レーサーと同構成の90度Vツインとアルミツインスパーで生まれた新世代レプリカ

画像1: レーサーと同構成の90度Vツインとアルミツインスパーで生まれた新世代レプリカ

1986 NSR250R(MC16)

画像: 1986 NSR250R(MC16)

1986 NSR250R(MC16)

<主要諸元>1986 NSR250R(MC16)
全長/幅/高:2035/705/1105mm
シート高:750mm
車軸距離:1360mm
車体重量:141kg(装)
燃料消費率:41.0km/L ※定地走行テスト値
燃料容量:16L
エンジン:水冷2サイクルV型2気筒
総排気量:249cc
最高出力:45ps/9500rpm
最高トルク:3.6kg-m/8500rpm
変速機:常時噛合式6段リターン
タイヤサイズ:前100/80R17(52H)・後130/70R18(63H)
推奨トランスミッションオイル:ウルトラU(10W-30)
オイル容量:全容量0.9L
スプロケ:前15|後42
チェーンサイズ:520|リンク108
発売当時車体価格:55万9000円(税別)

1983年のMVX250F、1984年のNS250R/Fと、連続して2サイクル250㏄スポーツを市場に送り込んできたホンダは、RZ250RやRG250ガンマなどのライバルと競いながらこのクラスでの販売力を高めてきた。しかし1985年11月、TZR250が登場すると状況は変化、ヤマハが圧倒的な強さを誇った。

同車の独走を阻止するためにホンダが手がけたのが、レーサーRS250Rとともに開発した新たな公道向けレプリカ、それが「NSR250R」だった。

両機種の手本となったのはワークスレーサーRS250RWであり、NSR500を半分にしたともいわれるこのマシーンはフレディ・スペンサーのためにワンオフされたものである。そして1985年、彼は500㏄と250㏄の両クラスでタイトルを獲得する偉業を果たした。

V4の半分なのでエンジンはV型2気筒。フレームは左右レールが直線的なツインスパー。これらの構造をRS250RとNSR250Rは踏襲した。

画像: 外装部品はレーサーRS250Rに通じるデザインとしているが、燃料タンクは前後長を短縮して高さを増しており、やや上方に移動したハンドルグリップの位置に合わせてアッパーカウルの逃げを大きくし、ウィンドスクリーンの上端部も引き上げている。シートはこれまでの2作とは大きく異なるセパレートで、非常に小さなタンデム用をシートカウル上面と同じ赤としてシングルシートのように見せるのは斬新な手法だった。タンデムステップは短いサイレンサーステーで支持され、踏部はキックアーム先端のように細く、すべてを黒として存在感を潜める。全長/全幅/全高は2035/705/1105㎜で、NS250Rより30㎜長く、15㎜狭く、20㎜低い。軸距は15㎜短い1360㎜、シート高は−30㎜の750㎜、乾燥重量は19㎏軽量な125㎏を資料に記載。

外装部品はレーサーRS250Rに通じるデザインとしているが、燃料タンクは前後長を短縮して高さを増しており、やや上方に移動したハンドルグリップの位置に合わせてアッパーカウルの逃げを大きくし、ウィンドスクリーンの上端部も引き上げている。シートはこれまでの2作とは大きく異なるセパレートで、非常に小さなタンデム用をシートカウル上面と同じ赤としてシングルシートのように見せるのは斬新な手法だった。タンデムステップは短いサイレンサーステーで支持され、踏部はキックアーム先端のように細く、すべてを黒として存在感を潜める。全長/全幅/全高は2035/705/1105㎜で、NS250Rより30㎜長く、15㎜狭く、20㎜低い。軸距は15㎜短い1360㎜、シート高は−30㎜の750㎜、乾燥重量は19㎏軽量な125㎏を資料に記載。

NSR250Rは1986年10月1日に最初期モデルが登場。価格は、1984年11月にヤマハが市場に投入した初代TZR250に+1万円の55万9000円だった。

車体色は写真のファイティングレッド×ロスホワイトの1色で、赤から白に切り替わる部分に太さが異なるストライプが3本並ぶデザインは速さを感じさせた。

先代の2サイクルスポーツ、NS250Rが登場した当時、レーサーに近い外観や機構に驚かされたものだが、NSR250Rはその数段上、レーサーそのものといえるもので、見る者を大いに興奮させた。

画像2: レーサーと同構成の90度Vツインとアルミツインスパーで生まれた新世代レプリカ

フロントウィンカーをアッパーカウル側面、リアウィンカーをテール/ストップランプ両脇に配しており、サイレンサーの左右への張り出しも小さいため、前後からの眺めは細身な印象が際立つ。

画像3: レーサーと同構成の90度Vツインとアルミツインスパーで生まれた新世代レプリカ

タイヤは、フロントが100/80-17、リアが130/70-18で、S字断面のスポークを3本並べたホイールも新作。

外装は公道走行に合わせて細部を変更。骨格はレーサーの基本を踏襲する

画像1: 外装は公道走行に合わせて細部を変更。骨格はレーサーの基本を踏襲する

フロントブレーキディスクはアルミ製のディスクハブを備えるフローティングで、片押し式2ピストンキャリパーとの組み合わせをダブルで装備。リアキャリパーも片押し式2ピストンで、動きを規制するロッドを廃した小さなブラケットで支持される。後輪の前側を覆うフェンダーも目新しい装備だ。

画像2: 外装は公道走行に合わせて細部を変更。骨格はレーサーの基本を踏襲する

ツインスパーフレームは左右レールに目の字断面材を使用。スイングアームの左右アームは極太の押し出し材で、鋳造製のチェーン調整部を溶接で組み合わせる。正立式フロントフォークのインナーチューブは、当時のナナハンと同等なφ39㎜とこのクラスでは極太。リアサスは、軽量なショックユニットの下部にリンクを配するボトムリンク式。

当時のホンダが持つ最先端の技術を随所に盛り込んだ水冷90度V型2気筒

画像: 初代NSR250Rが搭載する水冷2サイクル90度V型2気筒、型式名MC16Eである。MVX250Fが積んだMC09E、NS250R/F用となるMC11Eなどはピストンリードバルブだが、MC16Eではクランクケースリードバルブに変更しており、キャブレターは前後気筒の間ではなくリアシリンダー後方に置かれる。ホンダがこのクラスのレーサーでVツインを選んだのは、横幅が狭いので前面投影面積が減って空力特性に優れるうえにバンク角を稼げる、前側気筒を前傾させることで低重心化、前輪分布荷重を増やせるなどの理由からだ。MC16Eは、同一のボア×ストロークで並列2気筒とした場合より横幅を約50㎜削減しており、前側気筒を水平から20度前傾させてエンジンを搭載、理想的な前後重量配分を得ているという。キャブが後ろ側にあるため2本のチャンバーは前側に向かって伸び、大きく湾曲してクランクケース下に潜り込む。左右のサイレンサーは総アルミ製で、チャンバーにボルト留めされるフロントプレートとそれに続く外筒を一体成型、後端に湾曲した細いパイプを与えており、外観だけでなく軽量という機能面でもレーサーのそれを踏襲している。

初代NSR250Rが搭載する水冷2サイクル90度V型2気筒、型式名MC16Eである。MVX250Fが積んだMC09E、NS250R/F用となるMC11Eなどはピストンリードバルブだが、MC16Eではクランクケースリードバルブに変更しており、キャブレターは前後気筒の間ではなくリアシリンダー後方に置かれる。ホンダがこのクラスのレーサーでVツインを選んだのは、横幅が狭いので前面投影面積が減って空力特性に優れるうえにバンク角を稼げる、前側気筒を前傾させることで低重心化、前輪分布荷重を増やせるなどの理由からだ。MC16Eは、同一のボア×ストロークで並列2気筒とした場合より横幅を約50㎜削減しており、前側気筒を水平から20度前傾させてエンジンを搭載、理想的な前後重量配分を得ているという。キャブが後ろ側にあるため2本のチャンバーは前側に向かって伸び、大きく湾曲してクランクケース下に潜り込む。左右のサイレンサーは総アルミ製で、チャンバーにボルト留めされるフロントプレートとそれに続く外筒を一体成型、後端に湾曲した細いパイプを与えており、外観だけでなく軽量という機能面でもレーサーのそれを踏襲している。

90度VツインはNS250R/F用とは異なる新設計で、基本は同時進行したRS250Rに通じるが、中回転域での優れた応答性や強大なパワー、感覚に訴える振動などの味わいを残しながら、扱いやすい出力特性に仕上げるとともに燃料やオイルの消費量を改善、整備性の向上などが留意された。

54×54.5㎜のボア×ストロークから249.6㏄を得ており、最高出力:45ps/9500rpm、最大トルク:3.6㎏-m/8500rpmを公称。スリーブレスのメッキシリンダーやコンピュータ制御のオイルポンプ、排気ポートの可変バルブなどを装備した。

外装パーツの輪郭はレーサーとほぼ同じだが、燃料タンクやアッパーカウルなどの形状を変更。ツインスパーフレームやスイングアームなどはレーサー直系。ショックやブレーキ関連のパーツには当時の最先端の技術がふんだんに投入された。

画像: エンジンの透視イラスト。クラッチの奥に置かれる6段ミッションは、250㏄クラスでは初搭載となるカセット式を採用。エンジンを降ろさずにミッション本体や変速機構を整備できるのが大きな利点である。90度V型2気筒なのでバランスシャフトは不要、クランクまわりの小ささがこの図版から見て取れる。

エンジンの透視イラスト。クラッチの奥に置かれる6段ミッションは、250㏄クラスでは初搭載となるカセット式を採用。エンジンを降ろさずにミッション本体や変速機構を整備できるのが大きな利点である。90度V型2気筒なのでバランスシャフトは不要、クランクまわりの小ささがこの図版から見て取れる。

画像: RC(レボリューショナル・コントロールド)バルブを新たに採用。排気ポートにある可変バルブをサーボモーターで上下に移動させ、エンジン回転数の上下に応じてポートタイミングを最適化しようというものだ。ヤマハのYPVSやスズキのAETCと理論は同じで、可変排気ポート式排気ディバイスとして分類される。

RC(レボリューショナル・コントロールド)バルブを新たに採用。排気ポートにある可変バルブをサーボモーターで上下に移動させ、エンジン回転数の上下に応じてポートタイミングを最適化しようというものだ。ヤマハのYPVSやスズキのAETCと理論は同じで、可変排気ポート式排気ディバイスとして分類される。

画像: クランクケースリードバルブとなったエンジンの混合気の流れを示す。左上のキャブを通過した新気は混合気となってエンジンに入るが、リードバルブの手前にあるインテークチャンバーで混合気の供給を安定化した後にケース内に流れ込む。ケース内で圧縮された混合気は吸気ポート→掃気ポート→燃焼室と進む。ピストンリードバルブでは吸気ポートはシリンダーにあるが、クランクケースリードバルブはクランク室にあるためポートの大型化が可能になり、ケース内が負圧の際はいつでも吸入行程が可能なことと合わせて吸入効率が高まる。さらに、シリンダーから吸気ポートを取り除くと掃気/排気ポートをレイアウトする際の自由度が増し、さらにシリンダーの剛性を高められるなどの利点があると、ホンダは発表時の技術資料で説明している。

クランクケースリードバルブとなったエンジンの混合気の流れを示す。左上のキャブを通過した新気は混合気となってエンジンに入るが、リードバルブの手前にあるインテークチャンバーで混合気の供給を安定化した後にケース内に流れ込む。ケース内で圧縮された混合気は吸気ポート→掃気ポート→燃焼室と進む。ピストンリードバルブでは吸気ポートはシリンダーにあるが、クランクケースリードバルブはクランク室にあるためポートの大型化が可能になり、ケース内が負圧の際はいつでも吸入行程が可能なことと合わせて吸入効率が高まる。さらに、シリンダーから吸気ポートを取り除くと掃気/排気ポートをレイアウトする際の自由度が増し、さらにシリンダーの剛性を高められるなどの利点があると、ホンダは発表時の技術資料で説明している。

画像: 吸入経路を示したイラストで、キャブレターはHRCの市販レーサーで早くから導入してきたフラットバルブを装備。NSR250Rに採用するにあたり、バルブ本体の横幅をさらに狭くするとともに、バルブ下端部の形状を滑らかなものとして、低中回転域での吸入抵抗を大幅に低減。バルブ下方で乱気流が発生するのを抑え、吸気速度アップを実現している。エアクリーナーボックスはフレームのヘッドパイプ後方からシート下に移動、5ℓの容量を確保。キャブとエンジンを連結するインシュレーター上方には、インテークチャンバーを装備。クランクケース内に安定して混合気を送り込むのを助ける装置で、チャンバーが生み出す呼吸作用を利用したものだ。

吸入経路を示したイラストで、キャブレターはHRCの市販レーサーで早くから導入してきたフラットバルブを装備。NSR250Rに採用するにあたり、バルブ本体の横幅をさらに狭くするとともに、バルブ下端部の形状を滑らかなものとして、低中回転域での吸入抵抗を大幅に低減。バルブ下方で乱気流が発生するのを抑え、吸気速度アップを実現している。エアクリーナーボックスはフレームのヘッドパイプ後方からシート下に移動、5ℓの容量を確保。キャブとエンジンを連結するインシュレーター上方には、インテークチャンバーを装備。クランクケース内に安定して混合気を送り込むのを助ける装置で、チャンバーが生み出す呼吸作用を利用したものだ。

1987 NSR250R(MC16)

画像: 1987 NSR250R(MC16) 1987年3月28日には特別仕様を追加。日本選手権を走ったワークスレーサーのスポンサーカラーに通じる配色としており、塗色名はテラブルー×ロスホワイト。一見では、既存の赤×白をベースに赤の部分を青に変えただけに思えるが、アッパーカウルとガソリンタンクは赤を白、白を青としており、ヘッドライト両脇から後方に向かう部分の塗り分けパターンも改めている。ロゴの配置は同じだが一部の色調を変更。塗色名にあるテラ=TERRAは、ワークスチームのスポンサー、味の素がかつて販売していたアミノ酸スポーツドリンクの名称で、缶の色がまさにこのブルーだった。車両価格は55万9000円から変更なし。

1987 NSR250R(MC16)
1987年3月28日には特別仕様を追加。日本選手権を走ったワークスレーサーのスポンサーカラーに通じる配色としており、塗色名はテラブルー×ロスホワイト。一見では、既存の赤×白をベースに赤の部分を青に変えただけに思えるが、アッパーカウルとガソリンタンクは赤を白、白を青としており、ヘッドライト両脇から後方に向かう部分の塗り分けパターンも改めている。ロゴの配置は同じだが一部の色調を変更。塗色名にあるテラ=TERRAは、ワークスチームのスポンサー、味の素がかつて販売していたアミノ酸スポーツドリンクの名称で、缶の色がまさにこのブルーだった。車両価格は55万9000円から変更なし。

ファイティングレッド×ロスホワイトがデビューした際に発行されたカタログ。表紙と裏表紙はサーキットで撮影したカットを掲載。この場所に置いてもまったく違和感がない。表紙をめくるとNSR250RとHRCのレーシングマシーンが向き合う場面が現れ、折り込まれた右のページを開くと2台の外装を外した状態を見ることができる。

前後ホイールやブレーキなど足まわりの装備に違いはあっても、左右レールに目の字断面材を使うアルミツインスパーフレームやその内部に押し込められた90度V型2気筒など、レーサーと非常に近い構成であるのがわかる。

NSR250Rの関連記事はこちら

連載【心に残る日本のバイク遺産】をまとめて見る

MOOKのバックナンバーはこちら「日本のバイク遺産 2サイクル250史」

Powered By Bikers Station

This article is a sponsored article by
''.