走り出した瞬間、僕のバイク人生の中でも5本の指に入る衝撃だった。

軽く、がっしりしていて、不安感がまるでない。ストリートリーガルとしてすごく優秀なCRF250Lが、理想に限りなく近いエンデューロバイクに仕上がっている。

昔、トレールバイクをカスタマイズして理想のバイクを作ろうとする動きが流行した。エンジンはXRのようなあつかいやすさをもち、足回りはCRのようなレーサーにするというコンセプトが、受け入れられやすかったように思う。このCRF250Lはまさにソレ。さらに言えば、IAトップクラスのエッセンスが混じることで、当時の仕上がりとは段違いと言っておきたい。

2週間後に控えた日高ツーデイズエンデューロを走る、釘村忠のCRF250Lだ。

そもそもコレ、サスはオープンカートリッジになってますんで…

画像1: そもそもコレ、サスはオープンカートリッジになってますんで…
画像2: そもそもコレ、サスはオープンカートリッジになってますんで…

最大の注目点は、サスペンションがオープンカートリッジになっていることだ。CRF250Lのサスペンションは、スタンダードでは調整機構も何もなく、特にフロントサスペンションは柔らかいことこの上ない。林道をツーリングするには申し分ないけど、レーシングスピードで攻めるとなると役不足。

Technixでは、同社がロードバイクで展開しているTASC(フロントフォークのシステム自体を見直し内部構造を大幅にアップグレード、カートリッジ式に変更するもの)のような形で、アウターをそのまま使用して内部構造をごっそり入れ替えている。

画像3: そもそもコレ、サスはオープンカートリッジになってますんで…
画像4: そもそもコレ、サスはオープンカートリッジになってますんで…

なので、圧側・伸側ともに調整が可能。ちなみに、伸び側が36段階、圧側は24段階(ファクトリー御用達のモトクロス用SHOWA Aキットですら24段階のクリック数)でこまかく刻んである。釘村によれば「36段といっても、1段ずつの刻みが細かいので、通常のレーサーよりがらっと特性を変更できるわけではないようです。でも、しっかり調整が効くようになってます」とのこと。

画像5: そもそもコレ、サスはオープンカートリッジになってますんで…

リアサスペンションには、TechnixのTGR Tech3.1。リザーバータンクがないパターンで、リバウンドのアジャスターがある。こちらもリバルビングした。「去年はリア下がりの姿勢になってしまっていたので、その調整にリアもしっかりさせました」と。

この前後サスペンション、とにかくしっかりしていて手で押した感覚はレーサーと相違ないほど。で、マシンをスタンドから起こすだけでも、スタンダードとは別物であることがわかる。通常トレールの場合、スタンドから起こす際に沈み込む量が大きく、マシン自体がふわっとした感覚になるけど、このCRFだと起こす際に固まり感がある。これだけで、「バイクが軽い」という錯覚をする。

基本は昨年の仕様を踏襲

こちらは、2017年に取材した釘村車。実は、今回取材した釘村車も、そこまで大きく仕様を換えていない。サスペンションに関しては、リバルビングしなおして2017年仕様よりも強い設定にしているという。

画像: 今季はN.R.TではなくTARGETからの出走、まだデカールは2017仕様のままで本番までに変更される

今季はN.R.TではなくTARGETからの出走、まだデカールは2017仕様のままで本番までに変更される

CRF250Rのタンクを流用しているが、もちろん簡単にはつかない。フューエルポンプをLにあわせたりするだけでなく、マッチングも難しい。

画像: 基本は昨年の仕様を踏襲

ステーを組み合わせて取り付け。タンクは、前側のボルトがとまっておらず、シュラウドとの接続が強度メンバーになっている。トップIAが2日間走って耐えられる仕様だ。

エンジンに関しては、300cc化できるキットがサードパーティから出ているが、登録面で無理があるので諦めた。また、CBRのハイカムを流用できるものの、こちらはロード用セッティングなので相性もあわない。現状、CRF250Lを2日間の耐久性をもたせる用途でエンジンをチューニングするのは困難だ。だから、DELTAの排気系以外はスタンダードである。

CRF450RXで1分22秒のコースを、2秒落ちで走れる

僕もこのCRF250Lを乗らせてもらった。冒頭に書いたとおり、衝撃的なフィーリングだった。CRF250Lのスタンダードでは考えられない軽いフィーリングなのが、まず第一印象だ。トレールのサスだと、オフロードで深く入ってしまうので、これが重さに感じてしまう。実際、タンクを変えたことでの軽さも相当あるとは思うけど、このフィーリングは車体をしっかり作り込んだところによるものが大きいはずだ。

コースインすると、サスが「もっといける」と伝えてくれるから、もうトレールだと思って走る必要はない。エンジンはスタンダードなので怖くないし、スーパーフラットな特性だから、扱いやすいことこの上ない。

この日、釘村はリバルビングからあがってきたサスペンションの最終調整に入っていた。
「感触はかなりいいですね。トレールのサスペンションは、レーサーとは使い方が違います。レーサーならギャップに当ててパワーで押し切っていけるのですが、トレールのパワーだとギャップに負けてしまうので、サスがしっかりしていてもギャップに当てていくとタイムが落ちてしまう。だから、ギャップに沿って走って、斜面で加速するような走り方に切り替えています」と釘村。自分で設定したクロステストでは、かなり深いギャップがあるが底付きするようなことは一切ないという。

画像: AQ6T9889 youtu.be

AQ6T9889

youtu.be

サスの動き、とてもスムーズなのがわかるだろうか。

画像: CRF450RXで1分22秒のコースを、2秒落ちで走れる

CRF450RXで走って、1分22秒のコースをCRF250Lで1分24秒といったところまでつきつめた。10分のテストでおおよそ10秒おちくらいに納まった計算になる。「あとは、ファイナルの減速比をショートにし、フロントマスクを軽いモノに換えます。M・ブラウンは倒せないと思うけど、日本人1位に届いたらいいな」と。

2017年で、テストの総計は30分ほど。苦しい戦いには違いないが、活路を見いだせるだろうか。

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