この週末は、岡山国際サーキットで全日本ロードレース第8戦が行われました。今シーズンの全日本ロードは、熊本大震災の影響で大分県・オートポリスサーキットが営業を停止していることもあって、6月と9月のオートポリス大会が中止となりました。その分、各クラスともレース数が減っちゃうんですが、他のサーキットでもすでに開催スケジュールが決定していることもあって、カンタンにレース数を増やすことはできない中、岡山国際はスケジュールを変更し、せめてJSB1000クラスだけでも、と土曜に決勝レースを追加してくれて、岡山国際は2レース制となりました。このスケジュール変更で、ドラマが起こったんですねぇ。

画像: もはや負けるシーンが想像つかない…絶対王者・中須賀! 2レースともポールポジション!

もはや負けるシーンが想像つかない…絶対王者・中須賀! 2レースともポールポジション!

中須賀、フリーと予選でもトップタイム連発!

JSBクラスは土曜に公式予選と決勝レース1という変則スケジュール。金曜の事前走行では、午前に雨が降り、そこでは高橋巧(ハルクプロホンダ)がトップタイム! ドライコンディションとなった午後の走行では、11連勝を狙う中須賀克行(ヤマハファクトリーRT)がトップタイムをマークし、土曜の予選へ。ノックアウト方式の予選となった土曜の走行でも、やはり中須賀がQ1/Q2ともトップタイムをマークして、これで2レース分のポールポジションを獲得したのです。

土曜午後に行なわれたレース1では、まさしく中須賀がチャンピオンの走りを披露。中須賀がホールショットから早々とスパートすると、1周目からもう後続を引き離しにかかります。この走り出しからの速さは、もう中須賀は10月の日本GPを視野に入れて走っていますね。ひとレースずつテーマを決めて走っている中須賀は、今回のレースを、連勝記録を伸ばすのはもちろん、ポールポジションでも自己ベストでもなく、マルク・マルケスと、そしてホルヘ・ロレンソやバレンティーノ・ロッシと走ることを想定して走っていたはずです。

中須賀を追う野左根航汰(ヤマルーブRT)、津田拓也(ヨシムラスズキ)、加賀山就臣(チームカガヤマ)、そして高橋が2番手争いを繰り広げる中、レース中盤に渡辺一樹(チームグリーン)もここに追いついてきて、津田、野左根、渡辺が2番手争いを展開。結局、中須賀は後続を10秒以上離しての、まさにブッチギリで優勝を決め、これで昨年の第2戦・オートポリス大会からの連勝を11に伸ばした、そんなレースとなりました。

画像: 中須賀を追うのは津田と渡辺。ただし、中須賀ははるか先です。津田のGSX-Rのナックルガード部分に注目!空力が良くなる、と評判になったアルミテープが貼られていますね。

中須賀を追うのは津田と渡辺。ただし、中須賀ははるか先です。津田のGSX-Rのナックルガード部分に注目!空力が良くなる、と評判になったアルミテープが貼られていますね。

画像: この3人が今の日本のトップ3でしょう。ただし、中須賀はひとつ格上ですね

この3人が今の日本のトップ3でしょう。ただし、中須賀はひとつ格上ですね

画像: 勝ちすぎる悩みもあります。マシンが速いだけじゃない、オレが速いんだ!ってことです

勝ちすぎる悩みもあります。マシンが速いだけじゃない、オレが速いんだ!ってことです

日曜午後から岡山に雨が!

ここまで強いと、中須賀の連勝がストップするには、どんなシーンがあるだろうなぁ、とよく考えます。転倒? いや、中須賀の転倒ってフリーでも予選でもほとんど聞きません。セッティングを外す? いや、今のYZF-R1は、すでにセッティングどうこうというより、ベースセッティングが決まっていて、レースごとにそう大きな変更なしに走っています。強いバイクって、そんなもんです。雨? いや、中須賀は雨でも速い! こうなると、誰か中須賀を倒さないと! いや、逆にどこまで連勝記録が伸びるか、そんな感情が入り混じっていたっていうのが正直な感想です。

しかし、その瞬間がついに訪れてしまいました。日曜の岡山国際は朝から曇り空で、お昼すぎにはついに雨が落ちてきて、J-GP2あたりからスケジュールも混乱するほどの雨となってしまったのです。
それでも中須賀はあわてず騒がず――。そんな余裕さえ垣間見えました。JSBクラスのレース2は、サイティングラップで雨による赤旗が提示されて、レースは仕切り直し。再びダミーグリッドに着きなおしてからのウォーミングアップランでは、なんと加賀山や酒井大作(Motorad39)が転倒! 加賀山も酒井も、キズついたマシンでなんとかグリッドにはつけたものの、この時から何かが起こりそうなムードにはなって行ったのです。

画像: JSB1000、スタートの瞬間。加賀山のGSX-Rをよーく見てください、スクリーンが割れてます……

JSB1000、スタートの瞬間。加賀山のGSX-Rをよーく見てください、スクリーンが割れてます……

レーススタートと同時に飛び出したのは、やはり中須賀。ここから2位以下を引き離し……とはならなくて、オープニングラップで高橋、野左根が中須賀をかわすシーンが見られます。中須賀、ほんの少しのオーバーラン。中須賀のミスらしいミスを見たの、いったいいつ以来でしょうか。8耐の決勝中に、たしかヘアピンでスーッとオーバーランしかけたことはあったけどね。

高橋、中須賀、野左根の順で2周目に入る中、その後方につけたのが山口辰也(TOHOレーシング)です。山口のチームは東広島を本拠として、ここ岡山国際がホームコース。岡山は路面がスリッピーなことでも知られていて、そんな厳しい、難しいコンディションだからこそ、山口はオープニングからいい位置につけていたんでしょう。

画像: トップに立っても引き離せない#634高橋 そこへ#104山口がひたひたと迫ります

トップに立っても引き離せない#634高橋 そこへ#104山口がひたひたと迫ります

レース序盤は高橋がリード。2番手の中須賀との差を広げて、おっとここから独走に持ち込むか、それとも中須賀が差を詰めるか――と思われたものの、その後に野左根と山口が中須賀をかわし、山口が単独2番手に浮上。野左根はここで転倒! やっぱり雨は、ベテランが強い、って定説を思い出しますね。雨では人の倍速い秋吉は転んじゃったけど。

レース中盤には、高橋よりも山口のペースが明らかに速くて、折り返し地点くらいでついに高橋をパス! 高橋は、今シーズンここまで表彰台にすら上がっていませんからね、少しはセッティングがまとまりつつあるとはいえ、そこで雨では、なかなかキビしいでしょう。

トップに立った山口は、まさに異次元の速さを見せて、2番手の高橋以降を引き離しにかかります。山口の走り、安定感があって、きれいで速い。雨でも安心して見ていられるほどで、そのまま後続を30秒以上引き離してブッチギリの優勝!

画像: 若手時代から、山口の雨の速さは定評がありましたね 安心して見ていられる安定感、丁寧さです

若手時代から、山口の雨の速さは定評がありましたね 安心して見ていられる安定感、丁寧さです

画像: ウィニングランで、この笑顔 地元でのレースだっただけに応援も多かったもんね

ウィニングランで、この笑顔 地元でのレースだっただけに応援も多かったもんね

画像: チーム員と、JSBで初めてのNo.1記念撮影 プライベーターが大きな仕事を成し遂げました

チーム員と、JSBで初めてのNo.1記念撮影 プライベーターが大きな仕事を成し遂げました 

画像: 表彰台ではこの表情。「いままでずっと応援してくれた広島のみんなに優勝で恩返しできました」(山口)

表彰台ではこの表情。「いままでずっと応援してくれた広島のみんなに優勝で恩返しできました」(山口)

最強王者中須賀、ついに敗れる!

山口の優勝は2009年の第3戦オートポリス以来、7年ぶり。あの頃はハルクで走ってたね、辰っつぁん。その後、2010年にモリワキでST600チャンピオンを獲って、翌11年に自らのチームを結成。それが、東広島に本拠地を置くTOHOレーシングで、ST600クラスでV2を達成。12年からJSBに復活したんだけれど、自分のチームを作ってからは、走るだけじゃなく、全国の幼稚園や小学校をまわって安全運転の講習会を開いたり、トレーニングにモトクロスやトライアルのメニューを増やしたり、辰っつぁんの新しいレース活動が始まったのがこの頃でした。

レースは、2位に高橋、3位に中須賀。中須賀の連勝は11でストップしましたが、本人はもちろん悔しいだろうけれど(ゴール後、なぜだか泣けちゃったそうです)すこしホッとしているのかもしれないね。これでまた、ノープレッシャーでレースできるぞ、と。

これで全日本ロードレースは、次戦がいよいよ最終戦! とはいえ、開催日程は11/5~6なので、1か月半も空いちゃうんですけどね……。
他クラスは、また改めてレポートします。

画像: 表情でアテレコしてみます。「よーし、調子戻って来たぞぉ」(高橋)「やっと勝てたぁ!」(山口)「やー、負けちゃったなー…(と放心)」(中須賀)

表情でアテレコしてみます。「よーし、調子戻って来たぞぉ」(高橋)「やっと勝てたぁ!」(山口)「やー、負けちゃったなー…(と放心)」(中須賀)

画像: 表彰台の一番高いところでのシャンパンファイトが格別だったろうなぁ^^

表彰台の一番高いところでのシャンパンファイトが格別だったろうなぁ^^

写真/赤松 孝

 

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