「CB」「Z」「ニンジャ」が目指した魔法のようなバイクにズドン!

仕事柄、色んなバイクに乗る。魅力的だと言われるバイクでも、その「光るもの」が心にストライクするのはそうそうあるもんじゃない。しかも、じっくりと乗り込んでからじわじわとアピールしてくるものもあれば、走り出した瞬間にズドンっとくることもある。

記憶に残る絶版車と言われて、CB750FourやZ1、ニンジャ900と言いたいところだが、選んだのはかつてとんでもないズドンっを喰らったZZR1100だ。初期型のC型など、今見るとさすがにカクカクしてて古めかしく見える。でも、当時だって地味なルックスで、ちょっと野暮ったくさえ見えた。

何と言っても、当時はレブリカブームが衰退し、次に目を向けるべき魅力的なバイクは何か? と誰もが模索していた時代だ。NKモデルたちは趣のあるルックスを手に入れていたがエンジンは古いレブリカのデチューンものだったり、足回りはコストダウン重視の見苦しいオートバイが多かった。リッタークラスのビッグバイクは如何にスポーティなルックスでも高速道路を攻め込むような速度レンジや高速道路をハイスピードで長距離移動する事に特化したような性格のモノがほとんど。今では信じられないが、鋪装林道のようなクイックな峠道はもちろん、一般的な日本の峠道を素直なハンドリングで流せるようなバイクも少なかった。いや、あの時はまだ無かったと言っていい。

でもZZRは違った。まず、跨がった瞬間、重さや手応えはあの当時としては平均的か、少し軽い程度。エンジンを掛けるとそれまでZXやGPZシリーズと違って、まるでホンダのエンジンみたいに滑らかで、振動も無い。だが吹けが軽い。まずここで「えっ、何か違うぞ」と思った。で、走り出すとハンドリングが軽い。車体も軽い。しかも移動中にスロットルをガバッと開けた時の加速、速度の乗り方がそれまで経験した事の無い速さなのだ。加えて乗り心地もいい。見た目のイメージからかけ離れた性能に、またしても「えっ、何か違うぞ」と感じた。その「何か」は、そのままコースを走ったときにわかった。

タイトコーナーからアップダウンのあるコーナーなど、べらぼうに速いだけでなくて扱いやすいのだ。その時はイカツいスーパースポーツルックのビッグバイクたちも持っていったのだが、そのどれよりも元気が良くて、乗りやすくて、とにかく圧倒的に速かった。「こいつ、何をやっても最強で最速だ」……確信した。

その実力はとにかく飛び抜けていた。当時世の中でもっとも速いと言われていたバイクはGSX-R1100でカタログスペックも10馬力くらい強力で10㎏ほど軽かったが、それと高速周回路の最上段バンクで並走写真を撮ろうとしたら、どうやってもGSX-Rが追いつけない。メーター読みで250㎞/h以上での力のゆとりがまるで違うのだ。実計測での最高速も20㎞/hほど差をつけた290㎞/hオーバーをマークしてしまった。

これがズドンっだ。

速さもスゴかったが、そんな高速域を自在に走り、ビッグバイク初と言ってもいい、街中から簡単に駆け回れるハンドリング、扱いやすさ、懐の深さまであった。ハンドリングや安定性は車体を一新するラムエアダクトがふたつになったタイプのD型になって格段に良くなり、ルックスも垢抜けた。

このD型でも最強最速のバイクの称号を世界中がこのバイクに与えたんだが、その期間はC、D型合わせて6年間。実に長い。しかもこのバイクは多くの熱心なファンを生み出し、僅差で最速の座を奪ったCBR1100XXを越えるチューンなども登場し、大流行りした。ZZRは多くのライダーから愛されていたのだろう。

何をやっても最強で高性能。しかもスロットルひとつで誰にも負けない速さ付き……かつてCB750FourやZ1、ニンジャ900が目指した魔法のようなバイクの登場。それを26年ほど前に、実感して「ズドンっ」を喰らった。

画像: 宮崎敬一郎 あらゆるモデルの限界バンク角を探る、本誌メインテスター。愛車はMT-01、WR250R、BMW S1000RR。

宮崎敬一郎
あらゆるモデルの限界バンク角を探る、本誌メインテスター。愛車はMT-01、WR250R、BMW S1000RR。

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