この週末はイタリア・ムジェロでMotoGP 第6戦が開催されました。
ウィークを通して好天に恵まれたイタリアGPは、前戦フランスGPで今シーズン3勝目を挙げて、「今年も」チャンピオン街道をひた走り始めたマルク・マルケス(レプソルホンダ)に、いったい誰が土をつけるのか――そんなところが焦点になっていたように思います。

なにしろ、フランスGPはもちろんですが、今シーズンのマルケスの勝ちっぷりがスゴい。開幕戦・カタールGPではアンドレア・ドビツィオーゾ(ミッションウィナウ・ドゥカティ)に勝ちを許したとはいえ、続くアルゼンチンGPで今季初優勝、第3戦・アメリカズGPでは、ここまで無敗だった地なのにトップ独走中に転倒したかと思えば、スペインGP→フランスGPと連勝。
その勝ち方も、今までとは違い、スタートからブッチギリの優勝、というスタイル。マシンも自らの調子もいいときの、ノリにノッている、手がつけられないマルケスが、シーズン序盤にして登場してしまったのです。

画像: メインストレート終盤がこれ 330km/hでスリップの使い合い……おばけだ

メインストレート終盤がこれ 330km/hでスリップの使い合い……おばけだ

このイタリアGPも絶好調で、予選でもポールポジションを獲得。メインストレートが長く、この2年ドゥカティの後塵を拝していたムジェロ(18年はロレンソ/17年はドビツィオーゾ)だっていうのに、予選のポールポジションも、強い強い、タイムの出し方でした。
予選のラストアタック、ぐんぐんペースを上げたマルケスは、ラップ終盤でドビツィオーゾに追いつき、最後にはドビのスリップストリームまで利用してアタック終了。最高のタイミングで、最高のライダーの後ろにつけるように計算までしていたのだから、これはもうお手上げ。速いライダーが最高の戦略でレースを戦っている――それが今のマルケス無双なのです。

「予選のラストアタックでは戦略を練って、最後の最後にドビのスリップにつけるように完璧に計算できていたんだ。ポールポジションは重要だけれど、もっと重要なのはフロントローにいられたこと。明日は手強い敵がたくさんいるね!」とマルケス。
マルケスと並んでのフロントロー、予選2番手には驚異のルーキー、ファビオ・クアルタラロ(ペトロナスヤマハ)、3番手にここんとこ「安定の6位」から上昇しつつあるダニーロ・ペトルッチ(ミッションウィナウ・ドゥカティ)、2列目に後輩クアルタラロに食われちゃってるフランコ・モルビデリ(ペトロナスヤマハ)、転倒とノーポイント以外は3位4位と好調のジャック・ミラー(プラマックレーシング)、開幕戦で3位になったけど、以降は相変わらず出入りの激しいカル・クラッチロウ(LCRホンダカストロール)がつけました。
日本代表、中上貴晶(LCRホンダIDEMITSU)は4列目10番手、その真後ろの13番手には、相変わらず予選順位が悪いアレックス・リンス(TeamスズキECSTAR)、まだまだ調子の上がってこないホルヘ・ロレンソ(レプソルホンダ)は17番手、ここムジェロは地元中の地元、でもホントはミザノの方が自宅に近いバレンティーノ・ロッシ(モンスターヤマハ)はなんと18番手……。ロッシ、どーした……。

画像: スタート直後はこんな状態 クラッチロウ、タカの好スタートがみえます

スタート直後はこんな状態 クラッチロウ、タカの好スタートがみえます

画像: レース中盤はこんな陣形 ここから4台がヌケて終盤のトップ争い

レース中盤はこんな陣形 ここから4台がヌケて終盤のトップ争い

そして決勝レース、スタートで飛び出したのはマルケス、後方に2列目6番手スタートのクラッチロウ、その後方にミラー、ドビツィオーゾ、ペトルッチ、そしてタカがいます! 3列目10番手から、タカ超ロケットスタート!
「いいスタートでした! おかげで1コーナーでいいポジション取りができて順位を上げられた。そのあとも落ち着いて力強い走りができました」とタカ。タカ、スタート良かった! でもちょっとずつ順位下がっちゃうんだろうなぁ…下がらない…おぉぉいいぞタカがんばれぇぇ!っていう序盤でしたね。序盤のトップグループは10台くらいのタテ長な展開で、タカはその中で、しっかりクラッチロウパイセンにくっついていきました。この序盤で、ペースをつかめたのがよかったんでしょう!

画像: ホンダ勢で唯一2018年モデルを使うタカ中上

ホンダ勢で唯一2018年モデルを使うタカ中上

レースはマルケスのリードからペトルッチ、ドビツィオーゾ、リンスが入り乱れてトップグループを形成。レースが折り返しを迎えた頃には、ペトルッチ、ドビツィオーゾ、マルケス、リンス、ミラーが1秒以内にひしめき、後方にクラッチロウ→タカ→クアルタラロ→ビニャーレスが1パック。ここで、なんと14周目にはタカがクラッチロウをパスします! レース中、タカがクラッチロウをブチ抜いたの、初めてじゃないでしょうか!

画像: レース中盤、レースをひっかきまわしたのがリンス 結局4位フィニッシュ

レース中盤、レースをひっかきまわしたのがリンス 結局4位フィニッシュ

その翌周にはミラーが転倒。このへんで前4台、少し間を開けて4台――このセカンドグループのトップに、後方のクラッチロウを少し離してタカがいたんです! のちにクラッチロウは後方からビニャーレスにかわされますが、タカはポジションをキープします。

トップグループの4台は、2台のドゥカティに、ホンダとスズキが1台ずつ、というオーダーで、順位の入れ替わりはやはりメインストレート! ほら、カワサキ時代の中野真矢がストレートを駆け上がりながらタイヤバーストで時速300kmオーバー大転倒をしたことがあったでしょ? あのコースですから、メインストレートは最終コーナーからのぼり勾配があって、時速330kmオーバーなんてコース。最終コーナー立ち上がって前のマシンのスリップについて1コーナーで順位変動、なんて周が何度か続く中、やっぱりトップスピードの高さでドゥカティ完全有利!

画像: おそらくラストラップの1コーナー 3人この間隔で↓

おそらくラストラップの1コーナー 3人この間隔で↓

画像: ペトルッチがグンとインに入って来た↓

ペトルッチがグンとインに入って来た↓

画像: ヤバ!ってドビツィオーゾがマシンを起こした瞬間 ここで失速しちゃったんです

ヤバ!ってドビツィオーゾがマシンを起こした瞬間 ここで失速しちゃったんです

マルケス、何度アタックしてもメインストレート、しかもフィニッシュライン前でかわされちゃうので、これはマルケス無双もストップか、と思ったら、ラストラップに入るメインストレートでマルケスがトップ2台のスリップを使ってトップに浮上! あぁぁぁマルケス、最終ラップまで手のうち隠してたかぁぁぁぁ、と思ったら、1コーナーでちょっとふくらんだマルケスのインにドビツィオーゾが入って、そのさらにインにペトルッチ! 3台がビタビタに接触する中、挟まれたドビがちょっと失速したすきに、ペトルッチとマルケスがトップ争いへ!

画像: 2012年にグランプリデビュー 最初からMotoGPクラスで、初勝利まで8年かかった!

2012年にグランプリデビュー 最初からMotoGPクラスで、初勝利まで8年かかった!

そのラストラップ、どこかでマルケスが抜くだろう、どこかな、まだかな、最終立ち上がってからかな、と思ったら、なんとそのままペトルッチ→マルケスの順でフィニッシュ! ペトルッチ、ついにMotoGP初優勝! ドゥカティ、ムジェロで3年連続優勝! ペトルッチはMotoGPクラスがグランプリデビューですから、これがGP初優勝ですね! 2011年にはイタリア選手権スーパーストックで、ここムジェロで優勝しているペトルッチ、昨年には、オープニングラップでマルケスに押し出されつつ7位フィニッシュしながら、このレースのファステストラップをマークしていました。

画像: はい、ダニーロこんな顔  少し話したことがあるんだけど、物静かな紳士です^^

はい、ダニーロこんな顔  少し話したことがあるんだけど、物静かな紳士です^^

「トップグループのペースがそれほど高くなかったから、うまくペースをコントロールしてトップグループにいられたんです。飛び出すタイミングを間違えるなよ、って自分に言い聞かせてね。とにかくトップグループにいて、ラストスパートを残すようにペースをコントロールしていたんだ。最後の1コーナーはスリップにつかれるのを心配はしたけれど、1コーナーでギリギリのスペースを見つけて飛び込んで、あとはチェッカーフラッグまで全力で逃げたんだよ」とペトルッチ。

画像: 敗れたとはいえ「ドビとバレより上でフィニッシュすればOK」だって!

敗れたとはいえ「ドビとバレより上でフィニッシュすればOK」だって!

これまで、何度か勝てる寸前まで行っていたペトルッチ、路面がチョイ濡れになるととたんに前を走るペトルッチ、今シーズンからワークスチーム入りして、シーズン中盤に差し掛かり始めると、ファンに「ペトルッチでよかったの?ドゥカティ」と言われ始めていたペトルッチ。
ゴリラみたいでヒゲづらで、ちょっと美男子系とは違うんだけれど、ペトルッチ28歳、イタリアン。ついにGPウィナーズクラブ入りを果たしました。

画像: ここまで取りこぼしなく走って来たドビ。これはじゅうぶんマルケスと戦ってる!

ここまで取りこぼしなく走って来たドビ。これはじゅうぶんマルケスと戦ってる!

2位にマルケス、3位にドビツィオーゾ、4位には5列目からロケットスタートを見せて、ずっとトップ争いに加わったリンス、そしてタカがインディペンデントチームトップの5位でフィニッシュしました。タカ、トップグループではひとりだけ型遅れのマシンで、昨年の最終戦・バレンシアGPの6位(それも雨のサバイバルを生き残っての順位)を越える自己ベストを更新しました!

「レースペースはそれほど速くなかったんですが、それでもトップグループについて行くのは簡単じゃなくて、それでも今日はカル先輩について行ったことでいいリズムをつかんで走ることができました。ストレートでは厳しかったんですが、セクター2&3を上手く走れていたから、その区間でトップグループとの差も縮めることができました。初めてトップグループを走ったことで、自分の速いところ、遅いところをしっかり見られました。この経験を、この先でしっかり生かしたいです。今大会はチームのホームGPだったので、自己ベストはもちろん、インディペンデントチームのトップで終われて、少し期待に応えられたかな。グランプリに来て一番いいレースになりました」とタカ。
タカはムジェロでのMotoGPのレースは昨年のMotoGPデビューイヤーに続いて2回目。昨年のここでのレースは、ダニ・ペドロサに接触されて再スタート、最下位で完走していましたが、Moto2時代も成績が悪いときにもばんばんパッシングしていて、コースを熟知しているような印象でしたよね。タカ、よかった! おつかれさんん!

画像: インディペンデントチームで1位 もちろん自己最高リザルト

インディペンデントチームで1位 もちろん自己最高リザルト

これでMotoGPは中2週間を空けてカタルニアGPへ。いよいよシーズン中盤戦に突入です!

MotoGP第6戦 イタリアGP 
MotoGPクラス 正式レース結果 ()内は予選順位
1 (3) ダニロ・ペトルッチ     ドゥカティ 41m33.794s
2 (1) マルク・マルケス      ホンダ   +0.043s
3 (9) アンドレア・ドビツィオーゾ ドゥカティ +0.338s
4 (13) アレックス・リンス     スズキ   +0.535S
5 (10) 中上貴晶          ホンダ   +6.535s
6 (7) マーベリック・ビニャーレス ヤマハ   +7.481s
7 (12) ミケーレ・ピッロ      ドゥカティ +13.288s
8 (6) カル・クラッチロウ     ホンダ   +13.937s
9 (11) ポル・エスパルガロ    KTM       +16.533s
10 (2) ファビオ・クアルタラロ   ヤマハ   +17.994s

ポイントランキング(6戦終了時)
1:マルク・マルケス(ホンダ)        115P
2:アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ) 103P
3:アレックス・リンス(スズキ)       88P
4:ダニーロ・ペトルッチ(ドゥカティ)    82P
5:バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)     72P
6:ジャック・ミラー(ドゥカティ)      42P
7:カル・クラッチロウ(ホンダ)       42P
8:マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)   40P
9:中上貴晶(ホンダ)            40P
10:ポル・エスパルガロ(KTM)        38P

写真/motogp.com LCRホンダIDEMITSU 文責/中村浩史

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