最終ラップの最終コーナーまで目が離せないバトルでした。まるで2017年シーズンのオーストリアGP、そして日本GPを見ているかのような二人の超絶バトル。ラストコーナーであきらめないマルケスがアタックに行く、ドビツィオーゾが受ける、そして最後はドビツィオーゾが優勝をかっさらっていきました。

今年のウィンターテストは、誰が抜け出たか、なかなかわからない展開でした。
セパンテストでは、初日からダニ・ペドロサ→マーベリック・ビニャーレス→ホルヘ・ロレンソの順でトップタイム。タイテストではカル・クラッチロー→マルク・マルケス→ペドロサがトップ。そして最後のカタールテストでは、ヨハン・ザルコ→アンドレア・イアンノーネ→そしてビニャーレス。ビニャーレスがよさそうだ、いやいやまだ苦しんでる、マルケスはどうした、いやいやタイム出ししてないだけでやっぱり速い、ドビツィオーゾはどう、いやいや今年はロレンソが速いんじゃないの?
昨年の今ごろは、スズキからヤマハに乗り換えたビニャーレスがウィンターテストをスイープ! このままマーベリックが行く、いやいやそんな甘くはない、そんな展望を語り合っていた感じがしますね。それが今年は、誰が抜け出すかわからない、そんな状態でのシーズンインになったんです。

画像: スタート直後。ザルコは2年連続で開幕戦の序盤をリードしていますね

スタート直後。ザルコは2年連続で開幕戦の序盤をリードしていますね

そうやって迎えた開幕戦。フリー走行初日はドビツィオーゾ、2日目はザルコがそれぞれ午前と午後を制圧。そして公式予選、つまり2017年の最終戦バレンシアGP以来の超本気タイムアタックは、マルケス、ダニロ・ペトルッチを抑えてザルコが獲りました! ザルコは去年の今頃、MotoGPルーキーでしたが、あれから1年、ルーキー・オブ・ジ・イヤーという肩書を引っさげて、恐るべき2年目のライダーとして再びカタールの地に降り立ったのです。そういえばザルコは17年の開幕戦、7周目に転倒するまでトップを走り、世界中のファンのド肝を抜いたのでした。そして転んだあとは「転んじゃったけど、今日の転倒は狙い通り」と、強烈な挨拶をブチかましたんでしたっけね。

画像: トップ集団は10台近く。タテ長の展開が続きます

トップ集団は10台近く。タテ長の展開が続きます

レースは、そのザルコのリードで始まります。1周目の最終コーナーこそ、ちょっと膨らんでマルケスの先行を許しましたが、それからもずっとトップを堅守、けれど2番手以降に連なる猛者たちも振り切れない。ザルコの背後にはマルケス、ペトルッチ、クラッチロー、そして3列目スタートのロッシがいつの間にか前に出て、ザルコの一瞬のミスも見逃さない、そんな張り詰めたヒリヒリした緊張感がレース開始からあふれていた、そんなレースでした。
そのうち、ペトルッチが上位陣をかきまわし、ペドロサが徐々に後退、スタートをミスったアレックス・リンスがファステストラップをマークして前に出始めるも、レース中盤に転倒。ザルコ→マルケス→ロッシが常にビタビタの間隔でトップ争いを展開。順位は動かないまでも、ライン1本外したらすぐに後ろから食われる――そんなヒリヒリがずっと続いていました。
そしてレース中盤、後方からドビツィオーゾがひたひたと順位を上げ始めます。2列目スタートのドビツィオーゾは、スタートで少し下がって1周目を7番手で終了。序盤はトップ争いの後方に何とかつけていたように見えたんだけれど、実は少しずつ少しずつ順位を上げていたのです。
8周目にドビツィオーゾは、トップ3人の後方に到達。1秒以内に4台がひしめくようなトップ争いから、ドビツィオーゾがまずロッシをパス。いったんパスしたマルケスをふたたび仕留めると、レースはラスト5ラップへ。ここからレースが動き始めます。

画像: ラスト5周、ドビツィオーゾが行った! そら来た、とマルケスも続いた!

ラスト5周、ドビツィオーゾが行った! そら来た、とマルケスも続いた!

画像: 上写真のクローズアップがこれ。マルケスじゃなかったら転んでたようなムーブでした!

上写真のクローズアップがこれ。マルケスじゃなかったら転んでたようなムーブでした!

さぁラストスパート、とドビツィオーゾがザルコをパスすると、そのスパートに遅れまいとマルケスもロッシもスパート。まさにこのタイミングこそ、ロッシが「勝負のカギになる」と戦前に言っていた、タイヤが終わりかけの頃の最後のひと勝負でした。
ドビツィオーゾ→マルケス→ロッシの順でラスト5周へ。昨年も最終戦までチャンピオンを争ったドビツィオーゾとマルケスが、徐々にロッシを引き離して一騎打ち。さしものロッシも、ついに前にふたりから遅れ始めます。
ドビツィオーゾがトップに立ってからは、マルケスとの差は0秒166→0秒284→0秒222→0秒172、つまり、ほぼベタベタの間隔のまま最終ラップへ。昨シーズンに何度も見たふたりのバトルでは、最終ラップまでにマルケスがなんどか伏線を打って「ほれほれ、ここで抜くぞ。このへんはオレの方が速いぞ」ってちょっかいを出していたんですが、今回それはなし。

画像: 最終コーナーは、いちどマルケスが前に出て、ドビツィオーゾが抜き返しました!

最終コーナーは、いちどマルケスが前に出て、ドビツィオーゾが抜き返しました!

いよいよ最終ラップ、どのコーナーでマルケスが行くか!って世界中が固唾をのむなか、さしものマルケスも攻めきれずに最終コーナーへ。最終コーナーで無理やりインを差すマルケス、それを見透かしたようにドビツィオーゾはクロスラインで抜き返して、フィニッシュラインではドビツィオーゾが0秒027差で前! ドビツィオーゾは最終コーナーで抜き返すとき、それまで踏み入っていなかったイン側のゼブラ踏んでまで抜き返していますからね。ドビツィオーゾにしてみてもギリギリの戦いだったんでしょう。まさに昨年のレッドブルリンク、ツインリンクもてぎを見ているかのようなひやひやの戦いでした。もちろん危なげはない、クリーンなバトルでしたね。

画像: フィニッシュラインはこう! 開幕戦からこの超僅差はスゴい!

フィニッシュラインはこう! 開幕戦からこの超僅差はスゴい!

「スタートは失敗してしまったけど、うまくレースをコントロールできたね。最後はザルコをかわしてマルケスとロッシを引き離そうとしたんだけれど、タイヤがもう消耗していて、できなかった。最終コーナーは、きっとマルケスがアタックしてくると思って、慎重に行ったよ。マルケスは去年のオーストリアよりもてぎよりインを閉じていたけど、僕はさらにそのインを行って、あとはデスモセディチのパワー頼みだったね。この勝ちは本当にうれしいね!」とドビツィオーゾ。

「いや、なんてレースだ! カタールは、僕らにとって苦手としているコースのひとつだから、この2位という結果は本当にうれしいよ。最後の最後は、そりゃ行くよね。何があるかわかんないんだから。でもドビが一枚上だったよ。ドビが後方から前に出てきて、終盤にザルコを抜いていった瞬間、僕は自分に『行くぞ!』って言い聞かせたんだよ。なんとかくっついていってはらんじゃったけどね。よかったのは、この時点で彼のデスモセディチにストレートでついて行けたことだね!」とマルケス。

「いいファイトだった、いいレースだったね。表彰台に立てるなんて思わなかった。今年のバイクはいいフィーリングだよ。スピードも出せるし、いいレースができるとは思っていたけど、今や優勝候補が10人はいるからね。レースは3列目スタートだったから、スタートからプッシュしていったよ。もうひとつキーになったのは、最終ラップだよね。ドビツィオーゾとマルケスが強いのは分かっていたけど、あの最強のふたりは、そこからまたペースを上げてくるからね。最後はあのふたりについて行けてよかった。優勝できなかったのは残念だけど、表彰台に上がれたのはいいスタートだね」とロッシ。

画像: ドビツィオーゾはMotoGPクラスで初めて開幕V! これは吉兆かはたまた……

ドビツィオーゾはMotoGPクラスで初めて開幕V! これは吉兆かはたまた……

画像: 開幕から力を出し切った3人 クリーンなファイトは見ていて気持ちがいい!

開幕から力を出し切った3人 クリーンなファイトは見ていて気持ちがいい!

レース中、しぶとくトップグループにつけていたクラッチローが4位、序盤にポジションを引っ掻き回したペトルッチが5位、4列目12番手スタートで、レース前半は10番手以下を走っていたビニャーレスも、中盤以降にポジションを上げて6位フィニッシュ。序盤トップ争いをしていたのに、集団の後方に下がってしまったペドロサは、けれど集団から引き離されることもなく7位。ザルコが8位まで順位を落としてゴールしています。ウィンターテスト、そして開幕戦の走りで、ちょっと今シーズン注目したいリンスは転倒リタイヤ、ドゥカティ2年目のロレンソも、マシントラブル(っぽかったな)からコースアウトしてポテゴケしてしまいました。ロレンソ、今年はイケると注目してるんだけど……。

■MotoGP開幕戦 カタールGP結果
①アンドレア・ドビツィオーゾ(ドウカティ)
②マルク・マルケス(ホンダ)
③バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)
④カル・クラッチロー(ホンダ)
⑤ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)
⑥マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)
⑦ダニ・ペドロサ(ホンダ)
⑧ヨハン・ザルコ(ヤマハ)
⑨アンドレア・イアンノーネ(スズキ)
⑩ジャック・ミラー(ドゥカティ)

第2戦アルゼンチンGPは4月8日に行なわれます。ここは去年、ビニャーレスとロッシが1-2を決めたサーキットですね。でもマルケスも速いんだよねー!

This article is a sponsored article by
''.