伊藤真一さんにホンダのオートバイを思う存分乗り尽くしてもらい、新しい魅力を発見するロングラン研究所。今回は、マイナーチェンジされたCB1100RSをテストライド! 以前に乗ったマシンと比べてどこまで進化した?

前後サスペンションと17インチの乗り味がいい

画像1: 前後サスペンションと17インチの乗り味がいい

「マイナーチェンジで、乗り味以外にも、いろいろなところがアップデートされていますね」 (伊藤)

CB1100シリーズに乗るのは、この連載でニューモデルとして登場したRSと、EXを取り上げたとき以来です。実を言うと今回の企画で新しいRSを試乗で乗り出したとき、RSが前後17インチだと言うことをすっかり忘れてしまいました。

前の型のRSは、常に17インチタイヤを前後に装着していることをハンドリングから意識させられましたが、新しいRSは舵の入り方が切れ込むような感じがなくなりましたね。

その後じっくりRSに乗り込んでからは、確かに18インチで作られたものを17インチにしたモデルによくあるハンドリングの軽さを感じましたけど、今回乗り始めてほんの数キロ走ったときは、スタンダードの1100の前後18インチに乗っていると勘違いするくらい(苦笑)、17インチっぽさを感じませんでした。

画像: 「走り出してすぐに、前のモデルとの違いを感じましたね」とは伊藤さんのファーストインプレッション。「あれ? これ18インチだっけ? と思うくらい、17インチであることを意識させません。じっくり乗り込むと17インチらしさを感じますが……。よくまとまってます」。

「走り出してすぐに、前のモデルとの違いを感じましたね」とは伊藤さんのファーストインプレッション。「あれ? これ18インチだっけ? と思うくらい、17インチであることを意識させません。じっくり乗り込むと17インチらしさを感じますが……。よくまとまってます」。

新型RSは、前後のサスペンションがセッティング含めて非常に良くなっていますね。前の型のRSに試乗したときは、自分の好みに合わせてフロントのプリロードアジャスターを2回転締め込み、リアのイニシャルを最弱にしましたが、新型RSの前後サスペンションは標準セッティングのままでバッチリでした。

リアサスは特に良くなった印象で、初期の動き出しの感触がリンク式リアサスみたいに良いです。初期だけでなくリアサスの動きは全般に良くて、乗り心地も向上しています。新型RSが17インチっぽさを強く意識させなくなった要因には、フロントブレーキのタッチが良くなったことも影響しているのかもしれません。

前の型と同じラジアルマウント方式のディスクブレーキですが、握り始めの最初のタッチがすごく良くなっています。そこからさらに握りこんでいく領域でも細かい調整ができるので、17インチでも舵の切れ込みを感じさせないのだと思います。

前の型ではRSよりもEXのフロントブレーキのほうが効き方としては好ましいと思いましたが、新しいRSのフロントブレーキは非常に良くなっています。そういった細かい部分の改良によって、RSは前の型より更に良くなったと言えるでしょう。乗ってみないと気がつかないですね。

画像2: 前後サスペンションと17インチの乗り味がいい

初めて乗った時のエンジンフィーリングは、まんま「CB750フォア(K0)」みたいでしたね

今回のRSの試乗では、雨で濡れた路面を走った距離が多かったですが、OEMタイヤのダンロップ・ロードスマートⅢのマッチングはすごく良いなと感じました。前の型のRSに試乗したときは、タイヤの幅をワンサイズ狭いものにしたらどのように変わるだろうという興味もわきましたけど、今回はそのようなことを思うことはありませんでした。

サスペンションやブレーキなど、足まわりに関してRSは前の型よりも良くなりましたが、エンジンについても非常に良くなりましたね。最初に乗り出したとき、このフィーリングはまんまCB750フォア(K0)みたい! と思いました。スロットルが重いか軽いかの違いくらいしかないくらい、それくらい似たフィーリングに感じました。

画像1: 初めて乗った時のエンジンフィーリングは、まんま「CB750フォア(K0)」みたいでしたね

昔話になりますけど、若い頃ホンダサービスに2年間いたのですが、そのときに整備に入ったきたK0に何回か乗る機会があったんです。当時は特に何も感じませんでしたが、最近コレクションホールのK0に乗ったのですが、あのときは感激しましたね。

サービス時代に乗ったK0は程度もバラバラでしたが、コレクションホールのK0は新車みたいに完調でした。下からトルクがある低中速型な性格で、4発の同調が揃っていたので吹け上がりが良く、とても乗っていて楽しかったです。整備状態が良いので、K0でよく言われるスロットルの重さも感じませんでしたね。

前の型のRSとEXに試乗したときは、K0っぽいとは感じませんでしたから、インジェクションのセッティングとか色々変えているのでしょうね。RSのエンジンって、水冷のCB1000Rみたいに高回転までカーンと回るようなキャラクターではないので、いわゆる高揚感は弱めです。

でもRSはパーシャルスロットルで、ブーンと走っているときが楽しくて、そのフィーリングを楽しむエンジンだと思います。

画像2: 初めて乗った時のエンジンフィーリングは、まんま「CB750フォア(K0)」みたいでしたね

1速からの発進が前の型よりしやすくなっていて、そこからの吹け上がり方もより自然な印象になっています。そして1速から2速へとシフトアップして……どのギアでも気持ち良く走れる感じで、頻繁なシフトをしなくても十分なスピードを出せます。

トップの6速の1200rpmからブォーっと加速することもできますよ。ひと昔前のバイクならば、ガリガリガリとノッキングするところですけど、このあたりは現代のインジェクションの素晴らしさを感じさせますね。

編集スタッフは、ちょうど1969年のK0誕生から今年で50周年だからフィーリングを似せてきたのでは? と冗談めかしていいますが、それはさておきエンジンの印象としてはK0っぽさを感じましたね。

街中を4速2000rpmで走っているような、スロットル開度が低くてトルク変動がないときは、本当にK0みたいです。逆に6速に入れて1000rpmで走るとスロットル開度が大きめになりますが、そうするとK0っぽさはなくなりますね。

どの回転域やスロットル開度でもエンジンフィーリングが良く、インジェクションのセッティングによる味付けが非常に熟成されている印象を、新型RSから受けました。

「自分が好きな方向にマイナーチェンジしてくれる」と錯覚するくらい、近年のホンダは「ドンピシャ」ですね

画像1: 「自分が好きな方向にマイナーチェンジしてくれる」と錯覚するくらい、近年のホンダは「ドンピシャ」ですね

スタイリングについては、大関さんが乗って走る後ろ姿を車の中から見ているとき、テールランプの光り方が非常に格好良いなと思いました。こういう細かいところで、街で走っている姿を見て「格好良い」と思わせるデザインは、一般の人からのバイクのイメージを向上させるには、大事な点と思いました。

この連載などで色々なニューモデルに乗る機会がありますが、ここ2〜3年は多くのホンダ車で、マイナーチェンジによる洗練度の向上にびっくりさせられますね。自分が好きな方向性に、ドンピシャリとハマるようにマイナーチェンジしてくれている、と錯覚するくらいです(苦笑)。

自分は性格的に、バイクの色々なところの「アラ」が気になってしょうがないタイプなのですが、近年のマイナーチェンジを受けたホンダ車は、本当に細々したフィニッシュも良くなっている印象です。

昔は溶接の跡が……とか、ここのフィニッシュが……とか、気になった点が多かったですが、最近はそういう細かいところの品質が上がってます。新型のRSでは、オーナーになる方にとっては、所有欲を満たしてくれることにつながりますから、非常に良い傾向だと思いますね。

画像2: 「自分が好きな方向にマイナーチェンジしてくれる」と錯覚するくらい、近年のホンダは「ドンピシャ」ですね

また新型RSもそうですが、改良を受ける毎に乗りやすくなっていますね。乗りやすいと言うと多くの方は「優等生的」で刺激がないと連想したりするみたいですが、自分の考えではリッターバイクに優等生ってないと思うんです。リッターバイクはやっぱり排気量大きいだけあって馬力はすごくありますし、非日常的なスピードも出るものです。

自分も開発をやっていますが、開発のときに考えているのはレーシングマシンでも公道用市販車でも、誰でも乗れるバイクじゃないとダメだということです。速く走れる理由や良く曲がる理由などを、ちゃんと乗り手が理解できるバイクでないといけないと思っています。

たとえトンがっていて速く走れると評判のバイクでも、それがもし「乗る人が限られる」あるいは「乗り手を選ぶ」ようなバイクなら、自分は好きではありません。

画像3: 「自分が好きな方向にマイナーチェンジしてくれる」と錯覚するくらい、近年のホンダは「ドンピシャ」ですね

絶対多くの人が持て余すはずのリッターバイクを、どんなレベルの人が乗った場合でも、誰もが優等生と思えるくらい乗りやすく仕上げているところが、新型RSの素晴らしさですね。

またこういう風にRSを熟成させた開発者の皆さんもすごいと思いましたし、それを均一の品質で量産車として送り出せる生産管理の技術の向上ぶりについても、改めてすごいと今回の試乗をとおして感じました。

CB1100RS

画像: 2019年型CB1100RSは、減衰力特性に優れたフロントフォーク、14→17リットルに容量を増やした燃料タンクを採用した新型CB1100をベースとしている。CB1100RSは専用装備として、減衰力の調整機能付きのリアサスペンションを採用。なおカラーリングは、ダークネスブラックメタリック、マットベータシルバーメタリック、そしてパールホークスアイブルーの3色を用意する。

2019年型CB1100RSは、減衰力特性に優れたフロントフォーク、14→17リットルに容量を増やした燃料タンクを採用した新型CB1100をベースとしている。CB1100RSは専用装備として、減衰力の調整機能付きのリアサスペンションを採用。なおカラーリングは、ダークネスブラックメタリック、マットベータシルバーメタリック、そしてパールホークスアイブルーの3色を用意する。

画像: CB1100RS

●全長×全幅×全高:2180×800×1100㎜
●ホイールベース:1485㎜
●シート高:785㎜
●車両重量:252kg
●エンジン形式:空冷4ストDOHC4バルブ直列4気筒
●総排気量:1140cc
●ボア×ストローク:73.5×67.2㎜
●圧縮比:9.5
●最高出力:90PS/7500rpm
●最大トルク:9.3kg-m/5500rpm
●燃料タンク容量:16L
●キャスター角:26゜00 ′
●トレール量:99㎜
●タイヤサイズ(前・後):120/70ZR17・180/55ZR17
●ブレーキ形式(前・後):ダブルディスク・ディスク
■価格:140万3600円(10%税込)

伊藤さんの注目ポイント

画像: 伊藤さんのお気に入りポイントのひとつは、エンブレムもブラック仕上げの燃料タンク。「容量が大きくなったのは、ロングツーリングを楽しみたい人には嬉しいことですね」

伊藤さんのお気に入りポイントのひとつは、エンブレムもブラック仕上げの燃料タンク。「容量が大きくなったのは、ロングツーリングを楽しみたい人には嬉しいことですね」

Detail

画像: アナログ式二眼メーターの中央のインジケーターは、ギアポジションや逆算燃費計などを表示。カバー部はサチライトメッキ処理を施すことで、質感の向上が図られている。トップブリッジは、バフ手仕上げ仕様だ。

アナログ式二眼メーターの中央のインジケーターは、ギアポジションや逆算燃費計などを表示。カバー部はサチライトメッキ処理を施すことで、質感の向上が図られている。トップブリッジは、バフ手仕上げ仕様だ。

画像: 2ピースボトム採用のフロントサスペンションは、インナーチューブ径43mm。CB1100EX同様、ショーワ・デュアル・ベンディング・バルブを採用。セッティングの最適化により、リニアな減衰特性を実現。

2ピースボトム採用のフロントサスペンションは、インナーチューブ径43mm。CB1100EX同様、ショーワ・デュアル・ベンディング・バルブを採用。セッティングの最適化により、リニアな減衰特性を実現。

画像: 全CB1100シリーズ共通装備として、ETC2.0車載器を標準装備。そのほか荷掛けフック、キーロック式ヘルメットホルダー、盗難防止機構「H・I・S・S」も全シリーズに標準装備されているのが嬉しい。

全CB1100シリーズ共通装備として、ETC2.0車載器を標準装備。そのほか荷掛けフック、キーロック式ヘルメットホルダー、盗難防止機構「H・I・S・S」も全シリーズに標準装備されているのが嬉しい。

画像: 寒い季節にとてもありがたみを感じる、専用インジケーターランプを含むグリップヒーターを全CB1100シリーズは標準で装備。スイッチオンで、すぐに温まってくれる立ち上がりの早さも魅力である。

寒い季節にとてもありがたみを感じる、専用インジケーターランプを含むグリップヒーターを全CB1100シリーズは標準で装備。スイッチオンで、すぐに温まってくれる立ち上がりの早さも魅力である。

画像: 「初期作動感がまるでプロリンクサスみたい」と伊藤さんを驚かせたリザーバータンク付き分離加圧式の倒立ダンパー型リアショック。圧側4段、伸び側15段の減衰調節機構を新たに追加しているのが特徴。

「初期作動感がまるでプロリンクサスみたい」と伊藤さんを驚かせたリザーバータンク付き分離加圧式の倒立ダンパー型リアショック。圧側4段、伸び側15段の減衰調節機構を新たに追加しているのが特徴。

RIDING POSITION

「どっしり座れて、ゆったリ走れる大人なポジション」

画像: 男性ライダー身長:179㎝

男性ライダー身長:179㎝

「同じリッターネイキッドのCB1000Rは前寄りに座って、後ろ側が上がっている感じですが、CB1100RSのライディングポジションは"超自然"です。シートに跨って両手を前に伸ばすと、そこにハンドルがある、という感じですね」とは伊藤さんの評価。

画像: 女性ライダー身長:172cm

女性ライダー身長:172cm

なおタンデム走行を試してくれた大関さんの感想は、ちょっと手を握るところが低いけど快適、というもの。なお女性ライダー視点では、「乗りやすいですけど、もうちょっと車重軽いと嬉しいな」とのことでした。

画像: RIDING POSITION

写真:柴田直行/モデル:大関さおり/まとめ:宮崎 健太郎

Honda 公式ホームページ

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オートバイ 2019年12月号 [雑誌]

モーターマガジン社 (2019-11-01)

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