テイストofツクバ(=TOT)といえば、年に2度行なわれている、絶版車たちのレース。前身の「テイストofフリーランス」誕生から数えると、もう30年近いGreatな草レースです。
主に、鉄フレーム、空冷エンジンの絶版車を対象にしたレースで、今では海外にもこのレースの存在が知られているほど。細かくレギュレーションやクラス分けがされていて、10クラス以上が走ります。ちなみに2018年春(SATSUKI-STAGEと呼ばれます。秋の大会はKAGURADUKI-STAGEね)は11クラスで、排気量や車両構成、年式で出られるクラスが違うのです――って、説明はいらないくらいメジャーな草レースですよね。

中の人、割とこまめにこのレースの取材(というか観戦・笑)に出かけていますが、2018 SATSUKI-STAGEに、大きな動きがあります。なんと、現役バリバリのJSBライダー、加賀山就臣(かがやまゆきお)が出場します! クラスは、国際ライセンスのライダーも参加できる「なんでもありマシン」のクラス、ハーキュリーズ。ここに、GSX-R1000のエンジンを使用したGSX1100Sルックのオリジナルマシン「チームカガヤマ KATANA1000R」で出場するのです。

画像: 筑波テスト時のKATANA1000R 白ボディ、溶接跡だらけでスゴミがあるねー!

筑波テスト時のKATANA1000R 白ボディ、溶接跡だらけでスゴミがあるねー!

加賀山といえば、スズキの顔でもある、日本を代表するレーシングライダー。スポットや代役参戦で世界グランプリGP500クラスにも出場したし、日本で初めてイギリススーパーバイク(=BSB)にフル参戦、ワールドスーパーバイク(=WSBK)にも参戦したし、ワイルドカードでMotoGPにも参戦しましたよね。
2011年には、WSBK参戦を終了して全日本ロードレース参戦を再開。自らのチーム「Team KAGAYAMA」を設立し、今や日本屈指の人気ライダーです。特に、ファンを巻き込んでの全日本ロードレース活性化を目指していて、今や日本全国のサーキットで、加賀山の大応援団がいるほど。自らのレース活動だけじゃなく、ミニバイクレースを開催したり、若手育成をしたり、現役ライダーでありながら、ロードレースの仕掛人としても知られていますね。横浜スタジアムで始球式やったこともあったし、横浜元町ショッピングストリートでは、毎年のようにJSB1000マシンで、白バイにまじって交通安全パレードやってます。プロ野球の公式戦で始球式やったロードレーサーなんて、加賀山の他に知りません。

画像: いつもなにか仕掛け、ロードレースをメジャーにしたいと考えている加賀山ユッキー。

いつもなにか仕掛け、ロードレースをメジャーにしたいと考えている加賀山ユッキー。

その加賀山のTOT電撃参戦! これまでも、現役ロードレーサーがTOTに参戦したことはありましたが、単発で終わったり、有力ショップが製作したマシンにライダーとして呼ばれて乗る、というスタイルだったり。しょうがないよね、現役の活動の方がメインなんだから、マシンつくる時間もないし、継続参戦のチャンスもなかなかなかったはず。
加賀山のTOT参戦は、そこが違います。マシンはチームオリジナルマシン、さらに時間の都合をつけて継続参戦したい――と言っているんです。

「もともと、このレースはすごい興味があったんです。古いバイク、走らないマシンをねじ伏せて速く走る、ってワクワクするじゃない? レースとか、マシンテストの時に、何回もTOTのマシンが走っているシーンを見る機会があったんだけど、すげぇな、よくあんなバイクであんなスピードで走れるな、って思ってたんです」と加賀山。

ちなみに、改造制限の激しい(=つまりほとんどノーマルの)モンスタークラス(1000ccまでの空冷エンジン+鉄フレーム+2本サス)のコースレコードは、Z1000R+川島英次の1分02秒032! 現在の全日本ロードレースのST600のレコードが0分57秒764ですから、バリバリのレーシングマシンの5秒落ちで、30年前の空冷エンジン車が走る、っていうこと。ブレーキングで車体をブルブルふるわせて、立ち上がりで車体をグニャグニャさせながら、直線でユラユラとまっすぐ走らないマシンで1分02秒って! これは、加賀山ほどの速い人だからわかる、実はものすごいタイムなんです。

いつか出てみたい――そう考えていた加賀山を実際の参戦に動かしたのは、チームカガヤマでJ-GP2チャンピオンを獲得した、浦本修充の海外挑戦でした。若手ライダー育成をチームの柱としている加賀山は、浦本がJ-GP2チャンピオンを獲得するや、海外レース参戦への道を探り、とうとう2018年にスペイン選手権チャレンジに送り出しました。

「ナオ(=浦本)がスペインに行くことになって、チームスタッフの手が少しだけ空くでしょ? チャーンス!って、TOT用のマシン製作を始めてもらったんです(笑)。俺が出るならスズキだし、カタナが大好きだったから、カタナで行こう!って。もちろん、きちんと走るマシンにしたいから、GSX-R1000のエンジンを使ってもらった。GSX-R1000にカタナの外装をかぶせたマシンなんか嫌だし、GSX-Rエンジンを積めるオリジナルフレームを作ろう、って。もちろん、フレーム作るのなんて初めてだし、フレーム組んだスタッフなんか、溶接するの初めてだって言うし(笑)。でも、なにごとも挑戦じゃない! そういう手作りマシンだけど、カッコいいやつ作ろうぜ、っていうのが目標だった。そう、俺がTOTに出るいちばん大事なところは『カッコいいこと』なんだよね」

画像: 筑波テスト2回目のKATANA1000R。本番車はカラーリングも少し変わってるみたいです

筑波テスト2回目のKATANA1000R。本番車はカラーリングも少し変わってるみたいです

かくして製作を開始したKATANA1000R。エンジンは16モデル以前のGSX-R1000用で、オリジナルフレームはハイテンション鋼を使用したハンドメイド。カタナのノーマルフレームのヘッドパイプ部分を残して、エンジン搭載角や位置をシミュレーションして搭載。フロントフォークやブレーキなどはGSX-R1000のノーマルパーツを使用し、リアサスはユニットプロリンク化している! マシン設計者の斉藤メカニックによると、パイプフレームにリアタイヤやサスの応力をかけないように考えると、ユニットプロリンクがいいんじゃない?という理由なのだそう。タイヤはチームカガヤマとずっと歩んできたダンロップ。
外観は、もちろんカタナイメージ。ただ、レーシングマシンはまずエンジンありき、だから、カタナのシルエットのノーマルタンクカバー、カタナカウルの全幅を広げ、シトカウルはレーシングマシン的。こ、これがカッコいいんだ!(笑)

「マシンは、シェイクダウンをもてぎでやりました。これがね…速いんですよ(笑)。もちろん、まっすぐ走るか?大丈夫か?なんてところから始まったけど、うちのメカはたいしたもんだな、って。初めてのオリジナルマシンで、こんなにちゃんと走って止まるか、って思いましたね。もちろん、そこからいろいろ煮詰めていって、一発のタイムだけじゃなくて、決勝レース分をきちんと走り切るマシンにしなくちゃいけない。この難しさは、普段のJSBマシン以上に難しいよね」

画像: この角度だとまんまカタナ! 加賀山自身も「西部警察の舘さんとかバリ伝のヒデヨシとか、キリンに出てきたりとか、カタナってずっと好きだったんだよね」といいます

この角度だとまんまカタナ! 加賀山自身も「西部警察の舘さんとかバリ伝のヒデヨシとか、キリンに出てきたりとか、カタナってずっと好きだったんだよね」といいます

画像: いつものJSBレーサーみたいにはいかないから、暴れるマシンをねじ伏せて走る加賀山

いつものJSBレーサーみたいにはいかないから、暴れるマシンをねじ伏せて走る加賀山

ツインリンクもてぎでのシェイクダウンに続いては、レースの舞台となる筑波サーキットでもテストした。現在のハーキュリーズクラスのレコードタイムは、ZRX1200S+新庄雅浩(加賀山の後輩です・笑)の0分58秒077だが、加賀山は筑波初走行の日に、このタイムにあと0秒8、まで迫ってみせた。ただし、このタイムも、加賀山によるとまだまだ勝負できるタイムじゃない、という。

「出る方の心情としても難しいものはあるんだよ? 現役のライダーが来て『なんだそんなタイムかよ』って言われるのはイヤだし、ブッチギリで勝って『なんだよ、加賀山なんか来るなよ、シラけるじゃんか』って言われるのもいや。もちろん、そんなに甘い世界じゃないのもわかってるから、TOTに出ているみんなに挑戦する気持ちなのね。それも、遊びでやってんでしょ、なんて言われたくないから、真剣に挑戦したい! やったら絶対面白いレースだってわかってるから、仲間に入れてよ、って感じかな。いままでTOTを盛り上げてきたセンパイたちをリスペクトする気持ちだって、当然あるしね」

画像: 筑波テスト2回目には、さらに仕様が変わっていました

筑波テスト2回目には、さらに仕様が変わっていました

画像: 「タイヤをどうグリップさせるか、それをどうレース距離持たせるかがカギ。それってJSBと同じ」と加賀山

「タイヤをどうグリップさせるか、それをどうレース距離持たせるかがカギ。それってJSBと同じ」と加賀山

加賀山がTOTに挑戦することで『ヨシ、おれも!』って全日本ライダーも出てくるかもしれない。そして逆に『オレ、全日本に挑戦してみよう』ってTOTレギュラーも出てくるかもしれない。加賀山はそこまで考えてないかもしれないけれど、加賀山の電撃TOT参戦が、全日本ロードレースとTOTという、ふたつのロードレースの懸け橋になるかもしれないんです。それもまた、新しい!

現在、TOTの中でも、特に加賀山が出るハーキュリーズは、メンバーも固定されて、トップ争いもいつものメンツ、という状態が数年間続いています。このところ数回勝っているのはZRX新庄だけれど、ニンジャ山根、RX松田が0分58秒台の持ちタイムがあるBIG3で、今回は全日本ロードレースでもおなじみの國川浩道がイエローコーンオリジナルマシンで、ガレージハラダの原田洋孝もZ1000ルックのZX-10Rで参戦します。TOTのハーキュリーズが、新時代に突入しそうな勢いなんです。

画像: 17年のSATSUKI-STAGE この時は#71新庄が優勝!

17年のSATSUKI-STAGE この時は#71新庄が優勝!

画像: #71新庄、#29山根、#51松田が現在のハーキュリーズのTOP3です

#71新庄、#29山根、#51松田が現在のハーキュリーズのTOP3です

画像: こちら側から900ニンジャ、ZRX、1000RXが並ぶハーキュリーズ。TOTの最速クラスです

こちら側から900ニンジャ、ZRX、1000RXが並ぶハーキュリーズ。TOTの最速クラスです

SATSUKI-STAGEは5月19~20日の2Days開催。土曜には、D.O.B.A.R.2/ZERO2クラス、ZERO4クラス、そしてメインクラスのひとつであるMONSTERクラスが開催され、日曜にD.O.B.A.R.1/D.O.B.A.R.3クラス、ZERO1クラス、MONSTER-EVOクラス、F-ZEROクラス、そして加賀山が出場するハーキュリーズクラスが、スーパーMONSTER-EVOクラスと混走で開催されます。
ちょっとコレは、見に行きたいレースです!

画像: バイク芸人の福ちゃんも「加賀山さん、テイストに出るんですって? 行きます行きます」 左はJ-TRIPスタンドの森さん J-TRIPみたいに当日はズラッと筑波に出店が並ぶのも楽しいんですよねー^^

バイク芸人の福ちゃんも「加賀山さん、テイストに出るんですって? 行きます行きます」 左はJ-TRIPスタンドの森さん J-TRIPみたいに当日はズラッと筑波に出店が並ぶのも楽しいんですよねー^^

チケットは前売り(2日間有効)が一般3200円/ペア5700円、当日券(当日のみ有効)が一般3000円。中高生以下は無料です。チケットは筑波サーキットのほか、チケぴ、ローチケ、e+、CNで購入可能です!

画像: ハーキュリーズの暫定エントリーリスト カタナがもう1台いるのは、元ヨシムラライダーの行方ですね

ハーキュリーズの暫定エントリーリスト カタナがもう1台いるのは、元ヨシムラライダーの行方ですね

This article is a sponsored article by
''.