月刊『オートバイ』で書評コーナーを長年に渡り担当している小松信夫がライダーにおすすめの一冊を紹介します。

『賀曽利隆の50ccバイク日本一周ツーリング』上・下 著:賀曽利 隆(1984年・交通タイムス社)

画像: 『賀曽利隆の50ccバイク日本一周ツーリング』上・下 著:賀曽利 隆(1984年・交通タイムス社)

賀曽利 隆さんといえば、1968〜69年に挑戦したアフリカ1周を皮切りに、70歳を越えた現在もオートバイで旅する「生涯旅人」として、今なお走り続けているのはご存知の通り。

そんなバイク旅を記録した著作も数多いわけです。1984年に出た『賀曽利隆の50ccバイク日本一周ツーリング』は、1978年に初めて「日本1周」をした時の記録で、実は1979年の月刊オートバイ2月号〜12月号での連載を改稿の上で書籍化したものだったりします。

書名の通りあえて50ccのスズキ・ハスラーを選択、しかも基本的に野宿&自炊という(経済的な事情もあったとか)、日本国内とはいえ縛りの厳しいハードなツーリング…なはずなんだけど、賀曽利さんのひょうひょうとした文章で読むと実に楽しそうで、読み始めたらあっという間に引き込まれちゃう。

同時に各地の自然、街や道の様子や、出会った人との交流などを通じて、いろんな意味で現在とは大きく異なる当時の日本の姿が生き生きと浮かび上がってくる! バイク旅とか関係なく、純粋に紀行文として楽しい1冊。

加曽利さんのバイク旅の記録といえば、代表作ともいえる『世界を駆けるゾ!』シリーズをはじめ、『六大陸周遊1973-1974』『50ccバイク世界一周2万5千キロ』『バイクで越えた1000峠』などなど、上げていけばキリがない。

昔のものだと絶版になっている本も多いけど、電子書籍化されているものもあるし、こまめに探せばマイナーな本の多い二輪関連書としては割と手に入りやすい印象。しかし、面白そうなんで気になってるんだけど、見つからないでいまだ未読という本もありまして。

中でも気になるのは、1973年に山と渓谷社から刊行された『極限の旅』。「現代の旅」シリーズという旅行記を集めた(?)叢書の1冊なんだけど、この叢書は檀 一雄、竹中 労、佐貫亦男など、知ってる人は驚くけど選考基準がよく分からん謎の豪華ラインナップで、その中に当時まだ無名の加曽利さんが入ってるというだけで、もう読みたくてたまらない! 

もう1冊は、講談社Jノベルスから1987年に出たという『俺たちのパリ→ダカール』。なんとこれ、小説です。1987年っていえば、4輪は三菱vsプジョーのワークス対決、2輪はホンダが連勝中とパリダカが日本で一番注目されてた時期。

と聞くとこの本もお手軽な便乗本っぽいけど、なんせ加曽利さん、1982年にパリダカ走ってますから! 壮絶な転倒リタイアを喫したとか…そんな経験を活かして書かれたんだろうなぁ、実は結構面白いという噂だけは聞くんだけど。でもね、2冊ともなかなか見つからないのです。

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