発売から少し時間が経過したモデルにあらためてスポットを当てたい。今回は、大艦巨砲超絶大馬力のメガスポーツ、Ninja ZX-14R。
※月刊オートバイ2018年3月号「現行車再検証」より

怪物は去りゆくのかメガスポーツの現在と将来

カワサキNinja ZX‐14R。1000㏄オーバークラス、200PS級の大パワーに、フルカウル。最高速は300㎞/hに迫る、世界最速を競うように発展し続けてきたこのカテゴリーは、いつしか「メガスポーツ」と呼ばれるようになった。

画像: Kawasaki Ninja ZX-14R

Kawasaki Ninja ZX-14R

スタートは80年代終盤。GPZ900Rはちょっと意味合いが違うから、その後継のGPZ1000RXあたりが始まりだろうか。さらにZX‐10、ZZ‐R1100へと発展するカワサキフラッグシップに、スズキGSX‐R1100やヤマハFZR1000がかみつき、いつしかひとり勝ちとなったカワサキに、今度はホンダがCBR1100XXスーパーブラックバードで戦いを挑んだ。

その戦いの輪にスズキGSX1300Rハヤブサが加わったのが2000年の少し前。ZZ‐R1100はZX‐12Rへと進化し「第2次メガスポーツ戦争」がスタートする。

そしてハヤブサ誕生から20年、いまメガスポーツの戦いは、スズキVSカワサキの一騎打ち。カワサキ陣営を代表するのが、ZZ‐R1400の後継たる、このZX‐14Rだ。

画像: Kawasaki Ninja ZX-14R [全長×全幅×全高]2170×780×1170㎜ [ホイールベース]1480㎜ [シート高]800㎜ [車両重量]269㎏ [エンジン]水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ [排気量]1441㏄ [ボア×ストローク]:84×65㎜ [最高出力]200ps/10000rpm [最大トルク]16.1㎏-m/7500rpm [ミッション]6速リターン [燃料タンク容量]:22L [タイヤ前・後]:120/70ZR17・190/50ZR17(2018年モデル)

Kawasaki Ninja ZX-14R

[全長×全幅×全高]2170×780×1170㎜ [ホイールベース]1480㎜ [シート高]800㎜ [車両重量]269㎏ [エンジン]水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ [排気量]1441㏄ [ボア×ストローク]:84×65㎜ [最高出力]200ps/10000rpm [最大トルク]16.1㎏-m/7500rpm [ミッション]6速リターン [燃料タンク容量]:22L [タイヤ前・後]:120/70ZR17・190/50ZR17(2018年モデル)

ZZR1400から改称され、「Ninja ZX‐14R」となった12年仕様から、排気量はついに1441㏄へ。大艦巨砲、超絶大馬力メガスポーツのスタンダード、ここに極まれり。かくしてメガスポーツは、ロングツーリングバイクであり、かつスポーツ性を犠牲にせず、街乗りさえ苦にしない万能の人気カテゴリーとなった。

しかしそのメガスポーツの立場が今、おびやかされようとしている。ツーリングも街乗りもスポーツ性も兼ね備えるならば、それぞれに特化したキャラクターがあれば十分なのではないか、というモデルたちの存在だ。

事実、カワサキにはZX‐14Rと同時に、ZX‐10Rや、生産終了してしまったZRX1200DAEGがあり、Ninja1000/Z1000もVERSYS1000もラインアップされている。さらに2018年には、スーパーチャージドモンスターNinja H2をベースに、よりツーリング適性を向上させたH2SX/SEが誕生した。

冷静に考えればわかる。これだけラインアップが整理され始めている今、ZX‐14Rは存亡の危機にさらされているのだ。(※追記 2020年には「ファイナルエディション」が登場)

画像: 怪物は去りゆくのかメガスポーツの現在と将来

最高速じゃない強烈加速を楽しみたい

またがってみると、さすがにライダー込み350kgもの巨体が両手両足にズッシリとくるZX‐14R。それでもシート高の数字よりも低く感じられるシートのおかげで足つき性はよく、もも内側と接するタンクエンドやシート先端の形状がいいから、体にきれいにフィットする。だから、動き出してみると、さほど重さを感じなくて済むのだ。

画像1: 最高速じゃない強烈加速を楽しみたい

発進やスロットル微開域では200PSのパワーに圧倒されることはない。これは発進時にデリケートすぎる操作を強いないよう、極低回転域のトルクを意識して削ってあるためで、わざと大きく開けてみると、すぐにトラクションコントロール介入のサインが表示される。

街中での走りは、ほとんど2〜3000回転でOK。それ以上はもう非合法エリアで、トルクがグンと盛り上がる4000回転くらいでは、もうスゴいスピードになっているのだ。

もう一段トルクが盛り上がるヤマが7500回転くらいにあるんだけれど、そのときにはもう、ローギアで100㎞/hを突破してしまう。これは、付き合い方を考えないと(笑)。

ちなみに6速2000回転では60㎞/hくらいで、信号の少ない郊外のバイパスをスーッと流すならこんな回転域。この回転域でもZX‐14Rはスムーズに走ってくれて、加速するとき、ジワッとスロットルを開けてやれば、息つきなくとんでもないスピードになってしまうのだ。 

画像2: 最高速じゃない強烈加速を楽しみたい

ちょっと気になったのはギアの入り方。ニュートラルからローギアに踏み下ろした時に、大きめのシフトショックがどうしても消せなかった。クラッチレバーを長目に握っても、シフトペダル踏み方をスムーズにしてみても「ガチャン」というショックは小さくない。ここはカワサキに改善をお願いしたい。

それにしても、こんなシティスピードでも、ZX‐14Rのヘビー級の車重はほとんど感じなくなってくる。動きは軽く、それでいてきちんと安定感があるのは、特にフロントタイヤの接地感がわかりやすいからだ。もちろん、これは試乗したオーリンズショックを標準装備したハイグレード仕様であることも大きい。

フロントタイヤの接地感が掴みやすいのは、ライディングに怖さを感じないことにつながりやすい。こんなキャラクターも、ZX‐14Rが人気モデルであり続けている理由のひとつなのだろう。

そして、ZX‐14Rが最高にパフォーマンスを発揮するのは、やはり高速巡航だ。

画像3: 最高速じゃない強烈加速を楽しみたい

シティスピードでは軽快に感じられたハンドリングがしっとりとした安定感を持ち、完全無欠なウィンドプロテクション性能が、快適この上ないクルージングを提供してくれる。うん、いい、キモチいい。

トップギア6速で80㎞/hは2600回転、100㎞/hは3400回転、120㎞/hは4000回転といったあたり。ピークトルク発生回転は7500回転だから、いかに「回していない」状態でクルージングしているか、お判りでしょう。

その時のZX‐14Rの並列4気筒は、無振動というよりも力感をきちんと感じさせる粒だった回転フィーリングがあって、前車の追い越しなど、まさに一瞬のワープで済ませられる。

この瞬間がいちばん楽しい! テストコースで乗った時には、200㎞/hオーバーの巡航さえ快適で、ピタッとした直進安定性、それでいて俊敏なフットワークを味わえた。

それが100㎞/hやそこらの法定速度なのだから、なにも起きない! それでいて無味無臭でも退屈でもないのが、このスピードスターなのだ。

短い時間で遠くの場所まで快適に移動する――それがメガスポーツ最大の魅力であり、ZX‐10RにもNinja1000にも真似できない最高の世界だ。

画像4: 最高速じゃない強烈加速を楽しみたい

This article is a sponsored article by
''.