30年超前、既に完成域にあった造形とフレームワーク

1980年代後半、まだカスタムが一部の好き者の楽しみだった時代、カワサキZのパフォーマンスアップは、足まわりなど、その当時のスーパースポーツ車の純正流用から始まった。

オリジナルフレームや削り出しのアルミ製パーツなどを作るショップはあったが、その多くはレースルーツの、いわゆるコンストラクター系。一方、ストリート系ショップで今のような大がかりな作業を手がけられるところはまだほとんどなく、そんなパーツは雑誌広告で知っていても、実物を目にすることさえまれだった。

そんな状況でカスタム界、いや、一般的なバイク雑誌も含めて衝撃を与えたのが、この車両=タバックスによるオリジナルフレームのZ1カスタムだった。

画像1: 30年超前、既に完成域にあった造形とフレームワーク

見ての通りフレームはアルミ角パイプを曲げて作られたダブルクレードルで、スイングアームも角アルミ。当然ながらワンオフ製作。しかも燃料タンクほか外装、マフラーやライトステー等々のハードパーツも、すべてタバックス製オリジナル・ハンドメイド。このZは、まさに衝撃をもって1990年代初頭に現れた。

作業はエンジンとメーターだけの状態から始まったという。そのエンジンは987cc化してクロスミッションが組まれ、キャブもCRφ33mmにと、このあたりのパッケージングはいかにも当時のもの。スズキの市販レーサー・RG500用フロントフォーク、ヤマハTZ250用ホイールなどのレーサーパーツを使った足まわりも、今見てみれば懐かしい。

そしてこのZの一番の特徴、フレームがまた凄かった。強度に優れた7N01材製を母材とし、部材を継ぎ合わせない、長いループによって構成されている。これは文字通りにタバックス・田端 賢さんの手によって曲げ、溶接、そして紙やすりの手作業によるバフ加工が施されたオールハンドメイド。すでにこの時代に、だ。

画像2: 30年超前、既に完成域にあった造形とフレームワーク

「これ以前(’80年代前半)にもモリワキ・モンスターのような形のフレームを作ってZ1エンジンで鈴鹿8耐に出ようと考えてたんです。それは車両規定の変更で実現しませんでしたけど、その後いろいろあったのを“いろんなことを突き抜けよう”って思いで、このZ1を作ったんです。Zはずっと好きで、これで何かやってやろうと思ってましたし」と田端さんは後年、こう教えてくれた。

製作コンセプトの「見ていて飽きが来ず、乗って楽しい、自分だけのZ1」は今見ても、まったく損なわれていないことが分かる。その上でこのフレームや外装は車体全体の軽量化にも貢献し、総重量は185㎏(Z1ノーマルは北米仕様で乾燥233kg。だから70kg近く軽い)。こんな車両が既に35年近く前に作られていた。惜しむらくは、もうタバックス製カスタムが作られないこと。それを除いても、やはりタバックスZ1は歴史のアイコンなのだ。

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Detailed Description 詳細説明

画像1: Detailed Description 詳細説明

マイル表示も刻まれたメーター類はノーマルで、ヘッドライトはヤマハSRX流用。ハンドルはセパレートタイプで、トップブリッジ/アンダーブラケットはタバックス製。田端さんがアルミ板を叩いて溶接したハンドメイドで、中空タイプとなっているのも特徴だった。

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燃料タンクもアルミ叩き出しで、キャップ付近をよく見ればワンオフと分かるだろう。ゴジライラストはタバックスのステッカー。

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この位置から見ると、ロアブラケットがクランプ部と中空の本体という構成、ヘッドパイプもメインレールもアルミというのが分かる。なおエンジンはヨシムラφ69mmピストンでの903→987cc仕様。ヨシムラストリートカム、クロスミッションを組んでいた。

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前半をスチール、テールパイプ以降をアルミ(サイレンサーシェルのみカーボン)とした“ゴジラ管”(田端さんのゴジラ好きから命名)はタバックス独特のOリング止め。リヤサスはヨシムラKYBでキャリパーはVF1000Rからの流用だ。

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ホイールは田端さんが当時からずっと「最高のデザイン」と言っていたマルケジーニ3本スポークのTZ250用で、前後ホイールサイズは[純正値:19/18→]18/17インチ化。7N01材フレームはダウンチューブからシートレールまで1本のレールで構成する。スイングアームもタバックスのアルミ製。

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フロントフォークは市販レーサー・RG500用で、アウターチューブにはあえて途中に0.5mmの段差加工を施してデザイン性をアップしている。

取材協力:タバックスエンジニアリング(現在活動終了)

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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