ミドルクラス4気筒に先鞭をつけたのは1974年にヨンフォアを発売したホンダだった。しかし、ヨンフォアの生産終了と同時にカワサキFX、ヤマハXJ、スズキGSXが市場を席巻。ついにホンダは、最終兵器CBX投下を決断する。後の日本の方向性を決定付けた、歴史的名車であった。
 
※この記事は月刊オートバイ2011年8月号の別冊付録記事を加筆修正しています。一部に当時の記述をそのまま生かしている部分があります。
文:中村浩史/写真:海保研/車両協力:ピースガレージ、パステルロード

ホンダ「CBX400F」が登場した背景とその後の大ヒット

ライダーの夢を実現して登場。時代や世紀を超えて愛され続ける歴史的名車

画像: Honda CBX400F 総排気量:399cc 発売当時の価格:48万5000円 (ツートーン)

Honda CBX400F

総排気量:399cc
発売当時の価格:48万5000円 (ツートーン)

きっかけは、やはりホンダだった。CBナナハンで国産初の4気筒モデルをデビューさせたのを皮切りに、1972年にはCB350FOUR、そして74年にCB400FOURを続けざまに投入。ミドルクラスにも、マルチ時代の到来を感じさせていたのだった。

しかし77年には4気筒CB400FOURにかわって、SOHCツインのホークⅡを発表。70.5×50.6mmという超ショートストロークの新設計ツインは、確かにCB400FOURよりもパワフルで、クラストップの動力性能を示していたが、なぜ4気筒に代わって2気筒?それが、当時のファンたちの偽らざる心境だった。

画像: Honda DREAM CB400FOUR

Honda DREAM CB400FOUR

確かにCB400FOURは速いオートバイとは言いがたく、事実、当時の最速モデルといえばスズキGS400。この排気量ならば、4気筒よりも2気筒のほうが出力を出すのに有利と言われていた。

新機軸を満載したホークⅡは、確かに人気モデルとなり、当時の快速トップセラーに上り詰めた。しかし、そのホークⅡ人気に待ったをかけたのが、カワサキZ400FX。そう、400FOURなき後、4気筒エンジンモデルを熱望するマーケットの要望に応えたかのような、カワサキ快心の一撃だった。

Z400FXは、待望の4気筒エンジンと無骨なスタイリングで、アッという間に400クラスのベストセラーに上り詰めた。次いで400ccクラスには、80年にヤマハXJが、そして81年にはスズキも、最速ツインGSX400Eに続いて、4気筒モデルGSX400Fをリリースした。ホンダもホークⅡのフェイスリフトモデルとして、CB750F系のユーロスタイルのホークⅢ、スーパーホークⅢを発表するものの、いかに動力性能に優れようとも、時代は4気筒化へ流れていた。

画像1: ホンダ「CBX400F」が登場した背景とその後の大ヒット

これで残るはホンダのみ。しかも、事実上の最後発ということで、ライバルたちを完全に凌駕する存在でなければならない。満を持して公開されたのは、81年秋の東京モーターショー。壇上に「スーパーマルチ」と謳って登場したニューモデルは、CBX400F。DOHC4バルブヘッドを持つ、ホンダの第2世代空冷4気筒エンジンは、ライバルたちを凌駕する、リッター当たり120馬力をマークする高出力エンジンを与えられての、輝かしいデビューを飾ったのだった。

ライバルの出方を徹底的に研究し尽くして、さらにその上を行く最終兵器、CBX400F。エンジンの高出力はもちろん、実際のパワーフィーリングも確実に一枚上。車体まわりにも先進技術が投入され、鋳鉄ディスクローターを採用したインボードディスク、ブレーキトルク反応型のアンチダイブ機構TRAC、エア併用式のプロリンク式リアサス、アルミ鋳造式スイングアームなど、「量産市販車初」のきらびやかな装備がふんだんに投入されていた

画像2: ホンダ「CBX400F」が登場した背景とその後の大ヒット

まさに、ホンダの意地をかけての集大成。ミドルクラスにマルチエンジンの種をまき、それを結実させたのもまた、ホンダだったというわけだ。

CBXの登場は、400ccマーケットの勢力図も一変させた。RZの発売で勢いづくヤマハ、4気筒ミドルの代名詞ともなりつつあったカワサキFX、そしてDOHC4バルブやトリプルディスクブレーキという豪華装備をGSX400Fに投入したスズキを圧倒。アッという間にベストセラーの座に上り詰めた。

速くて、最新装備で、カッコいい。まさにユーザーの夢を具現化したモデルがCBX400Fだった。そして、このCBXの登場は、この後の日本のマーケットに「スポーツ化」という、明確な方向性を与えたのと同時に、ニューモデル競争の火をつけたのだった。

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