さよならSR 寂しくなるよ

先日「ファイナルエディション」が発表されて、巷では年間販売台数の数倍のオーダーが入ったとか、1日で予約を打ち切らざるを得なかった、なんて大人気っぷりが伝えられているヤマハSR400ですが、こういうニュースってフェイクも含め、だんだん「盛られ」ていくのが常。
では実際の一次情報、つまりヤマハからの発表はどうなのか、と思っていたら、ちょうどニュースがリリースされました。「ヤマハニュースレター」~変わらないために変わり続けた「43年の車轍」~ これ、まぎれもなくヤマハの発表ですから、うそ、偽りはございません。

SR400Final Edition/Final Edition Limitedは、SR400国内モデルの生産終了モデル。1月下旬に発表され、発売は3月15日で、SRはこれで、1978年3月の発売以来、2021年で43歳になることになります。

画像: SR400ファイナルエディションリミテッド ヤマハブラック 1000台限定 74万8000円

SR400ファイナルエディションリミテッド ヤマハブラック 1000台限定 74万8000円

画像1: さよならSR 寂しくなるよ

まず、予約状況。ヤマハのグローバルブランディング統括部・伊藤宏祐さんの話です。
「リリースから数日で、およそ6000台もの予約をいただきました。この反響は私たちの想定を大きく超えるもので、これまでの国内の年間規模の2倍以上に当たります」(原文ママ・以下「」内は原文のまま引用しています)
ファイナルエディション発売のニュースは、僕ら2輪誌の誌面、Webサイト、さらにSNSや口コミで伝わり、ショップには予約と問い合わせの電話が相次いだ、とあります。
ちなみに2020年のSR400の販売台数は約2500台。発売42年のバイクがこれだけ売れてる、ってのもスゴい。

画像: SR400ファイナルエディション ダークグレーメタリックN 60万5000円

SR400ファイナルエディション ダークグレーメタリックN 60万5000円

画像: SR400ファイナルエディション ダルパープリッシュブルーメタリックX 60万5000円

SR400ファイナルエディション ダルパープリッシュブルーメタリックX 60万5000円

画像2: さよならSR 寂しくなるよ

SRはご存知の通り、1970年代に開発がスタートした、空冷単気筒エンジンを搭載するロードスポーツです。オフロードモデルXT500をベースに、500ccと400ccバージョンがあって、500バージョンがさきにカタログ落ち、400バージョンが最後まで販売されました。500に乗るには大型免許が必要ですからね。

画像: この2モデルがファイナルエディションの限定車ではない方です

この2モデルがファイナルエディションの限定車ではない方です

SRは基本のスタイリングをほぼ初代のままキープし、発売初期のスポークホイールがキャストホイールとなって、それがまたスポークに戻ったり、発売初期のディスクブレーキが大径ドラムブレーキになったり、規制対応のために排気ガスクリーン化のエアインダクションシステムを追加したり――。つまり、発売初期の姿をなるべく変えないように変えないように、修正補正を繰り返しながら規制に対応しながら販売を続けてきた、という歴史があるんです。

前出の伊藤さんによると「私が商品企画部門に加わったのが約15年前。当時すでに『どうすればSRがSRで在り続けられるか』という議論が行われていました」とのこと。
1978年に発売されて、ほとんどスタイリングを変えずに販売が続けられてきたなんて、工業製品の世界ではまさに奇跡! ちなみに1978年って、池袋サンシャイン60が完成、成田空港が開港して、TBS「ザ・ベストテン」がスタート、キャンディーズが解散してサザンオールスターズがデビューした年です。日本テレビで「24時間テレビ 愛は地球を救う」が放送スタートし、王 貞治が800号ホームランを打ったのもこの年です。
ちなみにクルマでは、まだサバンナって呼ばれていた初代RX-7、SA22とかFBって呼ばれる型デビューの年です。そう考えるとスゴい!

そのSR、購入者の年齢分布は下記グラフのとおりで、幅広い世代からまんべんなく支持を受けているのがわかります。特に20代の30%弱っていうのは、400ccクラスのオーナー層の3倍にも迫る数字なのだそう。若いファンが多いんですね。

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実は不人気車スタート!? ファンが育てた人気車です

でも実は、SRのファン層は80年代中盤あたりを境にグンと若返ったイメージがあって、発売当初は、目新しさのないオフロードバイク起源の古臭いルックスのバイク、なんてかんじだったんです。この先はその時代をリアルタイムで生きてきた個人的意見ですからね、あしからず。あぁそういえばそうだったね、なんて同意してくれる人は、50歳代ってところかな。

SRが発売された後の国内マーケットは、RZ250を皮切りに、スーパースポーツ全盛期、レーサーレプリカブームにつながっていきますから、SRはその対極にいたことになります。レーサーレプリカが大人気となるころ、同じ時代に筑波サーキットで行われていたB.O.T.T.(=バトツ・オブ・ザ・ツイン)なんかにカリカリのチューンドSRが現われたりと、イジって楽しい素材なんだ、って見方が広まったのもこの頃ですね。

レーサーレプリカの「ま反対」にいたのが逆に新鮮に感じられて、SRの存在感がぐんぐん大きくなってきたのが、80年代中盤から後半じゃなかったでしょうか。SRの派生モデルと言われたSRXが発売されて、「モダンシングル」なんて人気が出始めて、じゃぁモダンじゃない方のSRも、乗ってみると素朴でいいねぇ、なんて人気だったと思います。
その頃から、あるカテゴリーが人気になると、そのカウンターでSRが脚光を浴びて、一定のSRファンが形づくられることになります。
同時に、ファッションバイクとしての人気も定着し始めましたね。レトロブーム、ファッションアイテム、スカチューン、キックスタート――もはや、バイク界では当たり前になった「高性能」と正反対のところで、着実に育ってきた、ユーザーが育ててきたのがSRなんです。

画像: ずっと変えなかったキックスタート こんな不便な始動方式がSRのアイデンティティでした

ずっと変えなかったキックスタート こんな不便な始動方式がSRのアイデンティティでした

国内向けに生産されたSR400は、43年間で累計12万台オーバー。スタンダードモデル、✕✕周年記念モデル、そしてついにファイナルエディション。現在発売中の月刊オートバイ3月号では、SRのヒストリー、各限定モデル、リミテッドエディションを網羅しています。ぜひぜひ、お手に取ってご覧ください。

それにしても、あのSRがとうとうなくなっちゃうのかぁ、とシミジミしてる暇はないですよ。もうファイナルエディション・リミテッドを新車で(定価で)手に入れられるチャンスは限りなくなくなってしまいましたが、ファイナルエディションの限定色でない通常カラーの方はまだまだ購入申し込み可能! SRは新車でも中古車でもSR、インジェクションでもキャブレターでもSRです。ぜひ、このもう2度と生まれることがないであろう奇跡の空冷単気筒を、ひとりでも多くのオートバイ乗りに味わってほしい、記憶にとどめてほしいのです。

画像: 大きく分けてキャブレター期、インジェクション期には分かれますが、SRはSRです 速くもない、シャープなハンドリングでもない、快適でもない、スピードも出ないオートバイがこんなに長生きしました

大きく分けてキャブレター期、インジェクション期には分かれますが、SRはSRです 速くもない、シャープなハンドリングでもない、快適でもない、スピードも出ないオートバイがこんなに長生きしました

参考文献/「ヤマハニュースレター」~変わらないために変わり続けた「43年の車轍」~
写真/ヤマハ発動機 松川 忍(走行写真) 文責/中村浩史

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