この週末、MotoGP最終戦が終わりました。スペイン・バレンシアのリカルド・トルモサーキット。すでにmoto3、moto2、そしてMotoGPクラスともチャンピオンが決定していて、それでも、もんのスゴイお客さんが入っていたバレンシア。うーむ、最終戦とはいえ、すでにチャンピオンが決まってたらお客さんは少ない――がバレンシアだったのにね(笑)。
moto3はブラッド・ビンダーが、レース中に一時失速して22番手までドロップするも、そこから追い上げての大逆転勝利。Moto2はヨハン・ザルコがフランコ・モルビデッリの執拗な追撃を振り切って、追い上げてきたトーマス・ルティをも寄せ付けずに優勝。両クラスともチャンピオンの貫録を見せました。ビンダーもザルコも、最後まで全力で走って、ものすごいレースを見せてくれました。
MotoGPクラスは、スタートからトップに立ったホルヘ・ロレンソが、アンドレア・イアンノーネとバレンティーノ・ロッシ、それにマルク・マルケスがごちゃごちゃとポジション争いをしている間に逃げ切って、シーズン4勝目を挙げました。
実はこの3クラスとも、優勝したライダーは、いま所属しているチームでの最後のレース! ビンダーは来シーズンmoto2に、ザルコはMotoGPにステップアップし、ロレンソはヤマハファクトリーチームからドゥカティファクトリーチームに移籍するんです。
つまり、最終戦バレンシアの決勝日は、所属チームでの最後の日。MotoGPクラスは、月曜日をはさんで火曜から2日間、もうプレシーズンテストが始まりました。もちろん、各ライダーとも2017年から所属するチームでのテストで、事実上、火曜から2017年シーズンが開幕した、というわけです。日曜夕方までが2016年シーズン、火曜からは2017年シーズン――グランプリライダーって、ホント忙しいね。長いシーズンが終わってホッと一息つきたいだろうにね。
さて、その2017年シーズン、MotoGPクラスのプレシーズンテスト結果は下記の通り。なんと、2日間とも、新たにヤマハYZR-M1に乗る、日曜までスズキGSX-RRに乗っていた、マーベリック・ビニャーレスがトップタイムを獲りました!
Test DAY1
Test DAY2
もちろん、テストですから、タイムアタックしない、っていうチームやライダーはあるでしょう。ニューマシンや新しい品番のタイヤテストがメインだよ、なんて声もあるでしょう。が、トップタイムはトップタイム! MotoGPクラス3年目のほぼルーキーが、新しい環境でものすごいインパクトを残しましたね! それも、初日61周、2日目に76周も走り込んでのタイムで、決して一発だけのタイムアタックの結果ではなく、ずっとハイペースで周回し続け、その結果のトップタイムでした! いやぁ、スゴかった! 長い時間のテストをリアルタイムで見終わった後には、ほおおおおお、ってタメ息が漏れちゃいましたからね。
ビニャーレスのタイムは、初日は、チームメイトのロッシ、2日目はワールドチャンピオンのマルケスを抑えてのトップタイム! これがそのまま「2017年のチャンピオン候補に躍り出たぁ!」なんて結果につながるものではありませんが、乗り換え初日でアッという間に今まで乗ったこともないマシンに乗りこなした、その順応性の高さは事実です。ちなみにビニャーレスのバレンシアGPでのタイムは、予選が1分30秒276、決勝中のベストが1分31秒313――。コンディションも違う、使ったタイヤも違うでしょうが、2シーズン乗り、慣れ親しんだGSX-RRのタイムに迫り、破るというのは、やっぱりスゴいことだと思うのです。やりよるなぁ、ビニャーレス!って覚えときましょう。
このテストで注目されたもう一人のライダーは、ロレンソです。9年間にわたって在籍したヤマハファクトリーから、ドゥカティファクトリーへの移籍。これは、2011年に同じくドゥカティに移籍したロッシと同じルートですが、乗ったライダーがみんな不幸になる「赤い電気椅子」とまで言われたあの頃とは違って、今やドゥカティは毎レースのように優勝候補の一角に数えられる強豪チーム。2016年もWアンドレアが1勝ずつ挙げましたしね。
ピット前に陣取るカメラマンの数はナンバー1だった(でしょう)ロレンソは、初日60周、2日目66周を走り込んで、初日3番手、2日目8番手という結果。ただロレンソこそ、テストはタイムを出すものではなく問題点をあぶりだすものだ、と言うタイプのライダーですから、この2日間では問題点をどんどんピックアップしたことでしょう。冬の間に、ファクトリーにそこを修正させて、年明けのセパン~フィリップアイランドテストで確認して、開幕戦に間に合えばいいわけですからね。そのための作業の2日間だったはずです。
スズキファクトリーチームは、2人のライダーとも新しいライダーとなります。ひとりはドゥカティファクトリーから移籍してくるイアンノーネ、もうひとりはmoto2からステップアップしてくるアレックス・リンス。初日はイアンノーネが7番手、リンスが21番手という滑り出しでしたが、2日目のテスト開始早々、30分くらいでしたか、まずリンスが、そしてすぐにイアンノーネが同じコーナーで転倒を喫し、マシンが大破。リンスは負傷して病院へ搬送され、イアンノーネはテストを続行して4番手タイムまでポジションを上げてきました。イアンノーネ、さすがにガッツありますね。テスト用に新調したツナギがぼろぼろになって、急きょ用意したような白ツナギでの走行で、精力的に走り込みましたね。2016年は、相方ドビツィオーゾに追突し、転倒もたびたび、しまいにはケガして3レースを欠場するという暴れっぷりを見せたイアンノーネですが、新たに手にしたGSX-RRをぶんぶん振り回し、好タイムを連発しました。ちょっと期待できそうな走りでした。リンスは椎骨を損傷したようですが、大事には至らなかったようです。早くけがを治してトレーニングしなくちゃね。
ホンダではマルケス、ダニ・ペドロサ、ヤマハではロッシ、そしてドゥカティではドビツィオーゾが現チーム継続となって、2016年/2017年マシンの比較テストを行なっていたようです。とはいえ、2017年からは禁止されるはずのウィングレットがまだついていたり、ハッキリとは2017年仕様にはなり切っていないはずで、今回の2日間テストの結果をもって、テスト禁止期間の2ヵ月を経て、2月のセパンテストから本格的な2017年モデルが姿をあらわすでしょうね。しばらくMotoGPネタに飢えちゃうね(笑)。ここのページでも、RacingAUTOBYのFacebookでも、ニュースを上げていきますので、お楽しみにお待ちくださいね。