この週末はMotoGP第4戦スペインGPが行われました。開幕戦のカタールGPをスタートに、アルゼンチン→アメリカと「フライアウェイ」があって、このスペインGPから、第14戦スペイン・アラゴンGPまで、戦いの舞台はヨーロッパを転戦します。そこからタイ→日本→オーストラリア→マレーシアと「フライアウェイ2」があって、最終戦スペイン・バレンシアGPへ。今年は全19戦ありますからね。

もともとヨーロッパで始まったグランプリだからか、このヘレスから「さぁ本番はじまっぞ!」って気合が入るチームやライダーは多いみたいです。MotoGP期になった2000年代初頭あたりも、ヨーロッパ転戦の前に日本GPがあったり、南アフリカ戦があったり――。日本でGPが開催されるようになった1987年以前は、ほとんどヨーロッパでGP、なんてシーズンばっかりでしたから、古くからの関係者も残る世界だけに、ヨーロッパこそ本番、って考えが残ってるんでしょう。

サテそのヘレスですが、久しぶりにカキンと晴れた週末になりました。金曜のウィークスタートから尻上がりに(っていうのかな?笑)気温も上がって、決勝日も午前中のMoto3が始まってぐんぐん気温上がっていきましたからね。ちなみに記録ではMoto3のレース時気温が22℃、Moto2が23℃、そしてMotoGPは25℃になっています。レース中に転倒が多かったのも、決勝中に気温が上がるレース独特のパターンですね。

MotoGPクラスは、カル・クラッチロウ(LCRホンダ)がポールポジションを獲得しました。第3戦アメリカズGPはマルク・マルケス(レプソルホンダ)、第2戦アルゼンチンはジャック・ミラー(プラマックドゥカティ)、そして開幕戦がヨハン・ザルコ(テック3ヤマハ)と、全戦ポールシッターが変わっています。「××レース連続ポールポジション!」ての、最近聞かなくなりましたね。それだけ接戦の2018年シーズンなんでしょう。ちなみにザルコは17年の日本GPから9戦連続のフロントロー! この記録はスゴい!

画像: ホールショットを奪った#26ペドロサをかわして#99ロレンソがレースをリード ロレンソ逃がしちゃダメ、とすぐに#93マルケスが2番手に浮上します

ホールショットを奪った#26ペドロサをかわして#99ロレンソがレースをリード ロレンソ逃がしちゃダメ、とすぐに#93マルケスが2番手に浮上します

スタートでは、フロントロー2番グリッドからダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)がホールショット! ペドロサ、ここヘレスは得意中の得意で、17年のレースもポールtoウィンでした。しかし、それをするするかわすようにすぐにトップに立ったのはホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)。
ロレンソはドゥカティ2年目のシーズンを迎え、本領発揮まだかまだか、そろそろドカ合ってないんじゃないの?契約切れるからヨソのチーム行く?なんて言われ始めていて、まさに正念場。開幕3戦もマシントラブルリタイヤ→15位→11位と、獲得総ポイントが、なんと「6」! しかし、ここヘレスは、ドゥカティ移籍初年度の17年にも開幕から11位→転倒リタイヤ→9位と来たあとに、初表彰台を獲得したサーキットで、16年以前のヤマハ時代も16年:2位、15年:優勝、14年:4位、13年:3位、12年:2位と表彰台の常連で、得意にしているんでしょうね。

画像: #99ロレンソはただひとりフロントにソフトタイヤを履いてのレース 序盤、もっと逃げたかった!

#99ロレンソはただひとりフロントにソフトタイヤを履いてのレース 序盤、もっと逃げたかった!

そのロレンソが逃げにかかるなか、まずペドロサが追い、3周目にはマルケスが2番手に浮上してロレンソをピタリとマークします。ザルコは珍しく序盤のペースが上がらず、ポールシッター、クラッチロウは8周目に転倒……もったいない、開幕戦4位→アルゼンチンで優勝、ときてランキングトップにいたのに、ここ2戦連続転倒だよぉ、クラッチロウ……。
8周目にはマルケスがトップに浮上。逃げにかかるマルケスを追走するロレンソとペドロサに、後方からアンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)が追い付いて2番手グループを形成します。ジリジリと逃げるマルケス、2番手の3台がダンゴで追いかける展開のなか、2番手ロレンソのペースが上がらず、3番手のドビツィオーゾは抜きたそう。ロレンソがフタしてマルケスが逃げる展開になりそうななか、ついにドビツィオーゾがロレンソにアタック! そこで事件が起こったのです。

画像: マルケスが逃げた後の2位争い #99ロレンソがフタしちゃってた感

マルケスが逃げた後の2位争い #99ロレンソがフタしちゃってた感

18周目、2番手以降を2秒引き離したマルケス。これ以上逃がしちゃならん、と2番手ロレンソのインを差すドビツィオーゾ。完全に前に出たけど、ドビツィオーゾは大きく膨らんで立ち上がる中、クロスラインで抜き返そうとロレンソがインにマシンを寄せると、そこには2番手と3番手がバトルしている間に差を詰めた、4番手ペドロサが! ロレンソ、ちょっと後方に気をやってなかったのかな、「しめた!イン入れた!」って勢いのペドロサにアウト側からガッチリ接触、いや衝突して、あわれペドロサはハイサイドで宙を舞い、ペドロサに押し出されたロレンソはアウト側に膨らんでいたドビツィオーゾのフロントをひっかけてドゥカティは同士討ち。2位争いを繰り広げていたホンダ1台、ドゥカティ2台のファクトリーマシンが一瞬で戦列を去ってしまったのです。

画像: motogp.comより インに寄りすぎたロレンソ(中央)、衝突をギリで避けようとリアがすべったペドロサ(右) このあとの動きは…↓

motogp.comより インに寄りすぎたロレンソ(中央)、衝突をギリで避けようとリアがすべったペドロサ(右) このあとの動きは…↓

画像: マシンが起きて、ペドロサぴょーん! この後ペドロサ、お尻から落ちました この時ロレンソは…↓

マシンが起きて、ペドロサぴょーん! この後ペドロサ、お尻から落ちました この時ロレンソは…↓

画像: ドビツィオーゾのフロントをひっかけて巻き込み転倒 ドビ、本当に気の毒気の毒

ドビツィオーゾのフロントをひっかけて巻き込み転倒 ドビ、本当に気の毒気の毒

「右のお尻がめっちゃ痛い。レースは、完全にいい状態ではなかったけど、いいペースで走れてたんです。ドビツィオーゾとロレンソと走っていて、タイヤを温存してレース後半に勝負しようと思ったんだけどね。あの瞬間は、ふたりとも大きく膨らんで、僕は通常のイン側のラインを通っていたんだけど、次の瞬間にはがっちりヒットされて、ハイサイドを食らっちゃったんです」とペドロサ。ペドロサはアルゼンチンでもザルコにヒットされてハイサイドで転んでいますからね、アンラッキーすぎる……。
この3台接触による転倒は……中の人の見解ですが、ロレンソがちょっと急にインに入ったかな、あれもう少し通常の立ち上がりラインだったらペドロサも当たらなかっただろうな、と。しかし、誰が悪いじゃなく、レーシングアクシデントの範疇です。しかし、ペドロサと衝突、ヨロヨロヨロッとアウトに弾き飛ばされたロレンソに当てられたドビツィオーゾの何たる不運よ!w ドビ、けっこうこういうとばっちり食らいがちですよね。

画像: #93マルケス、決して得意とは言えないヘレスで今シーズン2勝目ゲット!

#93マルケス、決して得意とは言えないヘレスで今シーズン2勝目ゲット!

画像: #5ザルコは序盤にペースが上げられず、上位4人を逃がしちゃいました

#5ザルコは序盤にペースが上げられず、上位4人を逃がしちゃいました

これでマルケスは、3台の転倒で2番手に上がったザルコを6秒以上引き離して悠々と独走し、ザルコの4秒くらい後方にいたアンドレア・イアンノーネ(スズキエクスター)、ダニロ・ペトルッチ(プラマックドゥカティ)、バレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハ)、そしてミラーの、ちょっと前まで6番手争いをしていた集団が、一気に表彰台争いとなって、ペトルッチがイアンノーネを差し、イアンノーネが差し返して3位でフィニッシュ! イアンノーネはこれで2戦連続表彰台、その前にアレックス・リンス(スズキエクスター)もアルゼンチンで表彰台に上がっているので、これでスズキGSX-RRは3レース連続表彰台を獲得! スズキが3戦連続表彰台を獲得するのは、07年にクリス・バーミューレン→ジョン・ホプキンス→バーミューレンが3レース連続で2位になり、翌08年にバーミューレン→バーミューレン→ロリス・カピロッシが連続3位になって以来です。スズキ、これは本格的に面白くなってきた!

マルケスは第3戦アメリカズGPに続いての2連勝。ザルコとイアンノーネはまさにタナボタの2~3位。けれど、きちんと棚の下にいないと、落ちてきたボタ餅は獲れないものですからね。シリーズランキングはこれで……いや、ランキングの話はまだ早いか^^

画像: スペインでチョーシに乗るマルケス(笑) アルゼンチン以来、ちょっと沈みがちだったけど、やっぱりマルケスはこうじゃなきゃね

スペインでチョーシに乗るマルケス(笑) アルゼンチン以来、ちょっと沈みがちだったけど、やっぱりマルケスはこうじゃなきゃね

「すごいたくさんのスペインのファンの前で勝てて最高です! ヘレスはあんまり得意じゃないサーキットだから、特別にうれしいね。この週末は大変だったけどうまく進められて、この週末、僕は決して最速のライダーじゃなかったけど、レースもうまくコントロールできたよ。カギになったのはリアタイヤのチョイスだね。ウォームアップが終わって、ミディアムで行こうと決めて、それが当たったんだ。1回、コースにダートがびっしり広がっていて「あ!グラベルの石、広がってる!」って気づいたけどもう遅くて、すごいスライドを食らっちゃった。アンヘル・ニエトの名前が冠されてから初優勝、っていうのもうれしいね!」とマルケス。ちなみにグラベルがコース上に広がっちゃってたのは、中盤に転んだトマス・ルティ(マークVDSホンダ)の仕業です。フラッグ出てなかったから危なかった!

画像: そろそろ上位進出は当たり前、初優勝期待、の#5ザルコ 次はホームグランプリだ!

そろそろ上位進出は当たり前、初優勝期待、の#5ザルコ 次はホームグランプリだ!

「たまにはラッキーがあっていいよ、今日がそのレースだね。フロントローからのスタートはいいチャンスだったけど、序盤、僕はペドロサより速かったけど、ペドロサはアクセラレーションが良かったみたいで、抜くことはできなかったね。レース中はずっと5番手を走っていて、マルケスは逃げてしまったけど、2位争いに追いついて表彰台争いに加わりたい、僕はそれができるといつも信じているんだけど、3人が転んでいるのが見えて、あと7周、この座を守り切るんだ、って走っていたんだ。2位/20ポイントなんて信じられないよ」とザルコ。トップグループにずっと食らいついている、いつもの走りは影を潜めていましたが、こういう時に結果が出る、って言うのがザルコのいう「ラッキー」なんですね。

画像: 2戦連続3位のイアンノーネは、ムラッ気がなくなってきた感じ コンスタントさを出せたら手強い存在

2戦連続3位のイアンノーネは、ムラッ気がなくなってきた感じ コンスタントさを出せたら手強い存在

「僕は2戦連続、スズキにとっては3戦連続の表彰台、バイクが良くなってきた証拠だよね、うれしい! うまく走れたし、あとはこれを続けるのが大事だよね。ただちょっと惜しかったのがタイヤチョイスで、ミディアムでコースインしたんだけれど、グリッドでハードに換えたんだよね。ハードはベストチョイスじゃなかったかもしれないなぁ。表彰台に上がれたのはラッキーだったけれど、路面温度が上がって、すごくスリッピーになったレースで、それをきちんと考えて走ったからの表彰台でもあるから、ラッキーなだけじゃないから!」とイアンノーネ。イアンノーネくらいスピードあるライダーがコンスタントに走り切れるようになるのは、スズキの大きな武器になりそうです。

第5戦フランスGPは、来週の全日本ロードレース第3戦「オートポリス2&4」、全日本モトクロス菅生大会、全日本トライアル大分大会というトリプルレースウィークをはさんで、その翌週の5月20日です。フランスは、言うまでもなくザルコのホーム。去年はロッシとビニャーレスのバチバチのトップ争いの果て、ロッシが転んでしまって2位に繰り上がって、ザルコがMotoGP初表彰台を獲得したんでした。ザルコ、10レース連続フロントローも期待です! そろそろ…ザルコ勝っちゃうかも!

画像: この3人の組み合わせもフレッシュ! イアンノーネ3位獲得で、スズキの来季のコンセッション(=エンジン使用基数とシーズン中のエンジン開発OKの優遇措置)はおしまいになります

この3人の組み合わせもフレッシュ! イアンノーネ3位獲得で、スズキの来季のコンセッション(=エンジン使用基数とシーズン中のエンジン開発OKの優遇措置)はおしまいになります

■MotoGP 第4戦 スペインGP結果
①マルク・マルケス ホンダ
②ヨハン・ザルコ        ヤマハ
③アンドレア・イアンノーネ   スズキ
④ダニロ・ペトルッチ      ドゥカティ
⑤バレンティーノ・ロッシ ヤマハ
⑥ジャック・ミラー       ドゥカティ
⑦マーベリック・ビニャーレス  ヤマハ
⑧アルバロ・バウティスタ ドゥカティ
⑨フランコ・モルビデリ ホンダ
⑩ミカ・カリオ KTM
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⑫中上貴晶          ホンダ

画像: 序盤の混雑で順位を上げられないレースが続いている#30タカ中上 みんながペース落ちてくる(=タイヤがタレてくる)レース終盤のペースがいいだけに、スタート5周ほどのペースとポジション争いがカギです

序盤の混雑で順位を上げられないレースが続いている#30タカ中上 みんながペース落ちてくる(=タイヤがタレてくる)レース終盤のペースがいいだけに、スタート5周ほどのペースとポジション争いがカギです 

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