Z系とJ系。ふたつのZの間には多くの互換性がある。ブルドックのカスタムコンプリート、GT-Mにはその特性を生かした角型ヘッドへのコンバート車両が多く見られるが、そこに注目してみた。単に載せ替えるだけでない、換装後のメリットをより生かす工夫も、その中にあった。詳細を前編・後編に分けてお届けする。

Z純正でスープアップと対策が行われていた

シリンダーヘッドカバーだけでなく、シリンダーヘッド側もエッジの立ったデザインに変わったZ1000Jシリーズ(以下、J系)。ZにこのJ系シリンダーとヘッドを載せる手法は、Zチューニングのひとつの手法として、今に至るまでごく一部のチューナーに親しまれてきた。コアなファンなら周知のことだろうが、改めて理由が知りたくなる。

「J系ヘッドは、簡単に言うなら少ないリスクで出力を高めることができます。バルブ径も大きく(Z1のINφ36/EXφ30mmに対しJでINφ37/EXφ31mmなど)なりますし、ポートも同様に拡大してあります。

ハイリフトカムを入れる場合でもバルブ挟み角など、安全マージンを確保した上で組み込める。J系は純正でチューニングと対策がされたヘッドと言えます。まだ先にチューニングの余地も残されますから、有利な点も多い。前期型Zでも同じことはできるんですが、J系同等にする手間はかかります。ですからJ系ヘッドはローリスク、つまり積み替えでハイチューンの効果が出せるということです」ブルドック・和久井さんは言う。

同店のコンプリートカスタム、GT-MではZ1やMk.IIにもこうしたヘッド換装車が多いのだが、ユーザーがそのメリットを理解した上で望んだものだった。

「同じ角型でもMk.IIは前期型=丸型Zから点火系などがまず変わって、J系ではスープアップ的な変化がさらに加わった。シリンダーヘッドももちろん、ただ換装するだけでは済まず、カムチェーンがハイボチェーンに代わったり、ガイドローラーがスライダーに代わったりしてますから、そうした部分も合わせて変えていきます。

だからと言ってGT-Mで全部J系にするのかと言うとそうではなくて、Z系のほうがいいという方には無理にJ系を勧めることはありません。それでも前述のようなJ系+チューニング同等の内容を作ることもできます(今同店で作業進行中のデモ車、GT-M 002もZ1にこだわっての丸型ヘッドを使っている)。空冷Z系という点では基本は同じ。あとは好みの部分です」

J系ヘッドのメリットは明快。ただブルドックでは、そのメリットをより生かす工夫も加えていた。

その工夫とは、オリジナルで製作されるパーツ群、それから自社で行われる各部加工だ。既に何度も紹介されているものだが、どちらも日々進化を続け、しかも両者が絡むことでより効果は高まる。

GT-Mエンジンの特徴4つ

ベースはZシリーズを使用。ここではZ1000Mk.II

画像: GT-Mエンジンの特徴4つ

1.ヘッドはZ1000J系換装

・後期型として対策が施される
・ポートもバルブも大きい
・さらに上を狙う余地もある
1972年登場のZ1も1981年からのZ1000J系も基本は同じで互換性は高いが、スーパーバイクの1000㏄規定を狙ったJ系では各部対策やレースベースとしてのポート/バルブ拡大が純正で行われた。この車両のようにツインプラグ化ほかの余地も残される。

画像: 1.ヘッドはZ1000J系換装

ブルドックで製作したZ1ヘッドのカットモデル。吸排気系通路=ポートやバルブのサイズ感が分かる。J系ではこれらが純正ですでに拡大されている。

2.内燃機は自社加工

3.超々ターカロイ鋳鉄スリーブと現代スペックの鍛造ピストン

高い耐摩耗性や強度を持つ、オリジナルの超々ターカロイ鋳鉄製スリーブはZ1のφ66mmから11mmも大径のφ77mm内径にも対応。ピストンも現代的スペックで設計を受けたものを使用。自社内燃機加工も性能を支える。

4.もうないパーツを新造して長寿化・高機能・現代化する

一部のパーツが純正で買えないミッションやシフトドラム、周辺パーツは純正以上の機能を加えて、オリジナルパーツとして新造。ダイナモも現代のフューエルインジェクションモデル車並みの発電量を持たせて外観も上質化。これらで今後の安心も得られる。

画像1: 4.もうないパーツを新造して長寿化・高機能・現代化する

Z系/J系で弱点となるスターターワンウェイクラッチの滑りを解消、同時に同部分にマウントされる発電系も強化したキット。

画像2: 4.もうないパーツを新造して長寿化・高機能・現代化する

5速(右)/6速(左)のクロスミッションで、このほどシフトドラムが新作された。こうした改良も日々進む。

取材協力:ブルドック

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

※本企画はHeritage&Legends 2019年12月号に掲載されたものです。

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