旧きよき時代のテイストを受け継ぎながらも高性能

1990年代前半まで、速さを売りにする250㏄以下のロードスポーツモデルは2ストローク車が主流だった。2ストエンジンは部品点数が少ないので軽量・コンパクトに作れるうえ、4ストエンジンよりも出力を稼ぎやすく、軽さとパワーが求められるスポーツモデルには最適だったのだ。特に80年代はロードレースブームもあって、RZやTZR、NSR、Γ(ガンマ)、カワサキではKRやARといった2ストスポーツ車の全盛期だった。しかし90年代に入ってレーサーレプリカブームが終焉を迎え、98年には排出ガス・騒音規制の強化という逆風を受けた国産2スト車は続々と日本国内での販売を終了。だが、各種規制が緩かった東南アジア諸国ではその後も2スト車の生産が続いていた。

このニンジャ150SSのベースになっているのはタイで生産されていたVICTOR(ヴィクター)。ニンジャ150RRと同じく生産がインドネシア工場に移管され、モデルチェンジの際に車名も変更された。

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かつてのレーサーレプリカを彷彿とさせるRRに対し、SSは80年代のネイキッドスポーツ然としたまとまりを特徴とするが、このモデルもRRと同じく、15年式が最後と言われている。

クランクケースリードバルブ吸気の水冷単気筒エンジンは基本的にRRと同じだが、キャブレターはRRのミクニVM28に対してSSはケイヒンPWL26を採用。この1サイズダウンはストリートでの乗りやすさと燃費を優先したため。実際にRRとSSの2台を乗り比べてみても、7000回転以下ではSSのほうが力強い。12㎏の車重差もあるだろうが、動き出しも追い越し加速も軽やかだ。

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パワーバンドはRRと同様に7500回転からで、高周波の排気音を響かせながら元気いっぱいに加速する。キャブレターの差で1万1000回転で頭打ちになるが、「この回転域を使ってくれ!」と叫ぶかのようにパワーを絞り出すフィーリングは同じ。2ストエンジンの醍醐味を存分に味わえる。

意外だったのはハンドリングで、細めの前後タイヤを履いている割には落ち着きがあって、車重から想像するヒラヒラ感は希薄。路面状態の良くない国では、こうした安定指向の味付けも重要なのだろう。しかもタイヤが細いだけに、さほどバンクさせなくてもスッと向きが変わる。街乗りでの快適性、扱いやすさといった実用面を追求した車体パッケージだ。標準装着タイヤは耐摩耗性重視のためかグリップ不足で、車体剛性もRRほど高くないから、本格的なスポーツ走行には向かないが、グレードの高いタイヤに交換すれば峠道を駆け回る楽しさも堪能できるはずだ。

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タイの友人の話では、インドネシアやタイではチャンバーやビッグキャブといった多くのパーツが売られていて、これらを組めば優に40馬力をオーバーするという。最近のオートバイでは味わいにくい「チューニングの楽しさ」も備えているのだ。

SPECIFICATION
全長×全幅×全高 1955×710×1035㎜
ホイールベース 1335㎜
シート高 NA
車両重量/総排気量 122㎏/149㏄
エンジン形式 水冷2ストクランクケースリードバルブ単気筒
ボア×ストローク/圧縮比 59×54.4㎜/6.9
最高出力 27.9PS/10500rpm
最大トルク 2.04㎏-m/9500rpm
燃料供給方式 ケイヒンPWL26キャブレター
燃料タンク容量 8.2ℓ
キャスター角/トレール NA
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 2.75-17・3.0-18

PHOTO:南 孝幸、森 浩輔

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