1969年のナナハン、1979年の750F。そして1992年のスーパーフォアときて、2018年に誕生した、まったく新しいCB。2眼メーターもない、テールカウルもないこれが、この先のホンダスポーツの軸になる——。
(※月刊オートバイ2019年2月号掲載「現行車再検証」より)

いつの時代もど真ん中、それがホンダCB

2017年の東京モーターショー。ホンダブースの中央付近に展示されていた「ネオスポーツカフェ」と銘打たれたコンセプトモデル。僕はこのオートバイを、ほんのショーモデルとしてしか見ていなかった。

画像: 東京モーターショー2017に出展された、ホンダ Neo Sports Café Concept

東京モーターショー2017に出展された、ホンダ Neo Sports Café Concept

丸一灯ヘッドライトだけれどLED、プロアームにスイングアームマウントフェンダー、そしてテールカウルのないショートデッキテール。オーソドックスなスタイリングに新しさのエッセンスを加えて、ディテールの隅々がカッコいい。

カッコいいけど、市販までには変わっちゃうんだよね——。そんな思いで見ていたのだ。

けれど、東京モーターショーのすぐ後に開催されたEICMA(ミラノショー)で、市販前提モデルとして登場したCB1000Rは、まさにあのコンセプトモデルそのまま。しかも車名は1000「R」。以前にヨーロッパモデルで存在したことがある車名だが、日本へは初登場。これが新世代CBなのか!

画像: ホンダ CB1000R

ホンダ CB1000R

CBという車名は、ホンダの根っこにあるものだと思う。古くは1969年に登場したナナハンことCB750FOURがそうだし、79年の750Fも92年のスーパーフォアも、ホンダの根っこ、CB。

大げさに言うとCBとは、スポーツバイクに対するホンダの考えが詰まっているもので、その時代のド真ん中にいるオートバイ。こう思っているファンは少なくないだろうと思う。

その回答がこれなのだ。水冷エンジンにモノバックボーンフレーム、倒立フォークにプロアーム。伝統のネイキッドスタイルはひとつひとつのパーツに新しさを持たせて、とうとう最高出力は145馬力をマークするまでになった。

「ひとつ前の最新CB」空冷1100からの大変身だ。

万能選手なのか、面白味のない優等生か

画像1: 万能選手なのか、面白味のない優等生か

CB1000Rに初めて乗った時、なんだかとらえどころのないオートバイだな、と思った。大渋滞の街乗りを抜けて、高速道路を走り、ワインディングも、山間のバイパスをのんびり流しもした。

もちろん、よく走るし、よく曲がる。けれど「これ」といった突出したものがない。そこについ引っかかってしまうのだ。

低回転からのトルクは明らかに太く、そこから中回転域にかけてのスピードの乗りが早い。これはCB1100より強烈で、排気量の大きいCB1300並み。調べてみるとファイナルが1100や1300よりローギアードなこともあって、それが低回転での力を強調している。

ハンドリングはクイックさよりも安定性分をわかりやすくしたもので、それでもCB1100や1300よりも軽快なタイプ。街乗りスピードでも、高速道路のクルージングでも、この印象は変わることはなかった。

画像2: 万能選手なのか、面白味のない優等生か

ワインディングに持ち込むと、CBのスポーツ性が際立っていく。スポーツランをすると、いきおいアクセルのオンオフが激しくなるけれど、その時の車体の動きが俊敏で、反応が早いのだ。CBR1000RRのようなキレ味というよりは、安心感があって攻め込めるタイプで、ゆっくり走っている時でも「もっと寝かせてもっと攻めてこい」って急かしてこない。

いつ、どんなシチュエーションでも不安なく、不満もない。いつも及第点で、悪く言えばカドがない。それはきっと、誰が乗っても同じように感じることだろう。いつでもどこでも誰とでも——だから、CB1000Rがなにを狙ったのか、どういった使い方をした時に光るのかがわかりづらかったのだ。

開発者の方のお話を聞くに、ちょっと足を延ばして日帰りツーリングが楽しいイメージで、なんて言うけれど、そんなのどんなバイクだって当てはまるもの。そこのもう一歩深いところを探りたいのだ。

だから、CB1000Rには長く乗りたかった。そして僕は、奇策に走ったのだった。

長時間乗って分かるCBの快適さと楽しさ

画像1: 長時間乗って分かるCBの快適さと楽しさ

長く乗りたい、ワインディングも高速も、そうでない一般の道も——。だから、その時ちょうどケニー・ロバーツさんが来日、九州・熊本でツーリングをしているということで、そこに合流することにした。

編集部から九州まで自走も考えたけれど、ホンダドリーム福岡東さんに試乗車があると聞きつけて、福岡まで空路移動、福岡から熊本まで移動して、九州ツーリングに参加、いや取材機会としたのだ。ね、奇策でしょ?(笑)

画像: 今回の試乗取材では、九州・熊本を舞台としたケニー・ロバーツ・ジャパン・ラリーに合流。参加者のアメリカンたちは、アメリカで売っていない新世代CBに興味津々でした。

今回の試乗取材では、九州・熊本を舞台としたケニー・ロバーツ・ジャパン・ラリーに合流。参加者のアメリカンたちは、アメリカで売っていない新世代CBに興味津々でした。

福岡市内から一般道を走って高速道路へ。熊本までの約200km弱、のんびりとクルージングすると、CB1000Rのキャラクターのひとつである、ツーリングの快適さがクローズアップされる。

トップ6速で80km/hは3400回転、100㎞/hは4200回転。トルクがあふれている回転域で、のんびり定速で走るのも、一気に加速するのも思いのまま。ただし、6速のレシオがもう少しハイギアードだったら、ツーリングの時の使用回転域が低くてラクなのにな、と思うことはあった。

画像2: 長時間乗って分かるCBの快適さと楽しさ

夕方の熊本市内へ踏み入れると、そこは結構な渋滞路で、トルクあふれるエンジンと、シフトアップ&ダウン両方に使えるクイックシフトが気持ちよかった。長距離を走ったあとにクラッチレバーを握らないって、本当にありがたい。これも長く走らなきゃわからないことだ。

シートはやや硬め。足着き性はいいけれど、ちょうどお尻を載せる場所が硬く、2時間くらいでお尻が痛くなってしまう。ま、ちょうどいい休憩お知らせ機能だと考えたらいいかな。

画像3: 長時間乗って分かるCBの快適さと楽しさ

この先15年を背負っていけるCB1000R

阿蘇のワインディングを走った時は、その前に走ったときとは明らかに事情が違う。それは、前回の試乗が「ワインディングを走る」ために出かけたのに対し、今回は「ツーリングに出て、その出先でワインディングに」というパターンだからだ。

長い距離を走って疲れ気味、ここでエネルギーを使わずに帰りのことも考える、ってシチュエーションでは、CBは前回よりも、もっと優しかった。

新しい発見は、パワーモードが「スポーツ」の時に、エンジンの反応が元気良すぎなこと。アクセル全閉で減速、そこから開けた瞬間の「ドンツキ」が3速くらいまで感じられて、体を持って行かれてしょうがない。

画像1: この先15年を背負っていけるCB1000R

だから、それ以降はワインディングを「スタンダード」で走った。気持ちよくコーナーをクリアするためには、このくらいのアクセルオン→リアタイヤグリップ、という反応がベスト。ワインディングでは、上り区間でもない限り、2000回転からでも車体が前に進むから、イージーにワインディングを駆けられるのだ。この低回転トルク、まぎれもないCBの武器だ。

CBに搭載された電子制御は、何度か部分的に濡れた路面で、トラクションコントロールが何度か介入したくらいで、大きな恩恵はなし。でも、電子制御は、積極的に介入してくるより、転ばぬ先の杖でいいのだ。

画像2: この先15年を背負っていけるCB1000R

走りに走った、ほぼ4日間で1000km弱。結果CB1000Rは、つかみどころがないどころか、どんなステージでも最大限にライダーを楽しませるオートバイだった。何かに特化しないで、街乗りメインも、ツーリングメインも、ワインディングメインのライダーでも満足できるオートバイ。そうか、それがホンダCBなんだ。

欲を言えば、このCB1000「R」に追加して、もっとオーソドックスなスタイルのCB1000「F」が発売されたっていいな、と思う。

現行CB1300が誕生15年。1000Rは、「この先15年を背負っていける」と思う。

文:中村浩史/写真:赤松 孝、南 孝幸、中村浩史

画像3: この先15年を背負っていけるCB1000R

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