格:20万8000円

保安部品の脱着が容易で競技でも人気のエルシノア

当時ホンダのスタッフは、自己啓発活動として4ストロークのホンダ車でモトクロス活動をしていたが、1960年代になって急速に発展した2ストローク車を相手に苦戦を強いられていた。絶対的な車重の軽さと、ピックアップの良いエンジン特性という点で、当時の4ストロークは2ストロークに劣っており、この弱点はアップダウンのコースレイアウトとなるモトクロスでは、致命的と言えた。

そのことは主要輸出国であるアメリカの営業サイドからも要求があり、ヤマハやスズキ、欧州勢の2ストロークオフロードに対抗できる製品が欲しいとホンダは常に突き上げられていた。

1971年の暮れ、「やる以上、世界一のものにしなさい」という本田宗一郎の承諾を得て、本格的に2ストロークの開発がスタートした。その後、正式に全日本モトクロスへの挑戦が開始された1972年には、市販モトクロッサーCR250Mの同時開発も始動することに。同年、9月26日には早くも市販化にこぎ着けた。

そして、翌1973年の5月10日、CR250Mをベースに保安部品を備えたデュアルパーパスモデル、エルシノアMT250の販売を開始。久しく途絶えていたホンダ2ストロークの系譜を華々しく復活させたのである。

画像1: ホンダ「エルシノアMT250」を解説|「やる以上、世界一のものに」と開発された2ストローク・デュアルパーパス

CR250Mをベースに造られたエンジンの吸入方式は、6ポートのピストンバルブ。放熱効果に優れたアルコン(ALMINIZED COMBINE CASTING)シリンダーを採用。ピストンにはアルジル材を用いている。

画像2: ホンダ「エルシノアMT250」を解説|「やる以上、世界一のものに」と開発された2ストローク・デュアルパーパス

オフロードでの高い走破性を実現するため、フレームにはコンピュータ解析したスチール製クレードルタイプを採用。なお、同時発売のMT125と共通のチューンアップ用オプションパーツも用意されていた。

Honda ELSINORE MT250 主なスペック

全長×全幅×全高2160×890×1130mm
乾燥重量118kg
エンジン形式空冷2ストピストンバルブ単気筒
総排気量248cc
ボア×ストローク70.0×64.4mm
圧縮比6.6
最高出力23PS/6500rpm
最大トルク2.6kgf・m/5500rpm
燃料タンク容量8.5L
変速機形式5速リターン
タイヤサイズ(前・後)3.00-21・4.00-18
ブレーキ形式(前・後)ドラム・ドラム
当時価格20万8000円

※この記事は月刊『オートバイ』2021年6月号別冊付録「RIDE」の特集から一部抜粋し、再構成して掲載しています。当特集のスタッフ 文:安藤佳正、宮﨑健太郎/写真:赤松 孝、松川 忍、南 孝幸、森 浩輔/撮影協力:ホンダコレクションホール

This article is a sponsored article by
''.