今や、ロングツーリングバイクと言えばメガスポーツよりアドベンチャー!
雨が降り、それは豪雨となって視界を遮りはじめる。路面は濡れ、河ができて、周りがペースを落とし始めてもアドベンチャーなら全く平気、どんとこい!
まさに全天候型、旅するオートバイなのだ。
※月刊オートバイ2018年11月号「現行車再検証」より

いまやロングツーリングバイクといえば、アドベンチャーモデルの時代か

かつてはツーリングバイクと言えば、今でいう「メガスポーツ」が最適解だった。スズキでいえばGSX‐R1100に対するGSX1100F、それ以前のカタナに対するGSX1100EF、後のGSX‐R1000に対するハヤブサ。

ロングランもショートランもこなし、スーパースポーツに劣らない運動性、そして快適なクルージング性を併せ持つモデルたちだ。

けれど、いま休日のツーリングスポットに出かけてみると、その座は完全にアドベンチャースポーツに取って代わられてしまった。BMWのR1200GS、ホンダ・アフリカツイン、そしてスズキVストローム1000&650。

画像1: いまやロングツーリングバイクといえば、アドベンチャーモデルの時代か

特に、いかにもロングランをしてきたという風情の他府県ナンバー、トップケースやパニアケースを装着した旅仕様の車両といえば、アドベンチャーだ。くたくたに汚れた車体、使い込んだタイヤやチェーン、ナビやUSBソケットを装着した旅仕様がまぶしい。アドベンチャーが今、あちこちで輝いている。

アップライトなポジション、低回転からトルクのあるエンジン、全天候型タイヤの装着に、大径のフロントホイール。スポーツバイクのほとんどが前後17インチタイヤを履いているのに対し、アドベンチャーがフロントに大きく、リアが小さいホイールサイズを履くのは、乱路面での走破性をあげるためと、直進安定性を上げるためだ。

僕の「旅バイクの基準」は、ロングとショートラン、そしてワインディングの3つをいかにこなすか、というポイントだ。

誰しも、自宅のすぐ目の前に高速道路の入り口があるわけではないし、目的地だってワインディングのさなかにあることがない。たいていの旅は、自宅ガレージからえっちらおっちら引っ張り出して住宅地を抜け、時に渋滞することもある一般道を走って高速道路へ。目的地の最寄りの出口を出たら、ワインディングを縫って、現地の街並みを抜け、目的地や宿に入る。

さらに荷物だって積むし、時には未舗装路を走ることだってある。旅バイクとは、かように総合性能が高くなければならない。そのトップにいるカテゴリーが、アドベンチャーなのだ。

画像2: いまやロングツーリングバイクといえば、アドベンチャーモデルの時代か

Vストローム1000/XTは、その「総合性能」が光るモデルだ。古くはTL1000S系の、スズキ初の大排気量スポーツVツインエンジンを搭載し、走行性能でいえば、ややスポーツ寄りの特性。

ベースエンジンは、もっと高回転高出力型のスーパーVツインだったけれど、それがウソのように低回転域からトルクフルなエンジンで、ギアを気にせずに加減速できる幅広いパワー特性を持っている。

ハンドリングもスポーツバイク的なソリッド感があって、単なる旅仕様だとは言えないほどのスポーツ性を見せる。特に、車体剛性が高く、前後サスペンションの動きが高品質なため、ラクなオートバイ、と言えばイメージされるようなダルなハンドリングや、操作に対して一拍置くような穏やかさはない。

もちろん、それはスーパースポーツモデルとは次元が違っていて、スポーツランを急かされるような性格のものではない。

画像3: いまやロングツーリングバイクといえば、アドベンチャーモデルの時代か

やはりヨーロッパで鍛えられた懐の深さがあって、日本国内で想定されるクルージングスピードやワインディングのペースを、余裕を持って受け止めてくれるような印象なのだ。

法規さえ許せば、150㎞/h巡航や、右に左にフルバンクを繰り返すワインディングランにも対応できる万能旅バイク。これがVストローム1000/XTの神髄だと言っていい。

トラクションコントロールや前後のフルアジャスタブルサスペンションは、やはりこの性格だからこそ必要な装備なのだし、現行モデルに新採用された、GSX-Rばりの「モーショントラック型ABS」も、前後ホイールの速度差だけではなく、その時に直進しているかバンクしているかの姿勢状況まで検出して介入の可否を判断するシステム――もはや至れり尽くせりというしかない魔法の杖なのだ。

画像4: いまやロングツーリングバイクといえば、アドベンチャーモデルの時代か

雨の中、日帰り300kmの旅で実力を発揮する

画像1: 雨の中、日帰り300kmの旅で実力を発揮する

スポーツ性ばかりをクローズアップしたけれど、むろん「旅バイク」の本質であるロングツーリングの快適性こそVストロームの語るべきところだろう。

実は今回の試乗では、東京新橋のオートバイ編集部から伊豆半島一周という日帰り300kmコースを選択して出かけたものの、撮影予定日が雨予報。

本来ならば、カメラマンに撮影日延期を願い出るところだけれど、アドベンチャーならではのヘビーデューティさを味わうために、あえて強行。これがGSX-Rの撮影ならば、即刻中止の判断をしたはずだ。

走り出してすぐに強くなる雨脚。今年の夏らしく、雨というより豪雨、それも局地的にやってくるゲリラ豪雨だ。

けれどVストロームは、その雨をまったく苦にせずに走り続ける。雨粒がばしばし顔に当たるので、頭を少し低くして、スクリーン角度を起こすと、もうヘルメットに雨粒も走行風も当たらない無音空間状態だ!

ハンドリングも、高速道路では縦の轍やうねりに気をつけて、クルージングスピードをキープ。ワインディングでも、バンク角を気持ち浅めにするだけで、びくともしない安定感で駆け抜けることができる。

画像2: 雨の中、日帰り300kmの旅で実力を発揮する

雨風が止んだ普通の走行環境では、トップギア80㎞/hが3000回転くらい、100㎞/hで3600回転くらいで、ここから前車の追い越しなどで加速する場合も、シフトダウンなんか不要、アクセルひと開けで力強く瞬間移動する。

直進安定性が高く、レーンチェンジもビクともしない。なるほどこれは、長距離を走れば走るほど、ありがたみを感じることができるカテゴリーなのだ。
ハヤブサだって同じ快適性で走り続けることはできるだろうけれど、あのゲリラ豪雨は……きっとピットインしちゃう。条件が悪いほど、アドベンチャーの旅性能は光り輝くのだ。

「こんなデッカいバイク、扱えないよ」って人にこそ乗ってほしい。または、最近あんまり「バイクに乗らなくなっちゃったな、って人にこそ味わってほしい。

アドベンチャーは、オートバイの新しい楽しみ方すら提言してくれるようなカテゴリーだ。

画像3: 雨の中、日帰り300kmの旅で実力を発揮する

This article is a sponsored article by
''.