この週末は鈴鹿サーキットで「NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」が行われております。これは、2輪と4輪のレースをいっぺんにみられる「2&4」方式、増えてきましたね。ライダーにとっては、4輪の走行後は路面コンディションが良くなくて、そんなに歓迎してる感じはないんですが(フォーミュラのクルマのボディ底にウッドチップがあってそれが路面に残っちゃうらしいです。あとは走行ラインが違うから、4輪のライン、つまり2輪のラインじゃないところにタイヤラバーが乗るんですね)お客さんはいいよね。チケット1枚でどっちも見られるんだもん。主催者側にとっても、お客さんがたくさん入るレース、ぜったいいいよね。

開催はバイクがJSB1000のみで、クルマはスーパーフォーミュラ(=SF)とフォーミュラ3(F3)。JSBは、開幕戦もてぎ大会に引き続き、この鈴鹿2&4も2レース制で行われますから、きょう土曜はJSBの公式予選と決勝レース1が行われました。SFとF3は公式予選のみ、ね。
JSBの公式予選。ここで事件が起こりました! きょう土曜は全国的にお天気のいい日で、ここ鈴鹿も初夏を思わせる、日差しの強いお天気。こういう日、タイム出やすいんです。気温はそこそこで風がひんやりすれば、エンジンは冷えてパワーが出るし、路面温度は上がってるからグリップする。秋口とかこの時期のスプリントレースが、いちばんタイム出やすいっていいますし。
そこで、なんと中須賀克行(ヤマハファクトリーRT)が、開始早々2分04秒876をマークします! 文句なしコースレコード! 計測2周目だから、フレッシュタイヤで早めに行くか、ってな感じでしょうか。近い位置にコースインしていた高橋巧(Team HRC)が「コースイン早々なのに中須賀さん、ものすごく速かった」と証言したほどでした。
JSBマシンが、とうとう鈴鹿で4秒に入りました! このスゴさをどうやって説明するか、考えてたんですが、以下のこと、思いつきましたw

画像: 得意の鈴鹿+絶好のコンディション+絶好調=前人未到の2分04秒台!

得意の鈴鹿+絶好のコンディション+絶好調=前人未到の2分04秒台!

① 鈴鹿を走った2輪の最速ラップは、2003年のMotoGPマシン、ベストラップは2分04秒604 ライダーはロリス・カピロッシ、マシンはドゥカティ・デスモセディチGP3です。
② その年の決勝レースベストラップは2分04秒970 ライダーはバレンティーノ・ロッシ、マシンはRC211Vです。
③ 従来のコースレコードは2分05秒192 これは2015年10月の全日本最終戦で、ライダーは中須賀克行、マシンはYZF-R1です。
④ 最近のトピックスとしては、ポル・エスパルガロが、2015年の鈴鹿8耐の予選で2分06秒000をマークしました。真夏のコンディションで、耐久仕様のちょっと重いマシン。

メディアセンターで何人かのジャーナリスト仲間と話したんですが
「100mで10秒切る」「野球で4割打つかホームラン60本」「野球で50盗塁する」「フィギュアスケート5回転」「サスケでオールクリア」「ゴルフのスコアが50打」
サスケ以外は参考になるかもしれません(笑)。それだけ中須賀はドエライことをやってのけたのです。特に17年からはレース専用といわれる16.5インチホイールが禁止され、17インチに統一されたっていうのにこのタイム…。正直、このタイム出されたら、ほかのライダーはちょっと引いちゃうんじゃなかろうか……そこが心配になるほどです。

画像: 予選セッション中、タイム出しを終えた中須賀は、後方にいた高橋を前に出して背後をピタリとマーク 走りを見られると思った高橋は100%では走らなかったそう 予選からバチバチやってるんですねぇ

予選セッション中、タイム出しを終えた中須賀は、後方にいた高橋を前に出して背後をピタリとマーク 走りを見られると思った高橋は100%では走らなかったそう 予選からバチバチやってるんですねぇ

これがレース1のスターティンググリッドとなり、レース2のグリッドは、各ライダー2番目のタイムによって決まります。ちなみに2番目のタイムも中須賀がトップタイムで、2レース連続のポールポジションをゲッツ! 開幕戦の2レースも中須賀がトップタイムですから、これで中須賀は2戦4レース連続のポールポジション、ということになります。いやいや、早くも中須賀無双ですな。ここに誰がストップをかけるのか、注目です!

■レース1予選順位
①中須賀克行(ヤマハファクトリーRT)2分04秒876 ②高橋巧(Team HRC) +0.589s ③津田拓也(ヨシムラスズキMOTUL)+1.113s ④渡辺一馬(カワサキTeamGREEN)+1.312s ⑤野左根航汰(ヤマハファクトリーRT)+1.345s ⑥渡辺一樹(ヨシムラスズキMOTUL)+1.893 ⑦秋吉耕佑(auテルルMotoUP)+1.939s ⑧高橋裕紀(モリワキMOTUL)+2.360 ⑨清成龍一(モリワキMOTUL)+2.532 ⑩加賀山就臣(チームカガヤマ)+2.580

■レース2予選順位
①中須賀克行 2分05秒102 ②高橋巧 +0.594s ③野左根航汰 +1.296s ④渡辺一馬 +1.445s ⑤津田拓也 +1.560s ⑥渡辺一樹 +1.771s ⑦秋吉耕佑 +1.998 ⑧高橋裕紀 +2.529s ⑨前田恵助(ヤマルーブRT)+2.909s ⑩清成龍一 +2.988s

画像: ホールショットは高橋 けれどS字の進入で渡辺、中須賀が前に出ます

ホールショットは高橋 けれどS字の進入で渡辺、中須賀が前に出ます

画像: バラけてきたトップグループ 高橋裕紀が徐々に遅れ始めているのがわかりますね

バラけてきたトップグループ 高橋裕紀が徐々に遅れ始めているのがわかりますね

好天のまま、汗ばむ陽気で行われた決勝レース。ホールショットは2番グリッドの高橋巧が獲りますが、折り重なるように前に出た渡辺一馬がオープニングラップを制し、中須賀は2番手で1周目を終了。集団がバラけてくると、トップグループに残ったのは渡辺一馬-中須賀-高橋巧-野左根-渡辺一樹-高橋裕紀、というオーダー。この中から上位3人が抜け出しかけますが、野佐根-渡辺一樹もそうはさせじと、5台の縦長なトップグループが出来上がります。高橋裕紀は徐々に遅れ始めてしまいます。
レースはずっと、渡辺一馬―中須賀-高橋巧-野左根-渡辺一樹の順。途中、渡辺…いや一樹の方が遅れる時間帯もありましたが、6位以下を大きく引き離しての、5台のトップグループでした。あぁもう、高橋と渡辺が2人ずついて紛らわしい!w

画像: レース中盤くらいまで、この順位でこんな間隔の神経戦 この後くらいに、渡辺一樹もここに加わります

レース中盤くらいまで、この順位でこんな間隔の神経戦 この後くらいに、渡辺一樹もここに加わります

画像: 一馬は逃げまくるしかないですからね 中須賀はこのころ、冷静にペースを見ていました

一馬は逃げまくるしかないですからね 中須賀はこのころ、冷静にペースを見ていました

トップを走る一馬は「いつ中須賀が仕掛けてくるか」と思っての周回だったでしょう。それとタイヤの消耗ね。思えば一馬は、昨年は開幕戦だった「鈴鹿2&4」でも序盤トップを走っていました。課題はやはり、そのスピードをいかにレース周回数ずっとキープさせるか、です。
ラスト5周、いよいよ中須賀が動きます。一馬の後ろにジリジリと張り付いたと思ったら、デグナーふたつめを立ち上がった短い直線でイッキに一馬をパス。うわ、ここで抜くか、と。なかなか全日本ではパッシングポイントに使われない地点ですが、それだけに抜かれる方はスキがあるもの。中須賀が一枚上手でした。
さぁ中須賀がスパートしたぞ、と思ったら、その後方の巧も続くもの。しかしちょっと慌てたか、ここで中須賀との距離が一気に開いてしまいます。意外なところで抜くっていうのは、抜かれる方も、後ろについていきたい方も慌てさす力があるんですねぇ!

画像: ラスト5周、意外なところでトップに浮上した中須賀はそのままイッキ! 巧とはこの差です

ラスト5周、意外なところでトップに浮上した中須賀はそのままイッキ! 巧とはこの差です

画像: 3番手争いは一樹vs野左根 もてぎ大会では一樹vs一馬の渡辺対決でした

3番手争いは一樹vs野左根 もてぎ大会では一樹vs一馬の渡辺対決でした

結果、レースはこのまま中須賀が逃げ切って優勝。巧はまんまと中須賀を逃がしてしまい、1秒9差の2位フィニッシュ。3位には、最後の最後で「ダブル渡辺」(野左根本人・談)を振り切った野左根が入りました。

画像: 昨年から7連勝を達成! 思えば連勝街道を突っ走っていた16年も、雨の岡山まで負けませんでした

昨年から7連勝を達成! 思えば連勝街道を突っ走っていた16年も、雨の岡山まで負けませんでした

画像: 4輪のラバーっていうより、路面温度が予想外に上がって終盤キツかったです、と中須賀

4輪のラバーっていうより、路面温度が予想外に上がって終盤キツかったです、と中須賀

「もっとスタートが決まっていたら、僕が前に出てペース作ってもよかったんですが、渡辺君のペース悪くなかったし、これは後ろで様子を見ようと。それで、中盤過ぎに前に出るんですが、シケインとかでトップに出ちゃうと、みんなついてきちゃうんで、抜きにくいところで前に出て、そのままスパートしようと。それがうまく決まりましたね。これで去年の後半から7連勝。もっともっとこの数字を伸ばしたいです」と中須賀。
序盤はだれかを前に行かせて、レース中盤に前に出て、そのままブッチギる――まさに横綱相撲でした。予選タイムといい、レース運びといい、ちょっと中須賀に死角が見当たりませんね。どうやったら中須賀に勝てるんだ、ってそんな走り、そんなレースっぷりでした。

「中須賀さんがあのタイミングで前に出るのはわかっていたんですが、それについていけなかった。前に出てすぐに距離を離されてしまって、もう少しくっついていかないと。自分でもミスが何度かあったので、前に出るとき、スパートするタイミング、もう少し修正して明日のレース2に臨みたいです」と高橋。
これで開幕戦のレース2、津田拓也に接触されてマシンを修復しにピットイン、ポイント外に沈んだレースを除けば、2戦連続で中須賀に続いて2位フィニッシュ。連続2位ですが、これをHRC流に言うと2連敗、となるのでしょう。中須賀のシーズンをまたいでの連勝を止めるのは、やはり高橋だと思うのです。

画像: やはり巧が、打倒中須賀の一番手 新生HRCの初優勝はいつになるんでしょうか

やはり巧が、打倒中須賀の一番手 新生HRCの初優勝はいつになるんでしょうか

画像: 走りがいっぱいいっぱいでミスが多かった、という野左根 ヤマハファクトリー入りした今年、勝負の年!

走りがいっぱいいっぱいでミスが多かった、という野左根 ヤマハファクトリー入りした今年、勝負の年!

さて、これであす日曜はレース2が開催されます。レーススタート時刻が10:55と午前中になりますから、今日のレース1とは気温も路面温度も変わってくるでしょう。各陣営、どんなテを考え朝のフリー走行を終えて、どんなセット変更や作戦の変更を打ってくるんでしょう。

写真・文/中村浩史

This article is a sponsored article by
''.