鈴鹿8耐の土曜日といえばトップ10トライアル(=勝手に略してTTT)。雨スタートの土曜でしたが、鈴鹿4耐が始まる頃には雨は止み始め、終盤はドライ路面でのレースへ。台風上陸が心配された鈴鹿ですが、なんとか予定通りのスケジュールでセッションが進行され、鈴鹿8耐関連は45分間のフリー走行に、きのうの計時予選上位10チームによるトップ10トライアルが予定されていました。

しかし、ここで大きなアクシデントが起こってしまいます。フリー走行の開始早々、コースインした周(これをアウトラップといいます)のS字立ち上がりで、なんと#21中須賀克行が転倒してしまうのです! 出場全チームがコースインし、まだまだゴチャゴチャとバラけ始める段階にも至ることなく、なんでもないところで中須賀が転倒! 
ビデオを見返すと、中須賀は前のライダーに進路をふさがれたか、となりのライダーと接触してしまったか――。詳細は確認できなかったのですが、集団の中で転倒、マシンから振り落とされた中須賀は、あわや後続のマシンから轢かれちゃう、ってタイミングでしたが、後続のマシンもよく気を付けて、2次アクシデントはなし。マシンは外側へ、中須賀はイン側へエスケープ。しゃがみこんだ中須賀の姿が場内のビジョンに映し出されると、鈴鹿サーキットに悲鳴が起こったようでした。

画像: 事前テストからここまで、順調に進行してきたヤマハファクトリーにアクシデント!

事前テストからここまで、順調に進行してきたヤマハファクトリーにアクシデント!

セッションはすぐに赤旗中断。中須賀も無事にピットへ戻り、すぐに出走準備のまま、ヘルメットをかぶって待機。アレックス・ロウズ、マイケル・ファン・デル・マークの走行後、中須賀もコースインするのですが、ほんの数ラップしただけで再びピットに戻ります。
ピットに戻って「中須賀、大丈夫なんだ!よかった!」と思ったのもつかの間、すぐにピットに戻ってしまい「あれ、やっぱりどっかケガした??」と思わせてしまいます。

画像: タイムアタックでは「2分06秒台も見えてきました」と中上

タイムアタックでは「2分06秒台も見えてきました」と中上

その後、フリー走行は終了し、TTTがスタート。天候はここまで、再び崩れることはなく、路面も完全ドライ。しかしTTTは、天候が崩れることが予想されたため、WSBKでいうところの「ウェットルール」を採用。これは、通常のTTTが、1台ずつコースインしてクリアラップアタック合戦をするのに対し、TTT進出10チームによる40分間のタイムアタックセッションとなったのです。

出場できるのは、チーム2人まで、どちらのライダーがどの順でコースインしてもOKで、広い鈴鹿サーキットのコース上に、たった10台だけが走っている、というセッションとなったのでした。

画像: ジョナサン・レイ 相変わらず無駄のない力の抜けた美しいフォーム

ジョナサン・レイ 相変わらず無駄のない力の抜けた美しいフォーム

セッションスタートと同時に、#11レオン・ハスラム、#634ドミニク・エガーター、#21ファン・デル・マークが集団をリード。しかし、2周回目に入った1~2コーナー、ハスラムとエガーターがオーバーラン。走り出したばっかりでペースを上げすぎたかな、とも思われましたが、これはVd・マークが背後につく(つまりスリップに入られて、ドラフトでタイムアップさせてしまう)のを嫌ってコースアウトしたようにも見えました。セッション開始早々、駆け引きがバチバチでした。

画像: ブラッドリ・レイとTTTに出走した津田は転倒してしまいます

ブラッドリ・レイとTTTに出走した津田は転倒してしまいます

まずトップタイムをマークしたのは、#33高橋巧(2分06秒798)。すぐに#12ブラッドリ・レイ(2分06秒642)、次にハスラム(2分06秒650)、Vd・マーク(2分06秒471)と次々とタイムは更新され、ハスラムが2分05秒984までタイムを伸ばしてきます。出た05秒台! これで2016年のポル・エスパルガロ(当時ヤマハ)の2分06秒000が破られました!

画像: レイがピットに戻ると、ハスラムが出迎え 2019年はこのふたりがWSBKをKRTから走ります

レイがピットに戻ると、ハスラムが出迎え 2019年はこのふたりがWSBKをKRTから走ります

各チームとも続々とピットインし、ライダー交代。まず#634ランディ・ドゥ・プニエが2分06秒895をマークすると、#33中上貴晶(2分06秒127)ときて、ついに来ました、#11ジョナサン・レイが、チームメイトのハスラムのタイムを上回る2分05秒722を叩き出します! うわ、05秒7まで来たか、と思われた瞬間、レイはピットイン。タイム出ししたから終了かな、と思ったら、リアタイヤを新品に交換して再コースイン!
そしてアウトラップを経てのタイムアタックでは、なんとタイムを伸ばして2分05秒403をマーク! 昨日の予選でマークした05秒1には及びませんでしたが、これで#11カワサキTeamグリーンが計時予選に続いてTTTでもトップタイムをマークし、ポールポジションを獲得しました!

画像: 穏やかに質問に答えてくれたジョナサンさん ちょっと見ない間にすごく落ち着いた紳士になっちゃった

穏やかに質問に答えてくれたジョナサンさん ちょっと見ない間にすごく落ち着いた紳士になっちゃった

――昨日の計時予選の05秒1に届きませんでしたが、これは雨が降ったあとで路面コンディションが悪化してたんですか? と中の人、記者会見で質問。
「路面コンディションは問題なかったさ。きのうの予選で履いたタイヤよりもソフト目のタイヤを履いていたから、ちょっとバイクのバランスが変わってしまっていたんだ。ピットに入って、昨日のタイヤに替えられたらな、と思ったら、用意されていたのがまたソフトタイヤだったから、昨日のタイムには届かなかったんだよ」とレイ。

しかし2分05分403とは! 文句なく鈴鹿8耐での歴代最高タイムで、これは2018年の全日本選手権・鈴鹿2&4で中須賀がマークした2分04秒876に迫るもの。もちろん中須賀の04秒8は、スプリント仕様で、8耐仕様よりも10kg近く軽いもの! g単位の軽量化をしているレーシングマシンでの10kgって……。それほどすごいレイの2分05秒403だったのです。

画像: ここへきてぐんぐんタイムを上げてきたレッドブルホンダ勢 カギはPJの戦闘力か

ここへきてぐんぐんタイムを上げてきたレッドブルホンダ勢 カギはPJの戦闘力か

TTTで決定した、予選トップ10順は以下の通り。
1 #11 カワサキTeamグリーン       2分05秒403
2 #33 Red Bull Honda with日本郵便    2分06秒127
3 #21 ヤマハファクトリーレーシング   2分06秒170
4 #634 MuSASHi RT ハルクプロホンダ   2分06秒177
5 #12 ヨシムラスズキMOTUL       2分06秒642
6 #95 エスパルスドリームレーシングIAI  2分06秒756
7 #090 auテルルMotoUpレーシング    2分07秒246
8 #7 YARTヤマハ            2分07秒387
9 #19 KYBモリワキMOTUL        2分08秒128
10 #79 Team SuPドリームホンダ     2分08秒200

画像: 中須賀は会見も欠席 マイケルとアレックスもちょっと寂しそうでした

中須賀は会見も欠席 マイケルとアレックスもちょっと寂しそうでした

台風接近で心配されたセッションは、ひとまず予定通り行われたものの、8耐名物の前夜祭も「バイクであいたいパレード」も中止され、夕方からは大粒の雨も落ちてきてしまいました。しかし、降り出した雨は21~22時ごろには再び止んだものの、0時ごろから暴風域に入ったようで、スゴい風! スゴい雨! 強風で、白子駅前のホテルSが揺れちゃっています……。だ、大丈夫か、明日……。

そして、負傷の程度が心配された中須賀ですが、ヤマハの公式発表は「様子を見ています」とのこと。しかし、転倒したあとコース外へエスケープする中須賀の姿は、中の人が鎖骨を折った時のアクションにそっくりでした……。肩を打ったか、アバラをやったか、鎖骨か、肩鎖関節か……。日曜にも出されるヤマハの正式発表を待ちたいと思います。

写真/EWC 中村浩史 文責/中村浩史

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