雨にたたられたスポーツランド菅生……

約4か月の遅れでスタートした全日本ロードレース。ライダーはもちろん、チームもファンも、そして関係者も僕らメディアも待ちに待ちました、いよいよ、ようやくの開幕です。
開幕の舞台は宮城県・スポーツランド菅生。菅生側も、来場するファンや関係者、ライダーにもチームにも体調報告の問診票提出を義務付けたり、会場入り時の検診を行なったり、会場施設内ではマスク着用を義務付け、会場のいたるところに消毒用材を置いたりと、できることをきちんと、という体制で出迎えてくれます。本当に頭が下がります、ありがとうございます。

開幕戦は8/9~10の日曜~月曜の変則日程。月曜が「山の日」で祭日ですからね、日曜にJP250とJSB1000のレース1、そして月曜日にJ-GP3/ST1000/JSB1000のレース2/ST600の決勝レースが行なわれます。
しかし! この菅生がどうにも雨にたたられます。7月末の事前テストは豪雨警戒警報が発令されるほどの雨に見舞われ、レースウィークの土曜からも雨、雨、雨。せっかくの開幕戦、スッキリとドライでレースしたかったなぁ、ってのが関係者みんなの正直な心境じゃないでしょうか。贅沢は言えないんだけどねぇ。

画像: 予選ではフロントロウをヤマハYZF-R1が独占! ちょっとこの快挙、過去に記憶がありません…

予選ではフロントロウをヤマハYZF-R1が独占! ちょっとこの快挙、過去に記憶がありません…

ウェットコンディションで行なわれた土曜の公式予選は野左根航汰(ヤマハファクトリーレーシングチーム)がポールポジションを獲得。2番手にチームメイトの中須賀克行、3番手に前田惠助(ヤマルーブレーシングチーム)が入ってフロントロウをヤマハYZF-R1が独占しました。
この2020年シーズンは、エントラントに大きな変化があって、ホンダワークスは参戦をとりやめ、トップチームのMuSASHi-RTハルクプロ、ケーヒンHondaドリームらにサポート。スズキはヨシムラスズキが全日本フル参戦を休止して、カワサキはTeamグリーンが撤退。つまり、ヤマハだけがワークスチーム体制での参戦を続けているわけで、その意味では予選フロントロウ独占も不思議な話ではないのかもしれませんね。

画像: スタート直後の1~2コーナー 菅生ではパッシングポイントのひとつです

スタート直後の1~2コーナー 菅生ではパッシングポイントのひとつです

お昼頃にいったん雨が止んだとはいえ、いまだウェットコンディションのままでのレース1。小雨が降るか降らないか、というビミョーなコンディションでスタートします。
スタートで飛び出したのは、ポールポジションの野左根! 続いて清成が2番手で1コーナーに入ると、そのイン側に中須賀がマシンをねじ込んできます。
「こういうコンディションのレースは先頭に立って引っ張っていかないと。誰かの後ろじゃ走りにくいから、いかに前に出て後ろを引き離していくかの勝負になります。僕と中須賀さん、まったく同じこと考えていたんだと思います」とは野左根。

画像: 2周目の1コーナー インにマシンをねじ込んだ中須賀でしたが

2周目の1コーナー インにマシンをねじ込んだ中須賀でしたが

画像: 2コーナー立ち上がりでハイサイドを食らってしまいます

2コーナー立ち上がりでハイサイドを食らってしまいます

画像: 絶対王者の開幕戦は2周目の2コーナーで終わってしまいました 右肩をちょっと痛めたようです

絶対王者の開幕戦は2周目の2コーナーで終わってしまいました 右肩をちょっと痛めたようです

その中須賀は、野左根にリードされての1周目終わりのシケインでいったん前に出て、メインストレートで野左根がかわし、1コーナーへは野左根-中須賀の順。その後方に清成がいます。
中須賀は野左根のインをつくと1~2コーナー間で鼻先を突っ込み、2コーナー立ち上がりではやや前に出ます。レース展開を「作る」ことにかけては天下一品の中須賀にしては早めの仕掛け。やはり、このコンディションがそうさせたのでしょう。

すると瞬間! 中須賀のマシンはハイサイドを食らい、中須賀は宙に放り出されるかっこうで転倒! なんと絶対王者、開幕戦の2周目で転倒です! 2018年にも雨の菅生で転んだことがありましたね。そんなにハッキリ覚えてるほど、中須賀の決勝中の転倒って珍しいんです

画像: 危なげなく雨の菅生を制した野左根 7レースでの今シーズン、この1勝はデカい!

危なげなく雨の菅生を制した野左根 7レースでの今シーズン、この1勝はデカい!

レースはそのまま野左根が独走。注目は2番手争いで、序盤は清成、水野、前田、ヨシムラ渡辺らがグループを形成。しかし、その中でから渡辺が、前田が転倒で戦列を去り、水野も転倒して再スタートしたものの大きく順位を落とします。

画像: 序盤の2番手争いはNewCBR同士で #634水野は転倒で順位を下げるものの、4位までカムバック!

序盤の2番手争いはNewCBR同士で #634水野は転倒で順位を下げるものの、4位までカムバック!

結局、野左根のハイペースは変わらず、2番手清成を20秒引き離しての圧勝。2位には清成、3位に濱原が入り、CBR1000RR-Rをデビューレースで表彰台に押し上げました。

「とにかく最初から前に出る、がこのレースのテーマでした。昨日の雨の走行で転倒してしまって、だからこそペースがつかめた感じ。トップに立ってからは自分のペースをきちんと守って周回できましたね」とは、2019年岡山大会以来の優勝を飾った野左根。今シーズンは「打倒・中須賀」の正念場お年となるだけに、事前テストからたびたび好タイムをマークして、まずは幸先のいい1勝です。

画像: ニューマシンを表彰台に押し上げた清成 まずはホッとしたって感じでした

ニューマシンを表彰台に押し上げた清成 まずはホッとしたって感じでした

2着にはNewCBR1000RR-Rを表彰台に押し上げた清成龍一。伊藤真一さん率いる新チームでの、ニューマシンでの初戦での表彰台に、まずはホッとしたところでしょう。
「ニューマシンで、テストの時間もほとんど取れていないので、マシンはぜんぜん仕上がっていない感じです。それでも、僕のわがままをチームが本当によく聞いてくれて、なんとか表彰台に上がることはできました。ウェットのレースとはいえ、まだ思ったようなペースで走れていないので、もっとマシンを仕上げていかないと」とは清成。イギリスでキングと呼ばれた男は、これから打倒・中須賀に名乗りを上げてくるでしょう。

画像: これが全日本ロードレース初表彰台となった濱原 荒れたコンディションでは強いぞ!

これが全日本ロードレース初表彰台となった濱原 荒れたコンディションでは強いぞ!

3着には10台近くが転倒してしまうサバイバルレースを走り切った濱原颯道(はまはら・そうどう)。もともと濱原はモタードレースやダートトレーニングでも本職を追いかけ回すスキルを持っているだけに、こういう荒れたコンディションでは強い! 
「走り切ればなんとか上の順位でフィニッシュできる、ってチームに言われて、本当に辛抱して走り切りました。今年も桜井ホンダさんで走らせてもらって、ニューマシンまで用意してもらって本当に感謝しています。3位に上がったとはいえ、ペースはまだまだトップとは差があるので、そこを詰めていかないと」と濱原。ちなみに全日本選手権での初表彰台です。

雨に翻弄されたとはいえ、ようやくスタートを切った全日本ロードレースやはりシーズンの軸は「誰が中須賀を倒すか」ってテーマなので、まずは野左根が、清成が、濱原がそこに名乗りを上げました。
あすはレース2、今日のレース1で思った走りができなかったライダーに注目ですね。
明日の天気は……降らなそうです!あ、でも雨の翌日は霧が出ないといいけど……。

□全日本ロードレース 開幕戦 菅生大会
①野左根航汰 ②清成龍一 ③濱原颯道 ④水野 涼 ⑤岩田 悟 ⑥柳川 明 ⑦亀井雄大 ⑧関口太郎 ⑨児玉勇太 ⑩中冨伸一 ⑪今野由寛 ⑫櫻山茂昇 ※以上12台がチェッカー

写真/木立 治 柴田直行 後藤 純 中村浩史 文責/中村浩史

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