「蔵王最速」だった125の思い出ですが…

この連載で125㏄のモデルを取り上げるのは初めてじゃないですか? あまり小さいバイクのイメージが僕にはないかもしれませんが、実は僕が初めて取った免許は小型2輪で、最初に所有したバイクはカワサキのAR125だったんですよ。AR125を買ったのは17歳のときでしたが、1年で1万2000㎞くらい峠を走りまくりました。そして買ってから2年目にノーマルのままスポーツランドSUGOに持ち込んで、プロダクションクラスのレースに出たんですが、3位になっちゃったんです。そこで勘違い(笑)したのがきっかけで、今のレーサーとしての自分があるんですよね。

当時は「蔵王最速」で、AR125で誰にも負けなかったです。でも先日、昔そのままのAR125で走りに行ったのですが、コーナーはそこそこ速く走れるけど直線は遅くて、トータルで考えたら話にならないくらい遅い……。昔の思い出だから美化されているんですかね? ああ勘違い、という感じです(苦笑)。今のビッグバイクでは時速120キロ※とかあっという間ですけど、当時のAR125だと120キロ※の間までに色々あって、逆に楽しめたんじゃないかな、と思いました。バイク本来の「動き」は、あの頃125に学んだと思います。

※クローズドコースでの走行です

画像: 「蔵王最速」だった125の思い出ですが…

■伊藤真一
1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。昨年は若手育成に携わりながらも、鈴鹿8耐や全日本ロードに参戦。

CB125Rは44万8200円と、125としてはなかなか高価だなと思いましたけど、スタイリングもカッコいいし、見た目の質感もいい。ABSも標準だったり装備も充実しているので、これくらいの価格にもなるだろうな、と実車を目の当たりにすると思うようになりました。自分が高校生のころ親しんだ125はオモチャっぽく感じるような造りの部分もありましたけど、CB125Rはそういうオモチャっぽさはまったくないですね。一番最初に目を引いたのは高張力鋼のフレームですね。非常に変わった形状と構造です。そしてスイングアームは高張力鋼板の貼り合わせで、とても凝った造りになっています。このあたりは、高価なだけのことはあるなぁ、と唸らされました。

今回の試乗車はほとんど新車と言えるくらい走行距離が少なかったので、試乗してからしばらくはエンジンと車体両方の慣らし運転をするような感じでした。しばらく走り込んでサスペンションもよく動くようになってからは、CB125Rはホンダとしては珍しく非常に「冒険」したハンドリングながら、非常に上手くまとめられた1台だなぁと感心しましたね。

まずライディングポジションはシート高が高めで、ハンドルバーが幅広い。乗った感じがまるでオフロードバイクみたいです。MVアグスタのブルターレやドゥカティのモンスターのような、ストリートファイター的なポジションでもあります。

大排気量のストリートファイターって、全開にするととにかくフロントがポンポン浮いてしまうのですが、上手くそれを抑えることができるのでこのポジションが成立しているのです。CB125Rのパワーですと、フロントが浮くようなことはないですけど、開発者はストリートファイター的な走りとスタイリングを与えたかったのでしょうね。

ポジション的には開発に携わった初期RC211Vを思い出したりもしました。あの時も車体の前側に乗って、フロントを抑え込むみたいなフィーリングでしたね。初期のRC211Vというと、みなさんは派手にスライドしていたイメージがあるみたいですけど、当時の211Vはスイングアームが長くて、全体が上手くリアに流れて乗る感じで乗りやすいんです。そしてすごくトラクションするんですよね。

CB125Rのサスペンションセッティングはあえてフロント側に荷重が行くようにしてあり、フロントを軸にして回るような操縦性です。街中を90度にクイックに曲がる操作もやりやすいし、ジムカーナ的な走りをするのも楽しそうですね。

CB125Rの車体は、ピボットプレート部がメインフレーム部から独立しているので、一見すると剛性的に大丈夫なのかと思ってしまいますが、非常にバランスが良く仕上がっているんですよね。ベタボメするつもりじゃないのですが(笑)、このライディングポジションで、フロント重視の操縦安定性ながら、リアの接地感がしっかり伝わってくるんですよ。同じホンダのネイキッドであるCB400スーパーフォアなどとは異なったハンドリングなんですけど、CB125Rのハンドリングも実に上手くまとまっています。よくこの方向性に振ったなぁ、と思いました。

車体の剛性バランスが上手くチューニングされ軽快なハンドリングとリアの接地感を両立!

リアタイヤは、変な言い方をすると4輪の四角いタイヤみたいなフィーリングで、すごい安定感があるんです。一般にバイクのタイヤはバンクさせてコーナーを曲がるときに接地点が移動すると、接地圧の変化で接地感が変化していきます。でもCB125Rにはその感じがなくて、手で触れて感じているくらいリア側の接地感が安定しています。リアの接地感がずっと伝わっているので、怖さがないんです。そのポジションからフロント側の高い位置にライダーが乗っていても、リアの接地感をお尻に感じることができます。

画像: 今までのホンダ製ネイキッドにはなかった"ハンドリング"のCB125Rの走りに、伊藤さんも大いに感心した様子。「乗り始め当初はフロントとリアサスペンションを調整したい、と思いましたが、乗っているうちに自分のなかの違和感がなくなって、ハンドリングの意図がわかってきましたね」。

今までのホンダ製ネイキッドにはなかった"ハンドリング"のCB125Rの走りに、伊藤さんも大いに感心した様子。「乗り始め当初はフロントとリアサスペンションを調整したい、と思いましたが、乗っているうちに自分のなかの違和感がなくなって、ハンドリングの意図がわかってきましたね」。

フロント側は軽めに作って軽快感を出しているのですが、これでリア側も軽いとヒラヒラしすぎて怖いハンドリングになってしまいます。このリアタイヤの接地感の良さは、車体の剛性バランスが上手くチューニングされているからなのでしょう。わざと舵に対して応答の遅れを作ると、リアの接地感が残りやすくなるのですが、それを狙っているんじゃないですかね? リアタイアを手でずーっと押している、触っている感じ。リンク式ではなく、直押しのリアショックになっているのも、このCB125のだから、こういうリア側のフィーリングに影響しているのだと思います。

あとCB125RのABSは非常に出来がいいですね。細やかな制御が効いていて、下手な大型車用ABSよりも上質ですね。CBR1000RRの調整可能な高級なABSなどを除く、非調整式のABSのなかで一番良いんじゃないか、と思うくらいよくできています。

試乗したコースには一部未舗装路があったのですが、わざとフルブレーキングしてみたらABSが効いてちゃんと制動力が上がるんですよ! これにはびっくりしましたね。これだけ制御が良ければ深いバンク角でもABSが使えるでしょうから、転ばないバイクみたいに思えるでしょうね。またCB125Rはフロント側の荷重が多いポジションなので、フロントロックでスコーンと転ぶ危険性を考えると、ABSが標準装備になっていることは非常に良いことだとも思いました。

CB125RのエンジンはOHC2バルブの単気筒なので、やっぱりそんなに目を見張るパワーとかは感じないですね。でも非常に気持ちよく回るエンジンではあります。僕はFTR223に乗ってましたが、同じ2バルブの単気筒でもCB125Rの方は高回転域での気持ち良さが全然上ですね。

13馬力なのでスピードの上昇の速さは知れていますが、程よいパワー感とも言えるでしょう。大関さんを後ろに乗せての二人乗りも試してみましたが、6000回転くらいでトコトコ走ることもできるわけですから、大したものだと思います。二人乗りしたときの操縦安定性は、一人乗りのときと大きな変化はなかったですね。ただコンパクトなタンデムシートの造りやタンデムライダー用のグリップの造りからすると、積極的に二人乗りをしようというバイクではないでしょうね。一般道を走る限りでは、CB125Rのエンジン性能には不満はないですね。125ということを忘れるくらい、よく走ります。

画像: 車体の剛性バランスが上手くチューニングされ軽快なハンドリングとリアの接地感を両立!

一度基本に帰って、自分のライディングを見直してみるのも良いかも!

そのほか細かいところでは、燃料タンクの造りが良いなと思いました。表面を覆うカバーが樹脂製で左右分割式になっているのですが、ユーザー目線では絶対この方式の方が良いですね。普通は転んで片側が凹んだらその1発でおしまいですからね。この方式でしたら片側だけ交換すれば良いのですから、理にかなっていると思いますよ。

今の時代は、すぐに大型自動二輪免許を取って大型自動二輪でバイクを乗り始める、という人も多いと思いますが、今の大型バイクですと公道で性能を使い切って走るということはなかなかできることではないと思います。

そういう人がCB125Rに乗った場合、きっと今までとは違った景色を見ることができるんじゃないですかね? 自分くらいの歳になっていろんなバイクに乗ってきていると、排気量がデカいからエラい、という感覚はなくなってきますね。乗ってみて自分のフィーリングに合うバイクが、一番良いと思うようになりますから。

また、今125というとどうしてもスクーターに目が行くじゃないですか? もちろんスクーターが便利で良いことも認めますが、一度基本に帰ったような125のロードスポーツに乗ってみて、もう一回自分のライディングを見直してみるのも良いんじゃないかと思います。CB125は、質感も装備も良くて、スタイリングもカッコいい。CB125Rならば排気量が小さいことの劣等感みたいな、引け目を感じるようなことはないでしょうね。そもそも125好きの僕には、そういう考えはありませんけど…。

燃費が良くて、4輪の保険のファミリーバイク特約が使えるのも、経済性のメリット的に良いですね。一般道メインとか、セカンドバイクという使い方ならば、125の良さがより活きてきますし。自分の娘が免許取れる年齢になったら、娘にCB125Rを買い与えてちゃっかり自分がしょっちゅう借りて乗る、というのもアリかなと思いました(笑)。

ホンダにしては「冒険」したハンドリングを、上手くまとめたCB125Rには非常に新鮮味を覚えました。今回の試乗では福島の猪苗代湖や磐梯山の周辺を走るツーリング的な試乗コースの、景色の良さをCB125Rとともに楽しめました。これから登場する同じCBーRシリーズの1000、250の走りをチェックするのも楽しみですが、久々に125ならではの魅力を、CB125Rに改めて教わったような気がします。

画像: 一度基本に帰って、自分のライディングを見直してみるのも良いかも!

HONDA CB125R

新世代CBシリーズの入門モデルとしてデビューした、原付二種のスポーツモデル。リニアな出力特性の水冷4ストロークOHC2バルブ単気筒を、新設計のスチールフレームに搭載。フロントフォークには倒立式を採用。リアショックはダンパー室内のオイルとガスが混ざることを防止する、分離加圧式を採用。標準装備のABSはIMU付きで、車体姿勢を的確に分析し、ホイールロックや急制動時の後輪浮き上がりを効果的に抑制している。

画像: ●全長×全幅×全高:2040×820×1055㎜ ●ホイールベース:1345㎜ ●シート高:815㎜ ●車両重量:127kg ●エンジン形式:水冷4ストOHC2バルブ単気筒 ●総排気量:124cc ●ボア×ストローク:58.0×47.2㎜ ●圧縮比:11.0 ●最高出力:13PS/10000rpm ●最大トルク:1.0kg-m/8000rpm ●燃料タンク容量:10L ●キャスター角:24° 12′ ●トレール量:90㎜ ●タイヤサイズ(前・後):110/70R17・150/60R17 ●ブレーキ形式(前・後):φ296㎜ディスク・φ220㎜ディスク ■価格:44万8200円

●全長×全幅×全高:2040×820×1055㎜ ●ホイールベース:1345㎜ ●シート高:815㎜ ●車両重量:127kg ●エンジン形式:水冷4ストOHC2バルブ単気筒 ●総排気量:124cc ●ボア×ストローク:58.0×47.2㎜ ●圧縮比:11.0 ●最高出力:13PS/10000rpm ●最大トルク:1.0kg-m/8000rpm ●燃料タンク容量:10L ●キャスター角:24° 12′ ●トレール量:90㎜ ●タイヤサイズ(前・後):110/70R17・150/60R17 ●ブレーキ形式(前・後):φ296㎜ディスク・φ220㎜ディスク ■価格:44万8200円

画像: 伊藤さんのお気に入りポイントのひとつはABS。「制御の良いABSが標準で付いているので、初心者はもちろんベテランライダーも安心して乗ることができますね」。

伊藤さんのお気に入りポイントのひとつはABS。「制御の良いABSが標準で付いているので、初心者はもちろんベテランライダーも安心して乗ることができますね」。

画像: メインフレーム部で後輪荷重の入力を受けにくい構成となっている、独特なフレーム。リアタイヤの接地感が非常にわかりやすいと、伊藤さんも大絶賛の仕上がりを見せる。

メインフレーム部で後輪荷重の入力を受けにくい構成となっている、独特なフレーム。リアタイヤの接地感が非常にわかりやすいと、伊藤さんも大絶賛の仕上がりを見せる。

画像: 必要にして十分、と伊藤さんがそのパワー感を評するCB125Rの水冷OHC2バルブ単気筒ユニット。ミッションのタッチも悪くないですね、ともコメント。

必要にして十分、と伊藤さんがそのパワー感を評するCB125Rの水冷OHC2バルブ単気筒ユニット。ミッションのタッチも悪くないですね、ともコメント。

画像: ひと昔前の125㏄モデルでは考えられなかった、フルデジタル表示のマルチファンクション液晶メーターを採用。シフトアップインジケーターなどのライダーエイド機能も装備。

ひと昔前の125㏄モデルでは考えられなかった、フルデジタル表示のマルチファンクション液晶メーターを採用。シフトアップインジケーターなどのライダーエイド機能も装備。

RIDING POSITION ライダー身長:179㎝、パッセンジャー身長:172cm

長身の伊藤さんが乗っても窮屈に感じることがないくらい、CB125Rのライディングポジションにはゆとりがある。シートは跨った瞬間にシート高の高さを意識させるが、車重が軽いために取り回しに不安を覚える人は少ないだろう。テーパータイプのハンドルバーは幅が広く、オフロードバイク的でもある。タンデムシートはあまり広くないので、二人乗りについてはあくまでエマジェンシー的な使い方と考えるのが、適当なのかもしれない。

画像1: RIDING POSITION  ライダー身長:179㎝、パッセンジャー身長:172cm
画像2: RIDING POSITION  ライダー身長:179㎝、パッセンジャー身長:172cm

PHOTO:松川 忍 まとめ:宮崎 健太郎 モデル/大関さおり

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