ツーリングでの楽しさと、スーパースポーツばりの豪快さを併せ持つ

VFR800Fに乗るたびに「どんな役柄でもハマり役にしてしまうベテラン俳優」を想起する。RVF(RC45)時代は若手の二枚目スターとして注目を浴び、98年発売のVFRになってから落ち着いた脇役に転身。02年型からは重厚さと溌剌さのバランスが取れた実力派と評された。そうした経験を積み重ねて今の存在感がある、というイメージだ。

それは本来なら150馬力を優に超える実力を秘めたV4エンジンや、耐久レースでの優位性を狙って採用されたプロアームといったスポーツ指向の内容を備えながら、ツーリングシーンでの楽しさを追求したキャラクターと、主張し過ぎない端正なルックスによるものだろう。

画像: HONDA VFR800F ■価格:138万2400円

HONDA VFR800F ■価格:138万2400円

この17年型は1月に発売されたばかりだが、基本的にはユーロ4の排気ガス規制に合わせたマイナーチェンジ版。前モデルと見分けるポイントはメインフレームとフロントディスクブレーキのハブ部分、アクスルホルダーがブラックになっていることと、左カウル部に追加された12vのアクセサリーソケット、形状変更/小型化されたマフラーだ。

レーサーレプリカをルーツとしているだけに車体はコンパクト。特に正面から見ると約800㏄のV型4気筒エンジンを搭載しているとは思えないほどスリムで、カウルなどの外装パーツが入念にデザインされていることを実感する。ツアラーに要求されるウインドプロテクション性能と、スポーツライディングを妨げない空力特性を突き詰めた形だ。実際、高速道路クルージングでは上体はもちろん、足に当たる風も少ない。

この空力特性以上に疲労を抑えてくれるのがエンジンのキャラクターと車体セッティング。V型4気筒エンジンは常用回転域での回転フィーリングが実にスムーズで、パーシャル状態からのスロットルレスポンスが穏やか。6速・100㎞/h時は約4300回転だが、そこまで回っている気がしないのはこの特性と振動の少なさの相乗効果だろう。さらにスポーツツアラーらしい、しっとりとした動きの前後サスペンションも併せて、ライダーの体を無駄に揺することがない。ついでに言えば、V4エンジンは直4のような連続音ではなく、ややバラついた吸排気音を奏でるが、これが耳を適度に刺激して退屈しないことも長時間走行に合っている。

だが6800回転あたりでハイパーVテックが作動して4バルブに切り替わると、吸排気音が弾けた音質に変わり、タコメーターの針は上昇速度を増して1万2000回転まで一気に到達する。とにかく快適なツアラー的性格から、スーパースポーツモデルばりの豪快なキャラクターに変わるのだ。

何台ものオートバイを乗り継いできた大人のライダーならVFRの魅力が判るはず。大型ネイキッドやツアラーは楽だけど退屈、スーパースポーツは面白いけど長時間は辛い、というライダーなら必ず魅せられるだろう。

画像: ツーリングでの楽しさと、スーパースポーツばりの豪快さを併せ持つ

注目ポイント

画像: 寒い冬の時期だけでなく、雨の多い梅雨時期にも大活躍するグリップヒーター。5段階の温度調整が可能で、設定状況は液晶ディスプレイで確認できるという標準装備ならではの使いやすさ。

寒い冬の時期だけでなく、雨の多い梅雨時期にも大活躍するグリップヒーター。5段階の温度調整が可能で、設定状況は液晶ディスプレイで確認できるという標準装備ならではの使いやすさ。

画像: アルミダイキャストホイールは、スポークがリムに斜めに接する形状にすることで、直進時の路面振動をしなやかに受け止め、コーナリング時には高い剛性感を発揮する。ABSは標準装備。

アルミダイキャストホイールは、スポークがリムに斜めに接する形状にすることで、直進時の路面振動をしなやかに受け止め、コーナリング時には高い剛性感を発揮する。ABSは標準装備。

画像: インストルメントパネルはコンパクトでシンメトリーなデザイン。液晶ディスプレイにはギアポジションや燃費の表示など情報を集約しており、ツーリング時の利便性をよりいっそう高めている。

インストルメントパネルはコンパクトでシンメトリーなデザイン。液晶ディスプレイにはギアポジションや燃費の表示など情報を集約しており、ツーリング時の利便性をよりいっそう高めている。

画像: 前モデルからETC車載器は標準装備で、パッセンジャーシートの下にセット。高速道路の料金所でも慌てることなくスマートにツーリングが可能だ。さすが大人のスポーツバイク。

前モデルからETC車載器は標準装備で、パッセンジャーシートの下にセット。高速道路の料金所でも慌てることなくスマートにツーリングが可能だ。さすが大人のスポーツバイク。

ライディングポジション

シートは写真の標準状態で809㎜だが、簡単に20㎜ダウンに調整できる。足着きに不安がないなら本来のハンドリングをスポイルしない標準状態がおすすめ。ハンドル位置が別売のプレートで上方に13.5㎜、手前に6.5㎜移動できることもユーザーにはありがたい。
(ライダー身長176㎝ 体重60㎏)

画像: ライディングポジション

■SPEC
全長×全幅×全高 2140×750×1210㎜
ホイールベース 1460㎜
シート高 809/789(ローポジション)㎜
車両重量 243㎏
エンジン形式 水冷4ストロークDOHC4バルブV型4気筒
総排気量 781㏄
ボア×ストローク 72.0×48.0㎜
圧縮比 11.8:1
最高出力 107PS/10250rpm
最大トルク 7.9kg-m/8500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 21ℓ
キャスター角/トレール 25°30'/95㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 Φ310mmダブルディスク・Φ256mmディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17

(写真/島村栄二、南 孝幸)

  

最新モデルの試乗レポートは「オートバイ」に掲載中!

オートバイ 2017年 3月号 [雑誌]

モーターマガジン社 (2017-02-01)

This article is a sponsored article by
''.