6月3日、2018年のエルズベルグロデオが終わった。日本勢としては3年ぶりのチャレンジで、チェックポイント14まで到達。2015年の矢野和都と同じ位置で4時間を終えた。順位としては141位だ。

これ以上、前に進めない、と思うセクションには出会えなかった

画像1: これ以上、前に進めない、と思うセクションには出会えなかった

予選を204位、決勝を辞退した人のおかげで繰り上げ、198番手として4列目スタートとなった石戸谷蓮。JNCCでほとんど百発百中のスタートを決める石戸谷も、今回ばかりは集団に飲まれてしまう。

画像2: これ以上、前に進めない、と思うセクションには出会えなかった

たかだか、6名ほどに前に行かれただけで、この有様だ。視界の悪さでさらに出遅れ、立ち上がりは4列目の第2集団といったところ。

画像3: これ以上、前に進めない、と思うセクションには出会えなかった

難しいヒルクライム、ウォーターパイプも一発クリアしていく石戸谷。「一発クリアでしたよ」とのこと。

ゴール後、石戸谷が言った一言は象徴的だ。「楽しい! 最高です!」

これまで、エルズベルグロデオは僕が取材してきたこともあって、その恐ろしさや難しさにフィーチャーして日本に配信してきた。実際、田中太一も、矢野和都も、楽しいというよりは「辛く、きつく、怖い」ことが先立っていたと思う。

「少なくともチェックポイント14までは、自分の中で恐怖を感じたり、これ以上はスキル不足で先に進めないようなところには出会いませんでした。落ち着いてトライできれば、とても楽しいレースだと思います」と言う。

渋滞をあえて作る、ハードEDの戦い方

クロスカントリーや、オンタイムエンデューロでは渋滞の存在そのものが悪だが、ハードエンデューロでは渋滞をうまく使うことで、展開を縦に長くし、どうにも前に進めない状況を少なくする傾向がある。

画像1: 渋滞をあえて作る、ハードEDの戦い方

石戸谷の場合、出遅れたこともあってすでに渋滞が至るところにできてしまっていた。

画像2: 渋滞をあえて作る、ハードEDの戦い方

観客のヘルプもものすごく多い。

画像3: 渋滞をあえて作る、ハードEDの戦い方
画像4: 渋滞をあえて作る、ハードEDの戦い方

それでも、どうにも前進できないシーンが多く石戸谷を襲った。落ち着いたレース運びをする石戸谷は、一息つきながら持っていった携帯で「いま渋滞中!」と僕らにメッセージを送ってきたほどだ。

このカットは、このあと右側にそれていくルートを発見し、ステアを制して30台くらいをごぼう抜きしたところ。石戸谷は全レースを通して60台はパスしたことになる。

石戸谷が思う、完走への条件

画像: 石戸谷が思う、完走への条件

「時間さえあれば、クリアできないことはないだろうと思いました。
来る前には、きっとトライアルの練習をしないといけなくなるんだろうなと思っていましたが、難所の走破力はCP14までには感じなかった。むしろ、スピードがないとキツイですね」
と石戸谷は言う。

日本にも馴染みのあるカイ・アンダーソンはCP18までクリアしたあと、何度もファックとつぶやいた。フロントブレーキが早々にきかなくなったのだそうだ。矢野も、やはり同じトラブルで苦戦を強いられた。石戸谷は、一切のトラブル無くマシンを前に進めた。石戸谷ならではの丁寧なライディングが光った結果だ。マシントラブルは、真綿で首をしめつけるようにライダーを苦しめる。マシンが消耗するたびに、完走への希望を剥ぎ取られていくが、石戸谷にはその苦しさは無かった。

「予定通り、あと2年あれば完走に手が届くのではないかと思っています。カールズダイナーは恐ろしく長いので、もっと体力は必要でしょうね。スピードも磨きをかける必要がある。プロローグで前に出れないと、物理的にクリアできなくなってしまう。

今の日本のハードエンデューロライダーなら、走破力は不足しないと思います。G-NETの黒ゼッケンであれば、時間さえあれば完走できるコースだと考えています。でも、スタート順が遅れれば遅れるほど、渋滞に阻まれてスキルを発揮する場面が無くなってしまいます。だから、JNCCやJECでしっかりスピードをつけることも、大事なことでしょう」

エルズベルグロデオはカールズダイナーを越えたあとに一気に難易度を上げ、牙をむき出しにかかる。石戸谷は、来年この牙をしっかり目の当たりにすることになるはずだ。

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