この週末は全日本ロードレース選手権が開幕。天候に恵まれたツインリンクもてぎでJSB100クラスが2レース、それにST600クラス、J-GP2クラス、J-GP3クラス、それにMFJカップのJP250(=ジャパン・プロダクション250)が行なわれます。4月6日土曜には、2レース制で行なわれるJSBクラスのレース1が行なわれました。
2019年シーズンのJSBは、絶対王者の中須賀克行(ヤマハファクトリー)を軸に、昨年、中須賀にいいようにやれられた高橋巧(HRC)、カワサキのエース、渡辺一馬(チームグリーン)が対抗、そこに中須賀のチームメイトである野佐根航汰(ヤマハファクトリー)、ヨシムラ在籍2年目の渡辺一樹(ヨシムラスズキ)がどうやって迫るか、というところが焦点になりそうです。
さらにはそこに、オーナーを務めるチームカガヤマからヨシムラにスイッチした加賀山就臣(ヨシムラスズキ)、ホンダ系のチーム高武からチームグリーンに移籍した、昨年のJ-GP2チャンピオン岩戸亮介(チームグリーン)、そして監督兼ライダーとして2年目を迎える秋吉耕佑(MotoUPレーシング)が主役になりそうです。

土曜午前に行われた公式予選では、上記8人が上位を占め、中須賀がポールポジションを獲得。コースレコードをブレイクして1分46秒878のタイムは、もうMotoGPのタイムですね……。ちなみに2018年のMotoGP日本グランプリに当てはめても、26番手! 中須賀本人がGPマシンYZR-M1でマークした予選タイムより、わずか0秒4しか遅れてません……。すごいなこのタイム! 
予選2番手以降は、②高橋巧 ③野佐根 ④渡辺一樹 ⑤渡辺一馬 ⑥加賀山までが2列目。3列目に⑦秋吉 ⑧水野涼(ハルクプロ)⑨岩戸が入りました。番狂わせなし、今の日本ロードレースのトップが、ほぼこの順列だと考えてOKです。そうそう、渡辺がふたりいて、渡辺一まで同じなので、ここでは「一樹」「一馬」と呼ばせてもらいますね。呼び捨てじゃない、親愛の情ですw

画像: スタート直後! この状態から中須賀がホールショット 加賀山ロケットはインに詰まっちゃいました

スタート直後! この状態から中須賀がホールショット 加賀山ロケットはインに詰まっちゃいました

土曜に行なわれたレース1。ホールショットを奪ったのはポールシッター中須賀で、一樹をはさんで高橋。予選3番手の野佐根はスタートに失敗、5~6番手あたりまで順位を下げてしまいます。
珍しくスタートから逃げる中須賀。昨シーズンは、高橋が好スタートから序盤に逃げて、徐々に中須賀が追いついて、ってレースが多かったんですが、今回は中須賀が逃げます。もちろんトップライダーともなると、展開によって戦略を何パターンか持っているもので、中須賀はスタートでうまく前に出られたから逃げよう、スタートでひとつ順位を落とした高橋は、早めに追いついて、中須賀にプレッシャーをかけよう、という戦略を取ったようです。

画像: 昨年も何度も見たシーン ただし、今年は、ここから巧が差を詰めるんです

昨年も何度も見たシーン ただし、今年は、ここから巧が差を詰めるんです

逃げる中須賀と、早めに一樹をかわして背後に迫る高橋。このふたりの差は徐々に縮まって、レース中盤に高橋が一度トップに浮上。ここでは、抜かれた中須賀は、背後について様子を見てやろうと思うもので、序盤に自分が前を走った分、タイヤ使いすぎちゃったかな、タクミはタイヤ残してるかな、ってところが気になるもんです。事実、様子を見ていたら高橋のペースもそんなに上がらないから、ここはもう一回前に出てやろう、とすぐに中須賀がトップを奪い返すのです。

画像: レース中盤、ついに巧が中須賀をパス! しかし中須賀も譲らず、すぐにトップ奪回

レース中盤、ついに巧が中須賀をパス! しかし中須賀も譲らず、すぐにトップ奪回

中須賀と高橋の差は1秒以内ってトップ争いが続いて、いよいよ終盤へ。ここでも高橋がやや中須賀との差を詰めるんですが、中須賀もきちんと最後のスパート分を残していて、中須賀が逃げ切って優勝! 2位に0秒829差で高橋、そこから15秒以上後方で野佐根が3位フィニッシュ。この3人が表彰台にいるのは、昨年の11レースのうち5度、中でも中須賀→高橋→野佐根の順は3度ありましたから、見慣れた光景ではありますね。

画像: 中須賀は前に出た巧のタイヤ消耗状態を冷静に見ていたんだそうです

中須賀は前に出た巧のタイヤ消耗状態を冷静に見ていたんだそうです

ただし! 昨年と大きく違うのは、まず高橋がいちど中須賀をパッシングしてみせたことがありますね。去年の風景だったら、序盤に高橋が逃げ、中盤には中須賀が捕まえて逃げ切り――ってシーンが多かったんですが、このレース1は高橋が中須賀との差を詰め、いちどパッシングしてみせた、ってところに今シーズンへの上積みがあるように見えました。

画像: 盤石の横綱相撲 勝ちパターンをいくつも持っているのが中須賀の強みですね

盤石の横綱相撲 勝ちパターンをいくつも持っているのが中須賀の強みですね

画像: 「スタートで前に出られたから1回逃げてみようと」と中須賀 一度かわされてもあわてず騒がず、でした

「スタートで前に出られたから1回逃げてみようと」と中須賀 一度かわされてもあわてず騒がず、でした

「事前テストで巧君がすごいペースでロングランをしていたんで、このペースで逃げられたら負ける、って思ってペースを上げていきました。決勝は気温も路面温度も上がって、風も強くなって、みんな思うように走れなかったと思うんですが、僕はそこにいち早く対応できたかな、それで勝てたな、って感じです」と中須賀。

画像: 昨年は最終戦で初優勝 今年のシーズンインも、その調子のよさを持続している高橋巧

昨年は最終戦で初優勝 今年のシーズンインも、その調子のよさを持続している高橋巧

敗れた高橋は、悔しさ半分、手応え半分、な表情。
「スタートで中須賀さんとの間に一樹選手を入れてしまって、しまった!と思ったんですが、びっくりするほどは逃げられなかったんで、落ち着いて差を詰められました。いちど前に出られたのは、中須賀さんもタイヤをセーブしてたからのはず。やっぱり逃げられなかったし、少ししか前を走れなかった。とにかく中須賀さんのブレーキングがすごくて、ブレーキングで詰められないんです。あしたのレース2は、そこを少し見直してマシンを修正して、もう一回勝負を挑みたいです」
僅差で敗れたとはいえ、中須賀はもう一枚余裕を隠し持っていたように見えたし、高橋も負けたとはいえ、ココを直せば勝負できる、って手ごたえをつかんでの2位に見えました。

画像: 野佐根は一樹をかわすと、引き離して3位フィニッシュ! 序盤5周の速いペースが優勝争いに必要です

野佐根は一樹をかわすと、引き離して3位フィニッシュ! 序盤5周の速いペースが優勝争いに必要です

1戦2レースっていうのは、こういうところがいいですね。リベンジか、返り討ちか、それとも野佐根が差を詰めてくるのか――。レース2はあす日曜の14時半です!

画像: <全日本ロードレース> 開幕戦レース1から横綱相撲!
~絶対王者完勝! 高橋及ばず~

■全日本ロードレース 開幕戦レース1結果■
1 中須賀克行 ヤマハファクトリー      41分37秒972
2 高橋 巧  Team HRC          +0.829s
3 野佐根航汰 ヤマハファクトリー      +16.212s
4 渡辺一樹  ヨシムラスズキMOTUL      +25.868s
5 渡辺一馬  カワサキTeamグリーン      +31.553s
6 水野 涼  MuSASHi RT ハルクプロホンダ +44.405s
7 秋吉耕佑  au・テルルMotoUPレーシング +49.557s
8 加賀山就臣 ヨシムラスズキMOTUL     +54.017s
9 ザクワン・ザイディ ホンダアジアドリーム +1’03.072s
10 岩戸亮介  カワサキTeamグリーン     +1’10.596s

写真・文責/中村浩史

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