ヤマハTZR250ヒストリー

1985年11月に登場したヤマハTZR250は、前後17インチ、アルミツインスパーフレーム、リヤリンクサスに大径フロントフォーク、大径ディスクブレーキ。低速から扱いやすいクランクケースリードバルブ式並列2気筒エンジンの搭載などなど……、スポーツバイクのあり方を一気に現代化したとも言えた。

そもそもヤマハ2ストロークスポーツモデルは1980年代、その’80年にデビューしたRZ250に始まり、1983年RZ250R、1984年RZ250RRと進化。市販レーサーTZ250との双生児的な位置づけがなされた。そのTZ250は、’85年型まで水冷並列2気筒ピストンリードバルブエンジン、鋼管ダブルクレードルフレーム、カンチレバー式モノクロスサスに前後18インチホイールといった構成を継続していたのだ。

そして当時、日進月歩で進んでいたバイクの進化は、ちょうどこの頃大きな解を得た。18→16→17インチと変わったフロントホイール、ヘッドパイプからスイングアームピボットを一直線につなぐレイアウトで高剛性なフレーム、そして低速から高速まで使いやすい特性……。こうした進化によって、TZ250は1985年型でクランクケースリードバルブとなり、フロント17インチ(リヤは’87年型)化した。翌’86年型ではフレームはアルミツインスパー、リヤもリンクサスに変わった。これに合わせるようにRZシリーズはTZR250へと生まれ変わったのだ。

1985年にデビューしたTZR250では、エンジンは吸入方式をクランクケースリードバルブに変えたが、並列2気筒を堅持。補機レイアウトや重心なども考慮すればベストな選択だ。フレームはTZ同様のアルミ製デルタボックスに。アンダーループを廃したことでバンク角も51度まで増した。フロントフォークはφ39mmに大径化、前後ホイールは17インチでフロントディスクは1枚になる代わりにYZR500と同じφ320mmのフローティングディスクに。RZ-RRより21kg軽い126kg、82mm短くなったホイールベース、バイクを操作しやすいコンパクト目のポジションに760mmの低シート高。

単に進化だけでなく総合的なポテンシャルを高めたために乗りやすさが生まれ、RZからの2スト250ccらしいシャープな伸び感に、低速からの安心感も加わっていた。その背景にあったのは、開発をレーサーYZR500のスタッフが担ったこと。このスタッフは「レーサーレプリカではなく、2スト250の原点に立ち返る」ことを最優先して純粋な走りの世界を求めてTZRを作り込んだのだ。

レプリカの見た目はそのまま最新。その上にレーサーが時折見せる未完成感ではない、どこから見ても隙のない現代的スポーツのパッケージといった作りで、バイクの進化を誰もが実感できた。

このTZR250=1KTは’86/’87年も継続販売されるが、その間’86年秋にNSR250R、’88年に入ってRGV250ΓというV型エンジンの強力ライバルが現れる。それに対向するべく点火CDIをデジタル式にし前後タイヤをラジアル化、シリンダーをめっき化するなどの熟成を図った。

そしてTZR250は1989年型で初のメジャーチェンジを行う。並列2気筒を維持しながら吸排気系を入れ替えた「前方吸気・後方排気」の型式3MAがそれだ。V4エンジンのYZR500のリヤバンクのノウハウによって、また’88年型TZ250が強さを見せたことでの採用。新鮮で温度の低い=密度の高い吸気と、ストレートな排気系で出力特性が有利というメリットがあった。

ただ、エンジン後部である程度一定した環境だった後方吸気に比べ、前方では外気温等の環境に敏感になり、これが出力面にも影響した。また排気系は上側のみとなったことで重心を上げ、長い時間の走行ではシートやタンクに熱の影響を与えることとなった。それでも、ある種の理想と言える後方排気レイアウト、’90年型でのマイナーチェンジで倒立フォークを採用するなどして、車両としての魅力は大きかった。

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■1985~1987年型 TZR250(1KT)
その開発をレーサーYZRのスタッフに委ね、1986年型TZ250と平行で進行。'85年11月にTZR250(1KT・最上段写真)登場。RZと同じ並列2気筒ながらリードバルブの吸入方式をピストン→クランクケースとしYPVSやフラットバルブキャブとでシャープでスムーズな特性を実現。塗装仕上げのアルミツインチューブフレームや当時の750㏄同等の大径φ39㎜フォーク、GPで主流となった前後17インチ(1KTでは2.15-17/2.50-17)中空3本スポークホイール、φ320㎜フロントディスクローターなど、すべてが新感覚のレプリカだった。'86年にはGPスポンサーカラーの2色(2枚目/3枚目写真)を追加した。

■SPECIFICATIONS:●水冷2ストクランクケースリードバルブ並列2気筒249㏄(56.4×50.0㎜) 圧縮比6.4:1 最高出力45ps/9500rpm 最大トルク3.5㎏f・m/9000rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2005×660×1135㎜ 軸距1375㎜ 乾燥重量126㎏ 燃料タンク16ℓ シート高760㎜ キャスター26度 トレール90㎜ タイヤ:100/80-17・120/80-17●価格54万9000('86マールボロ=55万9000)円 ※'85-'86年型TZR250のデータ。

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■1988年型 TZR250(2XT)
アルミツインチューブのフレームをデルタボックスフレームと称し、伝統的な並列2気筒には排気デバイスを組み合わせることで2ストの弱点を解消、前後17インチにリヤのモノサス、フルカウル……。初代TZR=1KTは好評価を得てそのまま'86/'87年も推移した。そして、1988年型2XTでピストンを軽量高剛性化しリングを変更、シリンダーは補助排気ポートを新設し内壁をセラミックコンポジットめっきに変更。樹脂製リードバルブも'88TZ250同面積で片側3→4葉とした。ほかにもYPVS連動オイルポンプやデジタル進角CDI、扁平ラジアルリヤタイヤを新採用した。

■SPECIFICATIONS:●水冷2ストクランクケースリードバルブ並列2気筒249㏄(56.4×50.0㎜) 圧縮比6.4:1 最高出力45ps/9500rpm 最大トルク3.6㎏f・m/8500rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2005×660×1135㎜ 軸距1375㎜ 乾燥重量126㎏ 燃料タンク16ℓ シート高760㎜ キャスター26度 トレール96㎜ タイヤ:100/80-17・130/70R17●価格54万9000円 ※'88年型TZR250のデータ。

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■1989~1990年型 TZR250(3MA)
ワークスレーサー・YZR500の後ろ2気筒などのノウハウで、チャンバーや吸排気レイアウトをストレート化。出力特性上有利という狙いをもって前方吸気/後方排気で初フルチェンジしたのが、1989年型TZR(3MA)だ。上写真は1989年型、下は1990年型。点火時期やYPVS、オイル吐出量やTMキャブを総合的に制御するコンピュータ制御も導入し扱いやすさを狙ったが実際には2ストらしい吹け上がりの特性となった。車体はアルミデルタボックスフレームをより立体的に新設計、スイングアームはブレースを追加しフロントフォークはφ41㎜。ホイールも3.00-17/4.00-18サイズとなり、フロントブレーキもダブル化(φ298㎜)した。

■SPECIFICATIONS:●水冷2ストクランクケースリードバルブ並列2気筒249㏄(56.0×50.7㎜) 圧縮比7.4:1 最高出力45ps/9500rpm 最大トルク3.8㎏f・m/8000rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2040×655×1100㎜ 軸距1380㎜ 乾燥重量136㎏ 燃料タンク16ℓ シート高760㎜ キャスター25度 トレール94㎜ タイヤ:110/70R17・140/60R18●価格59万6000円 ※'89年型TZR250のデータ。

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■1990年型 TZR250(3MA)
後方排気TZR=3MAは'90年の途中で、フロントをφ39㎜倒立フォーク化し、エンジン系も6葉樹脂製リードバルブ、コンピュータ制御TMキャブ、2ウェイコントロールYPVSを新採用した。また、ポート形状やクランクマス、ミッションや排気系も変更し過渡特性の向上を狙った。後方排気は市販レーサーTZ250では効果があったが、エアボックスなど補機類が必要な市販車では難しかったようだ(上写真がそのスタンダードモデル)。なお'90年型にはクロスミッションや乾式クラッチ、4.00-18→4.50-18のワイドリヤホイール、ハイグリップタイヤを備えたTZR250 SP(下写真)が1000台限定で追加された。これがTZR初のSP仕様だった。

■SPECIFICATIONS:●水冷2ストクランクケースリードバルブ並列2気筒249㏄(56.0×50.7㎜) 圧縮比7.4:1 最高出力45ps/9500rpm 最大トルク3.8㎏f・m/8000rpm 変速機6段●全長×全幅×全高2040×655×1100㎜ 軸距1380㎜ 乾燥重量136㎏ 燃料タンク16ℓ シート高760㎜ キャスター26度 トレール96㎜ タイヤ:110/70R17・140/60R18●価格59万6000円 ※'90年型TZR250のデータ。

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画像: handl-mag.com
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