GSのDNAを感じさせるスタイルと万能な走りっぷり

バルセロナの試乗会場に置かれたG310GSを見て、驚いた。基本はG310Rと同じはずなのに、別物のような存在感があって、スタイリングはまさにGSそのものであったからだ。前輪が17インチでなく19インチで、サスストロークが伸びて車高が高くなっているとは言え、フレームもスイングアームも共通と聞いて、ますます驚きである。

それだけに、34PSの最高出力に不安も覚える。考えてみたら、交通の流れが速いヨーロッパで、これまで僕は600㏄以下のバイクには乗ったことがない。これで普通に楽しめるのだろうか。

画像: スタイリングはBMWのGSシリーズそのもの。G310RがS1000Rを髣髴とさせるのとは対照的に、車体の基本を同じまま、見事に特徴が表現されている。見た目にもRよりも一回り大きい車格を感じさせる。

スタイリングはBMWのGSシリーズそのもの。G310RがS1000Rを髣髴とさせるのとは対照的に、車体の基本を同じまま、見事に特徴が表現されている。見た目にもRよりも一回り大きい車格を感じさせる。

でも、走ってみれば、何のことはなかった。このG310GSの動力性能が、ヨーロッパでの使用をも前提にされていると納得させられる。街中なら普通に交通の流れに乗れて、高速道路だって、120㎞/hでの流れから140㎞/hぐらいに加速していくことができる。そんな状況でのハンドルには少し振動を感じ、長距離巡航は辛そうだが、100㎞/h以下ならまったく平穏だ。

ただ、やはり極低回転ではさほどの粘りはなく、大型車のつもりでいたせいか、街中で2度ばかりエンストしてしまった。

スポーティに走るなら、エンジンを6000rpm以上に保ち、ワインディングを攻めるなら、1万500rpmの上限まで、各ギアで引っ張るのがいい。決して遅くはないし、パワーを引き出す面白さもある。

画像: 313㏄水冷DOHC4バルブはシリンダーが後傾し、前方吸気、後方排気とされる。クランクケースは上下分割で、合い面のクランク軸後方にはミッションの2軸と、クランク軸の前方にバランサー軸が置かれる。

313㏄水冷DOHC4バルブはシリンダーが後傾し、前方吸気、後方排気とされる。クランクケースは上下分割で、合い面のクランク軸後方にはミッションの2軸と、クランク軸の前方にバランサー軸が置かれる。

サスストロークが大きいGSは、シート高がRより50㎜高く、161㎝の僕には両つま先が何とか接地する程度。でも、車体が軽量で好バランスで、ハンドル切れ角も大きいから、取り回しも難なくこなしやすい。

それに街中なら、アップライトなライポジと、路面の段差をものともしないサスは快適で、走りを楽しめる。高速道路では車体の剛性バランスが抜群で、大型車のようなゆったりした安定感はRを凌いでいる。まさに、スーパーライト級といったところだ。

画像: 前輪19インチで、KYBのφ41㎜倒立型フォークはストロークを180㎜に拡大。前輪アクスルが前方にオフセットしたリーディングアクスル式である。

前輪19インチで、KYBのφ41㎜倒立型フォークはストロークを180㎜に拡大。前輪アクスルが前方にオフセットしたリーディングアクスル式である。

ワインディングでの走りっぷりは、ロードスポーツさながらだ。豊かなサスストロークと前輪19インチの穏やかな動きが同調して、気分良く流していける。後傾シリンダーレイアウトによるマスの集中化とロングスイングアーム化によって、姿勢変化の大きさの弊害を感じさせないところもさすがだ。

オフロードも走ってみたが、前後180㎜のサスストロークが威力を発揮、走破性はクラス最高水準にある。310Rの美点であった、バンク角や操舵角に関わらず常に維持されるニュートラル性は、このGSのオフロード走行でも健在で、フロントのスリップダウンに対するストレスも少ない。

どこへでも足を伸ばせるGSのオールラウンダーぶりは、このG310GSでも変わらない。排気量こそスモールでも、やっぱりGSなのである。

SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2075×880×1230㎜
ホイールベース 1420㎜
最低地上高 NA
シート高 835㎜
車両重量 170㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
総排気量 313㏄
ボア×ストローク 80×62.1㎜
圧縮比 10.6
最高出力 34PS/9500rpm
最大トルク 2.85㎏-m/7500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 11ℓ
キャスター角/トレール 63.3度/98㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ300㎜ディスク・φ240㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 110/80R19・150/70R17

文/和歌山利宏

公式サイト

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