MotoGP第3戦・アメリカズGPは、COTA(=サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)での開催。初開催が2013年と、現在のGP開催サーキットの中では新しい部類のコースに入ります。
この’13年というのは、V5チャンピオン、マルク・マルケス(ホンダ)のMotoGPデビューイヤーで、マルケスはここCOTAでMotoGPクラス初ポールポジション&初優勝を決めたんでした。ここからマルケスは、「最高峰クラス最年少ポールポジション」とか「最年少優勝」なんかの記録を次々と打ち建て始めることになります。
そしてマルケス、ここCOTAでのGPは、この’13年以来負けなしの6連勝中! しかも全戦ポールtoウィンのオマケ付きで、王者が、ここCOTAでは「絶対王者」にランクアップするんです。今年の大会でも、マルケスは金曜のフリープラクティス(=FP)1から絶対王者の風格を漂わせ始めます。

画像: 指で表わす「7」は7回目のポールポジション、の意味 ここまでは順調だったけど……

指で表わす「7」は7回目のポールポジション、の意味 ここまでは順調だったけど……

FP1からトップタイムをマークし、FP2では“予選までは速い”マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)にトップを譲ったものの、中止となったFP3を経て、FP4と公式予選、そして決勝日朝のウォームアップランでもトップタイムをマーク。どうしたって、マルケス大本命、というアメリカズGPになりつつあるのでした。

予選は、その絶対王者に続いてバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、カル・クラッチロウ(ホンダ)がフロントロー。2列目にジャック・ミラー(プラマック・ドゥカティ)、そしてサプライズのポル・エスパルガロ(KTM)、ビニャーレス、3列目にアレックス・リンス(スズキ)、ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)、ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハ)が続き、我らが中上貴晶(ホンダ)は今回、2次予選に進めずに5列目15番手スタート。

画像: 序盤のトップ5のメンバー ここからマルケスもクラッチロウも消えてしまいます

序盤のトップ5のメンバー ここからマルケスもクラッチロウも消えてしまいます

決勝レースは、ポールシッター、マルケスがホールショットを奪い、ロッシ、クラッチロウが続く展開。けれど、トップ2人が少しずつ3番手以降を引き離しつつ、あぁマルケスが逃げてる、ロッシが追ってるけどシンドそう――そんなオープニングに見えました。周回が進むとマルケスが抜け出し始め、2番手ロッシとの差を引き離し始めます。3周目あたりにはマルケス独走の気配、2番手以降が集団になり始めてバトルを始めている風にも見えました。

画像: アメリカ仕様のヘルメット かっちょいい^^

アメリカ仕様のヘルメット かっちょいい^^

2番手集団は、ロッシ、クラッチロウに加え、ミラー、リンス。この集団にいなきゃいけないはずのビニャーレスは、ジャンプスタートを取られてペナルティ。しかも、ペナルティ種類を間違えてロッグラップ(=コースを外れて大回りさせるように設定された区間)走行をしてしまい、え?ジャンプスタートってそれでいいんだっけ?と思っていたら、あらためてピットロードをライドスルー。ゲストとしてヤマハを訪れていたヤマハのピットで、ケニー・ロバーツもウェイン・レイニーも笑っちゃってたなぁ。「なにやってんだマーベリック」って感じだったのかも。
しかし、あとでリプレイが流れたときに、ジャンプスタートの裁定が下って、ピットからまずサインボードで「ペナルティ」ってだけ指示が出されたみたいでしたね。その次のサインボードでは「ライドスルー」ってサインが出て、ってことはペナルティってボード出したらロングラップだぞ、って共通認識があったのかもしれません。ピットロードに入って来たビニャーレスも、珍しく怒りをポーズで表していましたね。これはピットの凡ミスでしょう。

画像: トップ走行中にマルケス転倒! 起こそうとしてパタン、再スタートしてゴロンと、計3回転びました

トップ走行中にマルケス転倒! 起こそうとしてパタン、再スタートしてゴロンと、計3回転びました

6周目にはクラッチロウが転倒。これでトップ集団はマルケス→少し距離を置いてロッシ×ミラー×リンス、その後も少し距離があってフランコ・モルビデリ(ヤマハ)、アンドレア・ドビツィオーゾ&ペトルッチのドゥカティ勢。ドビツィオーゾは2次予選にも進めずに13番手スタートでしたから、アッという間にここまで追い上げていました。

レースは中盤に差し掛かり、あぁこのままマルケスが逃げるとCOTA7連勝、しかも7年連続ポールtoウィンかぁ……と思っていたら! ロッシに3秒6の差をつけていた9周目、なんとマルケスが転倒してしまいます!

ブレーキングでフロントをロストしての転倒で、マルケス、よくこの状況から立て直すよね、ってシーンで、そのままクラッシュアウト! 倒れたマシンを起こしたら、その勢いで反対側に倒しちゃって、そこからマーシャルに押してもらって押しがけしてもエンジンはかからず、今度はマシンに片側腰掛けしてるままパタリ。その瞬間、マルケスにしては珍しく天を仰いで、再スタートを諦めたようでした。
「ここまで6年(ずっとここCOTAで勝ち続けて)いいレースをしてきたけど、今回は僕が思い切りミスしてしまった。チームにも謝ったし、ファンのみんなにも謝りたいくらいのミスだった。人間だもの、こんなことは起こりうることさ。いい勉強をしたと思って次のヘレスではもっと頑張るよ」(マルケス)

ガックリと肩を落としてピットに引き上げるマルケス。ピットの中にとぼとぼと入っていくシーンが映し出されると、もう1シーン、レプソルのツナギを着たライダーが歩き出す姿が。ん? マルケスはピットに入ったのに……と思ったら、今度はなんとホルヘ・ロレンソ! なんとロレンソは、マルケスが転倒した同じバックストレートエンドで、ブレーキングの態勢に入ったあたりでエンジンストップ! ロレンソは土曜に、予選セッション中にチェーンが外れちゃうトラブルに見舞われていて、実は前戦アルゼンチンでもマルケスが同じトラブルに見舞われたことで、「わ!またチェーンか!」と思ったら、今回は「土曜のトラブルとは別の技術的トラブル」(レプソルホンダ)とのことで、これでクラッチロウ、マルケス、ロレンソの順でホンダの2019年型RC213Vは全滅! ホンダライダーでレースを続けているのは、2018年モデルを与えられているタカ中上だけでした。

画像: ホンダ勢唯一、きちんとフィニッシュしたタカ。3戦連続トップ10フィニッシュで、ランキング7位に浮上!

ホンダ勢唯一、きちんとフィニッシュしたタカ。3戦連続トップ10フィニッシュで、ランキング7位に浮上!

これでトップはロッシ。さっきのヤマハピットでは、レイニーもケニーもニヤリ。ふふふ、久しぶりにバレンティーノが勝ったか、ってムードが漂い始めましたが、そうはいかなかったのが今年のアメリカズGPのスゴいところ。

マルケス転倒時にはロッシの1秒後方を走っていた2番手リンスが、その差を0秒5、0秒4、0秒3と詰め始め、ラスト5周ほどにはロッシの背後にピタリ! 初めて見るロッシvsリンスのトップ争いは、ヤマハとスズキのマシンの速いところ、遅いところがよく似ていて、しかも百戦錬磨のロッシと、MotoGP優勝経験のないリンスの戦いってことで、あぁリンスがんばったけど、ロッシ相手じゃ勝ち目は薄いかなぁ、って思い始めていた人も多かったんじゃないでしょうか。

画像: ラスト4周、ロッシを完封したリンス お互いギリギリ、ミスなく走ったリンス、おめでとー!

ラスト4周、ロッシを完封したリンス お互いギリギリ、ミスなく走ったリンス、おめでとー!

年齢のこと言ってもしょうがないけど、リンスは’95年12月生まれの23歳。対するロッシは’79年生まれで、リンスが生まれた約3か月後の’96年3月にWGP125ccクラスにデビューしてますからね! つまりリンスの年齢よりも、アマチュアを含めたロッシのレース歴が長いという! 事実、リンス憧れのライダーはロッシです。

しかし! そのリンスが残り4周でロッシをパス! うわぁぁ抜いた!と思っても、ぴたりと追走するロッシも抜き返す。けれど、リンスのインをついたロッシが立ち上がりで膨らんだところを、狙いすましてリンスが再びパス! この一連のシーン、マルケスvsドビツィオーゾがよくやるやつです!

画像: 憧れの人に祝福を受けるリンス 最高の瞬間でしょう

憧れの人に祝福を受けるリンス 最高の瞬間でしょう

画像: ミラー24歳、リンス23歳、そしてロッシは40歳 やっぱロッシすげぇ

ミラー24歳、リンス23歳、そしてロッシは40歳 やっぱロッシすげぇ

ついにロッシをかわしてトップに立ったリンス。ロッシも決してリンスを逃がさないんだけれど、リンスがロッシを追っていた時と同じように、ヤマハとスズキのマシンスピードは似通っていて、ロッシもリンスに近づけない! 最終ラップにはギリギリまで迫ったんですが、届かずにフィニッシュ。この時点では、もうロッシも何度もインにつけない、タイヤが終わっちゃってた感じでした。もちろん、リンスも同じようなものですが、今回はそこでリンスが上回ったかんじでしたね。

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