この週末は、年に2度の旧車の祭典「テイストofツクバ」が行なわれました。最先端スーパースポーツじゃない、空冷エンジンや鉄フレーム車が筑波サーキットをばんばんレーシングスピードで攻め立てるという人気のレース、この春の大会で事件が起こったのです。いや「事件」はおかしいねw 楽しみなビッグニュースです。それが、前回このエントリで上げた『加賀山就臣テイスト参戦』(https://www.autoby.jp/_ct/17167003を参照)です。

画像: これがチームKAGAYAMAの刀1000R、完成バージョン! GSX-Rエンジン+オリジナルフレーム!

これがチームKAGAYAMAの刀1000R、完成バージョン! GSX-Rエンジン+オリジナルフレーム!

現役バリバリの、しかも全日本ロードレース参戦中のライダーがシーズン中にテイストに参戦すること自体が稀なんですが、それが日本きっての人気ライダー・加賀山ユッキーってことで、テイスト界では結構な話題になっていました。
ユッキーが参戦するのは、国際ライセンスのライダーが参戦OKの、オリジナルフレームが使用できる「ハーキュリーズ」。ついこないだはカワサキのスーパーチャージモンスターNinja H2Rが参戦したり、ドゥカティ・デスモセディチRRが走ったこともあるクラスです。
このクラスに、この春の大会では、ユッキーだけじゃなく、今年は全日本フル参戦はしていないながら、今年の鈴鹿8耐に出場する國川浩道も参戦するというビッグニュース。しかも國川は、テイストの創設期(最初はテイストofフリーランス、って名前でした)から出場、テイストの顔といってもいいイエローコーンからの参戦! マシンは新作の油冷イナズマ1200のエンジン+フレームをCB750Fルックスとしたマシンです! ベースは97年式の中古イナズマエンジン。中古車のタマはたくさんあるから、TOTレーサーのベースとしてもイイですね。 

画像: 「空冷エンジンの最高峰・油冷エンジンをホンダらしいルックスに仕上げたんだ」とイエローコーンの杉田代表。タンクのネームに注目!

「空冷エンジンの最高峰・油冷エンジンをホンダらしいルックスに仕上げたんだ」とイエローコーンの杉田代表。タンクのネームに注目!

画像: ハーキュリーズ3連勝中の新庄。いやぁ、燃えてました!

ハーキュリーズ3連勝中の新庄。いやぁ、燃えてました!

画像: 筑波のイベントレースではKTMカップキングとしても知られるコーイチくん

筑波のイベントレースではKTMカップキングとしても知られるコーイチくん

画像: あれライダー山根さんいねぇし マシン左のコワモテ(に見えるの)はパワビルの張替さん こう見えてあたりの柔らかい優しいオジサンですよw

あれライダー山根さんいねぇし マシン左のコワモテ(に見えるの)はパワビルの張替さん こう見えてあたりの柔らかい優しいオジサンですよw

このビッグネームを、現在ハーキュリーズ3連勝中の新庄雅浩(ZRX1100/オートボーイ&松下ヨシナリ 太基運輸)、RX松田光市(GPZ1000RX/遊心&SDA& Webike)、ニンジャ山根光宏(GPZ900R/パワービルダー)が迎え撃つ、ワクワクの止まらないレースとなったんです。新庄、山根、松田のマシンも、ZRXやニンジャ、RXのルックスだけど、フルチューンエンジンのオバケです!

現在は2Days制で行なわれているテイストofツクバ、土曜は朝方に降った雨でウェット路面スタートだったんですが、路面もすぐに乾き、2日間ともほぼ好天に恵まれました。
ハーキュリーズが行われたのは日曜で、中の人は日曜しか取材に行けなかったんですが、筑波のパドックはおかしなムードに包まれていました。それが、パドックのユッキーのピット! とにかく、すんごい人だかり!w 
Webオートバイでも掲載したチームKAGAYAMAオリジナルマシン「KATANA1000R」を、そしてユッキーをひとめ見ようとファンがごった返していたんです。そのユッキーも、取材や撮影に駆り出されて忙しい中、いつもの全日本よりもいくらかリラックスしたかんじで、たくさんのファンのサインや写真撮影に気軽に応じていましたね。こういう、ファンを大事にするところがユッキーの人気の秘訣なんです。

画像: これみんな、ユッキーのピットに押し寄せたファン! すげぇ密集度でした

これみんな、ユッキーのピットに押し寄せたファン! すげぇ密集度でした

パドックをはさんで第1ヘアピン側にはイエローコーンのピット、コントロールタワーをはさんだピット側にオートボーイ、その反対側にパワービルダーとかユウシンが陣取るムード。いいですね、パドックもグッと華やかになりましたね。ユッキーのテントにはエナジードリンクのGO&FUNやスピーカーのJBLがサンプリングや物販をしていたり、イエローコーンも自社製品の販売やってたり、こういうところもテイストの楽しさですよね。中の人も、あさイチに物販テントでチョイかけバッグ買っちゃったりw 朝から買い物してドースル、と(笑)。

テイストは、この「なんでもあり」ハーキュリーズや、「空冷鉄フレーム2本サス」モンスタークラスを頂点に、土曜に①DOBAR2/ZERO2 ②ZERO4 ③モンスター(予選タイムによって2クラスに分けられます)が、そして日曜には④DOBAR1/ZERO3 ⑤ZERO1 ⑥モンスターEVO ⑦F-ZERO ⑧ハーキュリーズ/スーパーモンエボ混走の計9レースが行われます。
2Daysで行なわれるようになって3回目のテイスト。レース進行スケジュールに余裕ができて、すごくスムーズになりました。1Dayの頃は、次々と予選もレースも進んで、忙しすぎたもんw 取材する方も、カメラマンはコースに出っぱなしだし、エントラントはきちんと準備する時間もキッチリとれない、なにより赤旗中断とかコース清掃とか、そういうレースインターバルが十分じゃなくて、オフィシャルさんも大変なレースでしたからね。
まずは、ド注目のハーキュリーズを中心にお伝えします。

日曜午前には、まず公式予選です。このセッションでは、現在ハーキュリーズ3連勝中、コースレコードホルダーの新庄が積極的に飛びだし、トップタイムをポンポンマークしていきます。開始3周目かな、もう0分58秒台に突入! その新庄を國川がピタリとマークして、ポールポジションは國川が奪取! 2番手に加賀山、3番手に新庄と、この3人がフロントローに並びました。2列目にはRX松田、ニンジャ山根、そしてモンスター/モンエボから昇格してきた谷津太郎(タロウモータース&アマノジャク)がつけました。谷津は前回かな、NinjaH2でもハーキュリーズに出てましたね。

「今回からダンロップの新型タイヤを履いているんですが、これがスンゴいんです。ダンロップがMoto2で使ってるスリックのミゾ付きバージョンで、日本では今のところサーキットオンリーのタイヤ。ここにまだ合わせきれてない感じです。もう、加賀山さんが来てくれたレースだってのに、よりによってトラブルも多いんだもん。でもがんばります」とレコードホルダー新庄。新庄はかつて全日本ロードレースにもフル参戦していて、筑波&もてぎのエリア選手権Wチャンピオンを獲ったこともあるライダー。以前からユッキーに心酔してる後輩です。ユッキーの参戦に、いちばん燃えている「迎え撃つ側」なんですね。

画像: 1周目のヘアピンをトップで通過したのは#51松田。後方に#71新庄、#99國川が続きます

1周目のヘアピンをトップで通過したのは#51松田。後方に#71新庄、#99國川が続きます

決勝レースでは、まず2列目スタートの松田がトップへ。全日本でもスタートの名手として知られる加賀山は「あれ?ニュートラルに入った?って思ってたらスタートだった」とスタートミス! 1周目は松田→新庄→國川→谷津→山根→加賀山→行方といったオーダーで、加賀山の後方につける行方知基(レーシングチーム刀鍛冶)も、かつてヨシムラでST600を走っていた加賀山の後輩。でも、カタナ(こちらは油冷エンジン)でテイストを走ることに関しては、加賀山のセンパイ。ゼッケン34てのもスズキファン泣かせですw

画像: 次にトップに立ったのは#71新庄。後ろに#99國川、#51松田、#77加賀山が続きます

次にトップに立ったのは#71新庄。後ろに#99國川、#51松田、#77加賀山が続きます

レースはすぐに新庄がトップへ。スタートミスした加賀山も1台ずつを仕留めてポジションをアップさせ、ひたひたとトップグループへ。3周目か4周目には新庄→國川→加賀山のトップ3が4番手以下を引き離しつつレースをリード、って展開になりました。この3人についてきたのがRX松田でしたが、このあたりで、観客みんなが『やっぱユッキーきたか』と思い始めたはずです。逃げる新庄、追い詰める國川、スキ狙ってんな加賀山、意地見せてやるぜ松田、って感じのトップグループでしたね。

画像: レース中盤、松田がややポジションを下げて#71→#99→#77の順

レース中盤、松田がややポジションを下げて#71→#99→#77の順

それにしても、速いライダーはやぱりクリーン!ブレーキもハンドリングも加速も最新SSに劣るはずのマシンで、ヒヤヒヤすんだろうなぁ、と思っていたのに、すごく安心して見ていられるトップ争いでした。

画像: レース中盤、#99國川がトップへ すぐに#77加賀山も#71新庄をかわし…

レース中盤、#99國川がトップへ すぐに#77加賀山も#71新庄をかわし…

レース中盤には國川がトップへ。すると、すぐに加賀山も2番手に上がって、國川vs加賀山のバトルがスタート! どちらもこのレースがデビュー戦のマシンで、テイスト参戦に関しては國川の方が先輩。このふたりに新庄もくらいついて、3台ダンゴのレースが始まりました。
ストレートは國川が速いですね、そしてインフィールドは加賀山が速い。最終コーナーのツッコミ合戦は、先行する國川、ブレーキングで差す加賀山、でも國川も譲らないし、その外側から新庄が並びかける、っていうスゴいシーンがなんども見られました。
「インに鼻先入れてもクニ引かないし、新庄は並んでくるし。やっぱすげぇレースだな、ってレース中だってワクワクしてましたよ」と加賀山。ここから新庄がやや遅れて、國川vs加賀山の一騎打ちでレースは終盤へ向かうのです。

画像: レース終盤は#99國川と#77加賀山の一騎打ち けれど#71新庄と#51松田も離れません

レース終盤は#99國川と#77加賀山の一騎打ち けれど#71新庄と#51松田も離れません

後ろにビタづけの加賀山、抜かせない國川、しかも筑波はなかなか抜きどころのないサーキットですから、パッシングは1コーナーか、1~2ヘアピンか、バックストレートか――。攻め立てる加賀山、ガッチリ抜かせない國川の戦いがいよいよラスト2周! と思ったダンロップコーナーからアジアシケイン(旧CXコーナー)で國川のマシンが失速。そのままスローダウンして激闘は終わってしまいました。
「ミッショントラブルみたいでした。ブローしてオイルまき散らすわけにもいかないから」と國川はラスト1周を残してピットへ。こうして、テイスト初参戦で話題をさらった加賀山がハーキュリーズ初出場初優勝を飾ったレースとなりました。ちなみに加賀山、もう25年にもなるプロライダー生活で、筑波サーキット初優勝だって! 意外!

画像: 國川のトラブルもあって、ラストラップにトップに立った加賀山 いやぁ、このカタナ、速かった!

國川のトラブルもあって、ラストラップにトップに立った加賀山 いやぁ、このカタナ、速かった!

「スタートで出遅れてどうなることかと思って必死で追いかけましたよ! 新庄とクニが速いし、なかなか抜けない。少し走りも観察しながら、やっと新庄抜いてクニの後ろ、残り周回も考えながら抜きどころとか考えながらラスト1周に向かうところで、クニのマシンが失速しちゃったんです。あれがなかったら、勝てたかどうか……いや、勝てた、って言っとかないとね!」と加賀山ユッキー。
勝って当たり前、加賀山が出ることでさえ反則なのにGSX-R1000のエンジンって反則じゃん、って声ももちろんありましたが、そんなレースで勝ち切ることって、想像以上のプレッシャーでしょう。ちなみに、内情を知らない人に限って『どうせスズキのワークスエンジン、本社で組んでもらったマシンだろ』ってこと言うんですが、んなワケあるかい(笑)。
正真正銘、チームKAGAYAMAの神奈川のワークショップで手作りしたマシンで、メカニックの野口君がyoutube見ながらハイテンション鋼管を曲げて、溶接して組んだオリジナルフレームです。足まわりとかレーサーで使わないGSX-Rのノーマルパーツだったし、外装パーツはオークションとかでコツコツ買い集めてたしね。そんなワークスマシンあるかい(笑)。

画像: 新庄ZRXは1156ccだっけな、150psくらいを発揮しているそうです

新庄ZRXは1156ccだっけな、150psくらいを発揮しているそうです

画像: これもデビューレースのHONDA+SUZUKI=HONKIのイナズマ1200改 速かった、安定してた!

これもデビューレースのHONDA+SUZUKI=HONKIのイナズマ1200改 速かった、安定してた!

2位には新庄。ハーキュリーズ4連勝は果たせませんでしたが、直前までニュータイヤのよさを出せない出せない、って苦しみながら、スポーツ走行ではまた転んでるし、でも踏ん張った!
「本当は加賀山さんやっつけて『テイストってすげぇなぁ』って言わせたかった、僕がいちばん頑張らなきゃいけないのに…。加賀山さんに憧れてレース始めたみたいな僕が、加賀山さんとバトルできるなんて、ホントに幸せ! 加賀山さん、また出てほしい! 絶対やっつけるまでがんばります」と新庄。悔しいこと思い出させると、新庄すぐ泣いちゃうので(笑)今日はこれくらいにしといたろ。

3位に入った松田も、ニュータイヤに苦しみながら意地を見せてくれました。このRXに見えるフルチューンモンスターも、よう転んでるし(笑)、今回からグッとノーマルに近いカラーリングにしてきました。こう見えて、タンクシートがカパッと外れてインナータンクが現われる、どこがRXやねん、ていうお化けなんです。
「加賀山さんが来てね、また新しい敵が増えたか、って面白いし、全日本のトップライダーとこうやって走るなんてスゴいこと! また出てきたら返り討ちにしてやるw 次は打倒ユッキー目指してがんばります」と松田。

4位に谷津、5位に行方、6位に山根。いや、國川の最後トラブルは残念でしたけど、クリーンなレース、激しい戦い――ハーキュリーズは加賀山、國川参戦のおかげで完全に新時代に突入しましたね。秋の大会では、新しい敵が出現すると面白いよねー! 加賀山の同世代のライダーたちが「オレもオレも!」って名乗り出てくれたら面白い。
たとえばさ、チョー例えばの夢の話ですよ。藤原克昭が900Ninjaで、芳賀紀行がFZ750で、秋吉耕佑がCB750Fで、とか出てくれたらチョー面白いのにね! ちなみに伊藤真一はユッキーに連絡してきて「ユッキー面白いことやってんじゃん! オレも出たいなぁ」って言ってきてるみたいですよ。宮城仙台のマシンチューナーさん、伊藤さん出たがってますよ(笑)。

「面白いレースだった? でもね、こうやってオレが出て注目してもらえるのも、30年くらい前にテイストってレースを作って、盛り上げてきてくれた先輩ライダーたちのおかげだから。全日本のみんなも注目してくれてるし、テイストのみんなは『負けてられるか』って燃えてくれるし、そうなってレースが盛り上がったらホントに出た甲斐があったよ。うちのチームのメカにもさ、全日本の合間にマシン作ってもらって、テストもしてセットも仕上げてくれて、勝てたからそのお礼も少しできたかな。名だたるチューニングショップに仲間入りできたかな。うちのチーム、スゲーだろ、って感じだよ」と加賀山。
すでに会場では、ユッキーの優勝マシンを眺めまわして、このパーツどうなってるんですか、マフラー売ってないんですか、フレームとか依頼したら作ってもらえるんですか、って問い合わせが来てましたね。チームKAGAYAMAオリジナルのハーキュリーズレーサーとか、イエローコーンのイナズマコンプリートとか発売されちゃったりして……。そうなったら、またハーキュリーズに新しい展開が見えちゃうね。
テイストofツクバ、秋の大会「神楽月ステージ」は11/10-11日の開催。さて、また新しい展開が見られるかな? またひとつ、大会がグレードアップした、そんなSATSUKIステージでした!

画像: <テイストofツクバ> 役者が違う! 加賀山&國川!
~全日本ライダー参戦でテイストに化学変化~

■ハーキュリーズクラス正式結果
優勝 加賀山就臣 刀1000R   チームカガヤマ
2位 新庄雅浩  ZRX1200S   オートボーイ&松下ヨシナリ
3位 松田光市  GPZ1000RX  遊心&SDA& Webike
4位 谷津太郎  Z1000     タロウモータース&アマノジャク
5位 行方知基  GSX1100S   レーシングチーム刀鍛冶
6位 山根光宏  GPZ900R   パワービルダー

写真・文/中村浩史

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