2018年2月にニューモデルとして発売されたNinja400は、250ccの車体に400ccのエンジンを搭載し、軽量・コンパクトかつパワフルで大ヒット。250ccと400ccの歴史を振り返りながら、このマシンの特徴を解説する。
※月刊オートバイ2019年4月号掲載「現行車再検証」より

400ccの苦境を救ったのはまたもカワサキ・ニンジャ

魅力的なモデルが少なく、モデルチェンジも少ない――。かつて、そんなジリ貧状態だった250㏄クラスを救ったのは、2008年のカワサキ・ニンジャ250Rだった。

画像: Ninja 250R(2008年)

Ninja 250R(2008年)

そのニンジャ250Rの登場で、ホンダもヤマハもスズキも、ニューモデルを続々と登場させ、250㏄クラスが再び元気になったのはご存知の通り。

250㏄って排気量のカテゴリーがダメなんじゃない、魅力的なモデルがなかっただけ、ってみんなが気づいた瞬間。だからニンジャ250は、250㏄クラスを、日本のオートバイ市場を救ったのだ。

でも待てよ。救うべきは250㏄だけ? いやそのひとつ上、実は400㏄クラスだって事情は同じようなものだ。

特に400㏄ってカテゴリーは日本特有のもので、かつて「中型限定免許」と呼ばれていた「普通二輪免許」があるから存在しているようなもの。免許は250㏄モデルに乗るのと同じ「普通二輪免許」枠なのに、車検があるという点はビッグバイクと同じ「大型免許」枠。

二つの免許のデメリットを併せ持つから、若いファンは「400㏄に乗るなら、大型免許取ってオーバーナナハンに乗るさ」なんてソッポを向く。400㏄不人気の原因は、ずばりココだろうと思う。

画像: Ninja 400R(2011年)

Ninja 400R(2011年)

けれど400㏄というカテゴリーは、普通二輪と大型二輪免許枠の「悪いところ取り」なわけではなく、実は普通二輪と大型二輪免許枠の「いいところ取り」でもあるのだ。

それが、小さいサイズで大排気量――という、オートバイという乗り物の決定的なメリット。かつて600㏄が「400㏄サイズで750㏄の出力」と評価されたことがあったけれど、いま400㏄は「250㏄の車体に650㏄の出力」なモデルに向かおうとしている。

口火を切ったのは、またもカワサキ・ニンジャだった。ニンジャ400は昭和50年、つまり1975年に、二輪免許に「中型限定」条件が付加された時以来の、歴史的「大逆転」オートバイともいえるのだ。

ライバルを圧倒する軽量コンパクトさ

画像: Ninja 400 KRT Edition(2018年)

Ninja 400 KRT Edition(2018年)

2018年にデビューしたニンジャ400は、これまでのニンジャ400Rの後継機種だ。けれど、その成り立ちは思い切り変化していて、これが歴史的「大逆転」の意味でもある。

従来型400Rは、海外仕様のER6をベースとした400㏄バージョンだった。走ればのんびりゆったり、おおらかな乗り味で、600㏄サイズの車体に400㏄エンジンという、スポーツバイクの味が希薄なモデルだったのだ。

画像: ライバルを圧倒する軽量コンパクトさ

それが新型は一新。今度はなんとニンジャ250と同時開発で車体を共有化した400㏄バージョン。つまり250㏄のボディに400㏄エンジンを積んだスポーツバイクだ!

先代の400Rが44PSを発揮、199㎏の車両重量だったのに対して、現行モデルは48PSで167㎏! 30㎏以上の軽量化でパワーアップなんて、これは事件なのだ。

ちょうど1年前、ライバル車と乗り比べたことがあった。ホンダCBR、ヤマハR3、そしてニンジャと一長一短はあったが、ニンジャの軽量コンパクトさと力強さは圧巻! スポーツナンバー1だったのだ。

大を兼ねた小であり、小を兼ねた大である

画像1: 大を兼ねた小であり、小を兼ねた大である

ニンジャ400の乗り味は、単純明快。まさに250㏄のボディサイズに400㏄の力があるタイプで、軽量コンパクト、俊敏で力強く走る。

250㏄のボディに48PSとシングルディスクブレーキは……と不安がる向きもあろうけれど、心配無用。車体剛性や制動力の不足を感じることはなく、ニンジャ250のバイアスタイヤに対し、400はラジアルタイヤを装着していることで、直進時もコーナリング時も、安定感は段違いだった。

画像2: 大を兼ねた小であり、小を兼ねた大である

しかも、発進トルクからズ太いニンジャ400の水冷ツインは、決して手に負えない力を出すタイプではない。回転を上げたときの盛り上がり感はむしろ250の方がドラマチックで、400は太いトルクがスピードを乗せてくれて、回転を上げなくとも快適に走れる。

それでいて、6500回転以上のエリアでは、完全にひとクラス上の力強さがある。そのパワーを250㏄の気軽さで振り回せるのがニンジャ400の真骨頂なのだ。

細かく動く局面では250㏄の気軽さを、クルージングでは650㏄の快適さを味わえる、これが250/400同時開発の狙いなのだろう。

小さい方と大きい方の良さを兼ね備えたことで、ニンジャ250もニンジャ650もかすんでしまうかも――そんな余計な心配をしちゃうほど、ニンジャ400の完成度は高い。

ステップアップよりもダウンサイジング

画像1: ステップアップよりもダウンサイジング

スポーツラン、街乗りで光るニンジャ400の良さは、クルージングでも感じることができる。軽量な車体ゆえの不安定さはなく、100㎞/h+αのクルージングは快適のひとこと。

クルージングでは車重の重さがメリットになることが多いが、ニンジャ400の車重が軽薄さを感じさせることはない。

同じ重量の250では安定感に欠けることがあっても、400は駆動力があるからOK。6速100㎞/hは約6000回転で、これはニンジャ250が7200回転ほど回っている局面。燃費もいいし、安定性も高いし、エンジンをブン回さないクルージングで、長距離だって疲れは変わってくる。

画像2: ステップアップよりもダウンサイジング

ニンジャ400の軽量コンパクトさはスポーツランで光るけれど、クルージングでも大きなメリット。250㏄とのボディ共用化は、これほどまでに得るものが多い。

250㏄から乗り換えるメリットは少ないかもしれない。けれどニンジャ400ならば、手に負えないビッグバイクに「乗せられている」層の乗り換え先にもピッタリなのである。

文:中村浩史/写真:島村栄二

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