高性能であってもスパルタン過ぎない絶妙さ

新しいモンスター1200Rは、昨年登場した新世代モンスター、1200Sの高性能バージョンで、ドゥカティらしいパッションが強調されたモデルだ。

かつてのモンスターS4RSや、ネイキッド版スーパーバイクとも言えるストリートファイターに代わる高性能ネイキッドだと考えていいだろう。

ところが、この1200Rには、これまでの高性能ネイキッドのような、悪い意味でのスパルタンさがない。

画像1: 高性能であってもスパルタン過ぎない絶妙さ

強いて言えば、バンク角を高めるために車高が15㎜高くなり、加えて試乗の舞台であるアスカリサーキットに合わせて、プリロードが締め上げられていたため、足着き性は良くはなく、小柄な人には取っ付きにくいというくらいだろう。

軽いクラッチをミートさせ発進していくと、1200Sのように、粘りがあるスムーズさにホッとさせられる。エンジンの強烈なゴツゴツ感に緊張させられることがないのだ。

画像2: 高性能であってもスパルタン過ぎない絶妙さ

160PSと高性能化されても、テスタストレッタ11°を積む新世代モンスターの良さはしっかり引き継がれている。

サスペンションは、体重100㎏級のライダーが多いヨーロッパ人の荷重を余裕で受け止めながらも、55㎏の僕がゆっくり走っている状況でも固さを感じさせない。

R専用となるステアリングダンパーも、低速走行でステアリングの動きを妨げることがなく、ハンドリングの素直さは損なわれていない。

SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2121×845×1150㎜
ホイールベース 1509㎜
シート高 830㎜
車両重量 207㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブL型2気筒
総排気量 1198.4㏄
ボア×ストローク 106×67.9㎜
圧縮比 13.0:1
最高出力 160HP/9250rpm
最大トルク 13.4㎏-m/7750rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 17.5ℓ
キャスター角/トレール 24.3度/89㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ330㎜ダブルディスク・φ245㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・200/55ZR17

高回転域で絞り出すのとは違う図太いパワーフィール

ただ、S同様に、エンジンは扱いやすく、6速、60㎞/hでスムーズに走れる柔軟性があっても、Sほど低中回転域トルクは太くない。

Sでは4000rpmでスロットルを開けるだけで、1速なら軽くフロントが持ち上がるほどだったのに、このRにはストリートファイターとでも言うべき獰猛さはない。

その代わり、7500rpmが近付くと、いかにも燃焼室が新気で一杯にされるといった風に太いトルクが湧き出てくる。

いわゆるパワーバンドは1万rpmを超えるまで続くが、160PSの最高出力も、高回転まで吹き上がることで搾り出されるものではなく、太いトルクによる図太さを感じさせる。

画像1: 高回転域で絞り出すのとは違う図太いパワーフィール

とは言っても、Rの高回転域はSにないエキサイティングさだ。日本仕様の最高出力も本国仕様と同じ160PSになるとのことで、Sの日本仕様が126PS(本国仕様は145PS)であることを考えると、その差はことさら大きいと言える。

さらに車体が、この大パワーをしっかり受け止めてくれる。新世代のモンスター1200Sは先代よりも車体が大柄になり、ツアラーっぽい落ち着きを感じさせる味付けで、正直、サーキット走行に適した素性があるのか疑問に思っていたものだが、実際に試乗してみると、そのままスーパーバイクにしても悪くないぐらいである。

パニガーレと同じ仕様のブレーキを生かして減速、ディアブロ・スーパーコルサSPの強力なグリップで曲げ、そして160PSのパワーにモノを言わせてコーナーを脱出できる。

それも、スパルタンにではなく、優雅にである。

高性能なモンスターも、今日では優しく進化しているということだ。

画像2: 高回転域で絞り出すのとは違う図太いパワーフィール

Rに装着されたレーシングタイプのステップはホールド感が良いし、Sでは大柄に感じた燃料タンクも、相対的にシート高が高いためか、上体との間に余裕があって、体重移動の自由度も高い。無心に攻めることができるのだ。

ハンドル幅は、Sよりもわずかに幅広なようで、先代よりライポジはナチュラルだとは言え、コーナーではS同様、ダイナミックに上体を動かし、駆っていくことになる。

そうした点も、モンスターらしいワイルドさを強調してくれている。

PHOTO:DUCATI JAPAN/和歌山利宏/REPORT:和歌山利宏

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