BMW、DUCATI、KTMを代表する3台のフラッグシップADVマシン達…。高速道路や一般道、林道など、あらゆる道を走ることで見えてきたひとつの答え。「旅性能」におけるキング•オブ•アドベンチャーは、一体どれだ?

あらゆる道を制覇する冒険王達。三車三様の魅力とは?

BMWのGSはアドベンチャーツアラーの元祖であり、多くの人が認めるこのカテゴリーを代表する車種である。この牙城に他のメーカーはどう挑むか。手っ取り早いのは寄せていくことだ。しかし、今回GSと一緒に乗った2モデルは、そうはしていない。

かといってあえて違う道を行っているのでもない。GSを横目で見ながら、後をついていかず、自分たちのフィロソフィーをはっきり持って、理想の走り、快適性や利便性などを包括した万能ツアラーを追求している。そこが面白い。

画像1: あらゆる道を制覇する冒険王達。三車三様の魅力とは?

そのGSは、従来から排気量を85ccアップして可変バルブタイミング機構を採用したが、まず何より評価したいのは足着きである。身長172cmでも両足がつま先部分までしっかり接地する。跨がりハンドルを掴むと、カウル付ビッグネイキッドより小さく軽く感じるくらい。これで選んだ、というユーザーがいても不思議じゃない。

新しい水平対向エンジンは、全域でトルクが増した。スロットルを開けていくと気持ちいい力強さがありながら神経質な面がいっさいない。特に街中や巡航で使いたくなる2千〜3千回転の十分なトルクと従順さは格別。高めのギアを選んで穏やかにクルーズできる。

そこから速度を上げたい時の加速も右手だけですむ。低い重心で、歩くようなゆっくりでもしっかりした安定感。コーナーリングはまるでネイキッドバイクのよう。以前よりフロントタイヤの接地感が掴みやすく、ワインディングを積極的に走っても楽しい。そして充実した快適装備。王様の椅子にあぐらをかいていない。

ムルティストラーダ1260エンデューロは良い意味で驚かされた。一流のスポーツモデルを作り、スポーツ性をアイデンティティにしてきたドゥカティ。これまでのムルティストラーダ同様、このモデルはそこを失わず、パワーの出方の角を上手に丸めて、実に滑らかで、懐が深くなった。 

画像2: あらゆる道を制覇する冒険王達。三車三様の魅力とは?

低回転域での制御が巧みで、前後にゆすられるような動きがない。そしてスロットルを開けたら、まあ速い。ふとメーターを見ると想像以上の速度が出ていたりする。電子制御サスは『スポーツ』モードでしっかり、『ツーリング』モードでしなやか、『エンデューロ』モードに入れるとそれほどストークは大きくないけれど奥まできっちり入って凸凹をいなす。ドゥカティの本気を見た。

デュアルパーパス性能、とりわけオフロード走行に力を入れているのが1290スーパーアドベンチャーRだ。KTMには、フロント19インチホイールで電子制御サスの、よりオンロード性能に重心をおいたスーパーアドベンチャーSもあるが、これはよりサスストロークを増やした21インチワイヤースポーク。

最低地上高もしっかりあり、この旗艦クラスでここまできっちりオフロード走行性能を確保している車種は他にない。ずっと高性能オフロード車を手がけてきたKTMの得意とする分野。シートは高いけれど、それを気にせず「もっとオフロードを走ろうよ」と言いたくなる。

1301ccとは思えないダートでの軽快性。普通の舗装路でもなんら不足もなく走り、快適性もバッチリ。”道を選ばない”という言葉がとてもしっくりくる。

旅の帝王は進化し続ける

BMW R1250GS

画像1: 旅の帝王は進化し続ける

「サスペンション性能を強化してさらなる進化をとげた冒険王GS」

アドベンチャーカテゴリーの中で王様と言えば、多くの人がその名をあげるBMWのフラッグシップ、GSだろう。その最も新しい機種のR1250GSに初めて触れた時、アシンメトリーなLDEヘッドライトは鋭い眼光ながら、ひるんだり、尻込みすることはなかった。

なぜなら、跨ったときに感じた1254ccのアドベンチャーモデルとは思えないコンパクトさ。まずシートが低い。身長172mのライダーの両足が、つま先まで届く。ハンドルバーも広すぎず、ライダー側へ適度な絞りがあるので、肘が外に出にくく、体に負担がかからないポジションなのだ。

フロント19インチ、リア17インチのキャストホイールを履いたこのスタンダードモデルは、ワインディングをデュアルパーパスアドベンチャーモデルだと思えないほど、積極的に走った。そのコーナーリングの動きと、乗車感は、ネイキッドのロードスポーツに近い。ビッグネイキッドの中にはこのGSより大柄に感じる機種もあるくらいだ。

画像2: 旅の帝王は進化し続ける

フロントはおなじみの、サスペンションの動きが減速Gによる影響を受けにくいテレレバーを採用している。姿勢変化が少ないフラットな乗り心地に貢献しているが、これまでタイヤからのインフォーメーションが多くない独特なフィーリングがあった。それがこのモデルになり、より把握しやすくなった。荷重を抜いて切り返す時や、旋回を始める動きの時の情報量が確実に増えた。

新型の大きなトピックスになっているのがエンジンの進化だ。ボアとストロークの両方を拡大して85cc増量しただけでなく、可変バルブタイミング機構を導入してきた。排気量アップにより厚みが出たトルクが、低回転域から、高回転域まで淀みなく味わえる。5千回転付近から加速に拍車がかかり、車速がグンと伸びて気持ちいい。

それよりも感心したのは2千回転から3千回転の間のパワーデリバリーだ。しっかりとしたトルクがあるだけではなく、スロットル操作にダイレクトに反応するも穏やかで、不快になるようなピッチングモーションが出ない。

画像3: 旅の帝王は進化し続ける

スロットルだけで速度調整がやりやすく、そこから追い越しをしたければ、右手の手首をひねるだけで、回転がついてきて加速ができる。だから5速、6速と高いギアを選択したまま、変化するオートバイの速度に合わせてもトルクが足りなくてギアダウンをしたくなるようなシーンが極端に少なくない。

停止からの発進時も極低回転でクラッチレバーをミートしたら、動いている限りエンストを気にしてクラッチレバーを握らなくていい。ギアチェンジがあるのでオートマチックとは言わないけれど、かなりイージーに走れて力強い。どんなシチュエーションでも気を使うことが少ない。

GSが目指しているのは、ライディングプレジャーを保ちながら、どこまでライダーの負担を減らせるか、と言うことだろう。バージョンアップを確実に達成しているところに、BMWブランドを代表する機種への意気込みを感じた。

BMW R1250GS <Styling>

画像1: BMW R1250GS <Styling>
画像2: BMW R1250GS <Styling>

SPECIFICATIONS
エンジン:空水冷4ストDOHC4バルブ水平対向2気筒
ボア×ストローク:102×76mm
総排気量:1254cc
燃料供給装置:フューエルインジェクション
最高出力:136PS/7750rpm
最大トルク:14.59kgf-m/6250rpm
全長×全幅×全高:2205×965×1490mm
ホイールベース:1510mm
シート高:850/870mm(STD)
タイヤ前•後:120/70-19•170/60-17
始動方式:セルモーター
変速機:6段リターン
圧縮比:12.5
車両重量:256kg
燃料タンク容量:20ℓ
価格:255万3000円〜(10%税込)

MACHINE DETAIL

画像: HPよりも大型のウインドスクリーン。多機能メーターの右側にあるダイヤルを手で回すことで、簡単に高さをアジャストして防風効果を調節することが可能な造りはHPと同じものを搭載している。

HPよりも大型のウインドスクリーン。多機能メーターの右側にあるダイヤルを手で回すことで、簡単に高さをアジャストして防風効果を調節することが可能な造りはHPと同じものを搭載している。

画像: シフトカム機構を備えるDOHC4バルブヘッドを持つ、排気量1254ccの空水冷フラットツインもシリーズ共通で、136PSという最高出力も同じ。

シフトカム機構を備えるDOHC4バルブヘッドを持つ、排気量1254ccの空水冷フラットツインもシリーズ共通で、136PSという最高出力も同じ。

画像: R1250GSはダイナミックESAを標準装備し、バイクの状態に応じてダンピングとプリロードが自動的に調整できるため、より安定した乗り心地を実現。

R1250GSはダイナミックESAを標準装備し、バイクの状態に応じてダンピングとプリロードが自動的に調整できるため、より安定した乗り心地を実現。

画像: フロントサスはBMWお得意のテレレバー形式。HPのストローク210mmに対しスタンダードは190mmだが、リバウンド側減衰力を調整可能なのは同じ。

フロントサスはBMWお得意のテレレバー形式。HPのストローク210mmに対しスタンダードは190mmだが、リバウンド側減衰力を調整可能なのは同じ。

画像: 方左側ハンドルには、多機能メーターでさまざまな機能の設定や操作を行うためのホイール状のマルチコントローラーや、ABS、サスペンション設定、クルーズコントロールなど各種機能の操作スイッチが集中配置されている。

方左側ハンドルには、多機能メーターでさまざまな機能の設定や操作を行うためのホイール状のマルチコントローラーや、ABS、サスペンション設定、クルーズコントロールなど各種機能の操作スイッチが集中配置されている。

画像: タンデムグリップと一体化されたコンパクトなリアキャリア。

タンデムグリップと一体化されたコンパクトなリアキャリア。

画像: フルカラー6.5インチのTFT液晶モニターを用いたメーターパネルは全車標準装備。デジタル表示のスピード、バーグラフ表示のタコメーターなど基本情報を表示するモードは視認性を重視したデザイン。

フルカラー6.5インチのTFT液晶モニターを用いたメーターパネルは全車標準装備。デジタル表示のスピード、バーグラフ表示のタコメーターなど基本情報を表示するモードは視認性を重視したデザイン。

文:濱矢文夫、編集部/写真:柴田直行

↓Part2へ続く

BMWの関連記事はこちら!

「ADVenture's 2019」に詳しく乗っています

This article is a sponsored article by
''.