エンデューロライダーの憧れ、ISDE(インターナショナル・シックスデイズ・エンデューロ)。6日間かけて世界各国から集まった腕に自信のあるライダーが、その優位を競う。中でもワールドトロフィークラスは、国代表チーム同士が国の威信をかけて競うものだ。日本はエンデューロ競技に後れを取ってきた経緯があるが、多くの有志によってワールドトロフィーチームを選出できるまでに成長してきた。

画像: チームロゴは、今をときめくクリエイター、CARRY DESIGN OFFICEが担当

チームロゴは、今をときめくクリエイター、CARRY DESIGN OFFICEが担当

2018年のワールドトロフィーチームは「ZENRYOKU JAPAN」

それまで、個人がISDEに参戦していたことはあったものの、2006年にはじめてワールドトロフィーチームを選出して、国代表として参戦したことは、日本のエンデューロにおける大きな転換点だ。「日本はなぜ、4大メーカーがあるのにISDEに国代表を出さないのか」と、散々言われてきたなかで、ようやくその一歩を踏み出した。

そもそも、日本にはエンデューロのカルチャーは根付いていなかった。4メーカーがあるものの、ISDEの歴史を紐解くと、日本車が活躍したことは無い。今、「昔のエンデューロを復刻しよう」という試みで、ヴィンテージマシン専用のレースがISDEに併存する形でおこなわれているが、その90%以上が欧州のバイクメーカー。日本は、西山俊樹氏らのご尽力はあったものの、ようやくその「エンデューロ」のカルチャーに足を踏み入れた新参者に過ぎない。

2017年は、実に7年ぶりに日本からワールドトロフィーチームが復活した。MFJとは別団体の全日本エンデューロ選手権をプロモーションするJEC PRO主体となって、チームを派遣するという活動が始まったのだ。残念ながら、2018年のISDEは全日本エンデューロの最終戦1週間前となってしまったことから、2018年の派遣は見送ることになった。しかしながら、物理的に2018年のISDEに出れないわけでは無い、だったら代表として自費でも参戦したいと集まったのが、今回のメンバーだ。

画像1: 2018年のワールドトロフィーチームは「ZENRYOKU JAPAN」

太田幸仁…モトクロスIA出身、兄の真成も2010年にワールドトロフィーへ参加。膠原病を患い、一時エンデューロに参戦をしていなかったが、バイクに乗ることをポジティブに捉え直して、ワールドトロフィー参戦を目標にしてきた。

画像2: 2018年のワールドトロフィーチームは「ZENRYOKU JAPAN」

友山雅人…モトクロスIA出身。エンデューロに転向してから、スピードを活かして成績を欲しいがママにしてきたライダー。現在はフル参戦していないが、スピードに衰えは見えず、目下課題は体力。

画像3: 2018年のワールドトロフィーチームは「ZENRYOKU JAPAN」

荒川一佳…モトクロスIA出身。どちらかというとエンデューロ向きな、丁寧なライダー。今4名のなかでは、最年長。

画像4: 2018年のワールドトロフィーチームは「ZENRYOKU JAPAN」

後藤敏文…2016年にエンデューロIA昇格。数年で一気に階段を駆け上ってきた、珍しいキャリアを持つ。

昨年のチームには、日本のエンデューロを牽引してきた鈴木健二がリーダーであることを讃え、ケンジ・ジャパンとサブキャッチが付けられた。今年は、成績としては低いが、その全力の姿勢を讃え、ZENRYOKU JAPANと言わせていただきたい。

監督、太田真成に聞く

これまで、日本のワールドトロフィーチームは平地監督らに支えられてきた側面があり、ベテランによって運営されてきた側面があるが、今回一斉に若返りを計っている。その監督にあたるのが、太田幸仁の兄である、太田真成。真成は、エンデューロ世界選手権をスポット参戦したこともあり、また兄弟共に小さな頃からアチェルビス社代表のフランコと友人関係にある。二人は、10年前のISDEチリにおいて、メインスポンサーだったアチェルビス社のヘルパーに参加した経緯も。情報を得やすく、動きにも慣れていると言えるだろう。

画像: 監督、太田真成に聞く

稲垣:まず、監督を任命された経緯を教えて下さい。

真成:幸仁が代表に選ばれたというのもあったし、新しい体制を作るにあたっては、パイオニアである僕がやったほうがいいと思い立候補しました。

友達のイヴァン・セルバンテスがスペインの代表選手の監督に就任したというのにも影響されていますね。

新しいチームジャパンを作るにあたって今までのから、ここのところ結果がでていなかったから、新しい体制に変えていかなければいけないと思っています。世界での経験はあると自分でも思っています。友達のイヴァンから情報をもらうとか、イタリアのチームから情報をもらうということは可能ですしね。

稲垣:ワールドトロフィーの監督というのは何をするものだと認識していますか?

真成:チームをまとめるのが第一ですよね。あとはチリでの円滑なサポート。まだ漠然としていて、しっかりとしたプランはできていません。しっかり下調べして、ホテルの近くに何があるのかも僕が調べたりね。少人数なので、ライダーが自分の力を精いっぱい出し切れるようにするには、監督が動く必要があると思います。

レース自体は個人戦なので、個人でゴールドを目指すというのももちろん大切だと思います。だけど、今の日本の現状とレベルで考えると、ゴールドを目標にするって恥ずかしくて言えないところも大きくある。それだったら全員が全員同じ目標を持って、まとまって戦うべきです。

各国のライダーも、まとまっているじゃないですか、アメリカはちゃんとチームで動いているし、イタリア、スペインなどなど、まとまっているチームの方が結果も出している。チームで動くこと、チームとして目指すこと、を突き詰めた方が日本のためになるかなと。

4人まとまった成績を出してゴールすることで、国としてのリザルトがしっかり残る。まずはそこをめざしたいと思っています。

チーム個人の仕上がり

稲垣:メンバーの現状についてはどう認識していますか?

真成:一番課題が残りそうなのは後藤さんです。IAになってまだ2年目ですし、キャリアも浅い。走りを見ても不安が残ります(※編注:インタビューは5月4日、ISDEチームの合宿現地にておこなった)。後藤さんにはまだここのコースは近いので何回も通ってもらって、僕がアドバイスできることは僕と親父と弟でアドバイスして、本番までにある程度仕上げていきたいなと思っています。

他の3名は、ほんのちょっとのライでイングや意識の変更で、大丈夫だと思っています。特に、幸仁1人だけは経験者なので、走破力を含めてそれなりには行けると思うんですけど、普段乗っているバイクとは違う300ccに乗ります。ハンディではないですが、300ccに乗ることのネガはあるはず。まず初日を走り終えて、どう攻めて行けばいいか。本人も初日を走ればわかると思う。僕からはそれまでゴールドを目指せとかは言わないようにしていますね。


レース中のコミュニケーション能力

稲垣:不安に思っていることはありますか?

真成:僕らがISDEに出た2013年の時から、30分の遅着でDNFになってしまうルールでした。その時も、苦しい区間、みんながみんな遅着するような区間がありました。僕らは、情報を瞬時に察知して自分と同じ組の外国人のライダーともコミュニケーションをとって、ここからはやばいぞという話しをしていましたよ。

他のライダーにも言っているんですけど一応周りのライダーとコミュニケーションを出来るだけとる方がいいよとアドバイスをしています。挨拶程度の英語と、今度はスペイン語とイタリア語と。フランス人に対しては英語で押すしかないかな…。

やっぱりコミュニケーションをとるのは大事です。ライダーどうしてあそこきつかったね、という話が出来ると自分も楽しくなりますしね。疲れたとか、ハードだったとか、そんなレベルでいいので。

チームのWEBできました

2017年より、新しく立ち上げたワールドトロフィーのホームページがリニューアル。彼らの活動や、報告、PRなどはここで配信される予定。また、昨年同様にデイリーレポートの展開も。

Off1.jpでも、複数回にわたって日本チームの記事をアップしていくつもり。こまめにチェックのほどを!

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