1978年から40年の長きにわたって愛され続けてきたロングセラー、YAMAHA SR400。排ガス規制に対応したアップデートが図られた最新型も、SR本来の魅力は色褪せることなく受け継がれている。走行インプレとともに、その魅力を再検証する。

バイクの楽しさの原点を教えてくれるロードスター

初代SRが登場した時、業界の反応は冷ややかだった。70年代終盤はロードスポーツの高性能化が加速し始めた時代。

そこに空冷OHC2バルブ単気筒エンジンにか細いフレーム、スポークホイールで登場したSRは時代に逆行する変わり種で、当時二十歳だった僕は非力なエンジンとブカブカ動くサスペンションになじめず、あまり魅力を感じなかった。

だが、それは当時の僕の評価軸が偏っていたからに他ならない。ライダーがオートバイに求めるものは多様で、雑誌が最新だ流行だと騒いでも我関せずというライダーが一定数存在することを分かっていなかったのだ。

改めてSR400を眺めると、理屈抜きで美しいと感じる。

画像1: バイクの楽しさの原点を教えてくれるロードスター

空冷エンジンの造形美、スラリと伸びたマフラー、クロームメッキやバフ掛けされたアルミパーツの輝きといった、オートバイが進化の途中で捨て去ったものを守り通しているSRは、オーナーにとって単なる乗り物ではなく、「愛でる」対象なのだ。

面倒で難しいと思われるキック始動もファンにとっては重要な儀式。とはいえFI化以降は始動性が向上し、慣れれば苦にならないレベルになっている。

画像2: バイクの楽しさの原点を教えてくれるロードスター

いったん始動してしまえば、フロントまわりをブルブルと震わせながら安定してアイドリングするし、新型はFI制御の緻密化が効いているのか、発進時にスロットルのラフな操作でエンストするようなこともなく、低回転トルクの太さと重めのクランクマスによって力強い加速を見せる。

ショートストローク設定なので、7000回転以上まで軽々と回るが、鼓動感が楽しめるのは3000回転程度まで。2000回転台でタタタッ! という歯切れのいい排気音を聞きながらゆったり流せば単気筒の味を堪能できる。

画像3: バイクの楽しさの原点を教えてくれるロードスター

5速・100㎞/h時は約4500回転で、このあたりまでが振動の許容範囲。引っ張ればもっと出せるが、そこにSRの世界はなく、手足がしびれるだけだ。

操縦性も独特で、オートバイなりに寝かせると意図したタイミングから1テンポ遅れてゆったり曲がる。ハンドリング、ブレーキの効き、スロットルレスポンスの全てが穏やかで、加減速で車体姿勢を変えてとか、タイヤを潰して、といった積極的な操作は一切不要。

画像4: バイクの楽しさの原点を教えてくれるロードスター

気づけばいつもの試乗ルートを普段より2割ほど遅いペースで走っていた。

ただ、それが不満ではなく快適に感じたら、SRワールドにようこそ! となるのだと思う。

文:太田安治・編集部/写真:森 浩輔、赤松 孝/モデル:木川田ステラ

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