山猫のペットネームを持つサンダーエースの兄弟モデル

日本国内では販売されなかったFZRシリーズのミドルバージョン・FZR600は、FZ600の後継として1989年にデビュー。FZR400のアルミフレームによく似た形状のスチール製フレームにやはりFZR400と基本的に共通なフルカウルを装着、599㏄の4バルブ水冷直4エンジンを搭載したミドルスーパースポーツとして、細かな改良を受けながら販売されていた。そしてこのFZR600に代わる新たなミドルスーパースポーツとして1994年にフルモデルチェンジしてデビューしたのがYZF600Rサンダーキャットだった。

画像: 山猫のペットネームを持つサンダーエースの兄弟モデル

スチールの押し出し材で作られたデルタボックスフレームに搭載されている、FZR600から受け継がれてきた599㏄水冷直4エンジンには、新たにスロットルセンサー付きのケイヒンCVKDキャブレターを装着。センサーを活かしてアクセル開度に応じ点火時期調整を行うことで、低回転域から非常にスムーズなフィーリングと鋭いレスポンスを両立。またヤマハ初となるラムエア過給システムを採用、120㎞/hを超えると効果をあらわして最高で約3%加圧され、最高出力が約5PS向上するとされる。フルカウルのデザインは、直線的でシャープな雰囲気のFZR600から一転、曲面を多用した流麗な造形で強い存在感を感じさせるものとなった。兄貴分であるYZF1000Rサンダーエースとも通ずる面もあるが、専用の1灯ヘッドライトを採用したフロントマスクのイメージは、サンダーキャットだけの独特なものだった。

画像: 兄貴分のサンダーエースと共通イメージなスタイルを、1994年に先行して採用していたサンダーキャット。カウル、タンク、シートまわりまで一貫した独特な有機的ボディラインが目立つ。

兄貴分のサンダーエースと共通イメージなスタイルを、1994年に先行して採用していたサンダーキャット。カウル、タンク、シートまわりまで一貫した独特な有機的ボディラインが目立つ。

サンダーキャットは600㏄としてはやや大柄な車体だが車重は軽く、アップライトで快適なポジション設定を与えられていることに加え、足まわりもしなやかな仕上がりだったため、乗り味は兄貴分のサンダーエースと同様に、スーパースポーツというよりはオールラウンドでスポーツツアラー寄りなもの。加えて比較的低く抑えられた価格もあって、コストパーフォーマンスに優れたバランスの良いベーシックスポーツとして、ヨーロッパなどで幅広く人気を集めることになる。後継モデルとして1999年に本格的な600㏄スーパースポーツのYZF-R6が登場した後でも、2003年まで基本的なメカニズムやスタイルを変えることなくそのまま販売されていた。

画像: 個性的なフルカバードカウルは防風性能の高さでライダーを保護するだけでなく、空力特性にも優れていたため、高速走行も得意としていた。

個性的なフルカバードカウルは防風性能の高さでライダーを保護するだけでなく、空力特性にも優れていたため、高速走行も得意としていた。

YAMAHA YZF600R ThunderCat[1996] SPECIFICATIONS
エンジン型式 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 599㏄
内径?工程 62×49.6㎜
圧縮比 12:1
最高出力 101.1PS/11500rpm
最大トルク 6.7㎏-m/9500rpm
燃料供給方式 キャブレター[CVKD36]
変速機型式 常時噛み合い式5速リターン
全長 2060㎜
全幅 754㎜
全高 1190㎜
軸間距離 1415㎜
シート高 810㎜
乾燥重量 187㎏
燃料タンク容量 19L
タイヤサイズ(前) 120/60ZR17
タイヤサイズ(後) 160/60ZR17
当時価格 輸出車

DETAIL

画像: ボア62×ストローク49㎜、排気量599㏄の4バルブ水冷直4エンジンは、最高出力100PSとパワフルなもの。ヤマハ車初のラムエアシステムも採用されている。

ボア62×ストローク49㎜、排気量599㏄の4バルブ水冷直4エンジンは、最高出力100PSとパワフルなもの。ヤマハ車初のラムエアシステムも採用されている。

画像: フロントフォークはインナーチューブ径Φ41㎜の正立タイプ。リアサスと同じく、プリロード、圧側・伸側の減衰力の調整機構も装備。ブレーキはΦ298㎜ローターにモノブロック4ポットキャリパーの組み合わせ。

フロントフォークはインナーチューブ径Φ41㎜の正立タイプ。リアサスと同じく、プリロード、圧側・伸側の減衰力の調整機構も装備。ブレーキはΦ298㎜ローターにモノブロック4ポットキャリパーの組み合わせ。

画像: 価格を抑えるためもあり、マフラーは排気デバイスのEXUPを内蔵しないシンプルなものとされている。リアブレーキはΦ245㎜ローターに片押し1ポットキャリパーを装着。

価格を抑えるためもあり、マフラーは排気デバイスのEXUPを内蔵しないシンプルなものとされている。リアブレーキはΦ245㎜ローターに片押し1ポットキャリパーを装着。

画像: フレームと同じくスイングアームもスチール製だ。タイヤサイズはフロントが120/60ZR17、リアが160/60ZR17と最新モデルと比較すればやや細め。

フレームと同じくスイングアームもスチール製だ。タイヤサイズはフロントが120/60ZR17、リアが160/60ZR17と最新モデルと比較すればやや細め。

画像: 1灯式の異型ヘッドライトを採用し、2灯式のサンダーエースと異なる印象とされたフロントマスク。吸気効率を高めパワーを引き出す走行風導入システムのダクトも設けられている。

1灯式の異型ヘッドライトを採用し、2灯式のサンダーエースと異なる印象とされたフロントマスク。吸気効率を高めパワーを引き出す走行風導入システムのダクトも設けられている。

画像: ハンドルはセパレートタイプ。しかしトップブリッジの上にクランプされているためポジション設定はアップライトな傾向で、長距離でも疲れない高い快適性をもたらす。

ハンドルはセパレートタイプ。しかしトップブリッジの上にクランプされているためポジション設定はアップライトな傾向で、長距離でも疲れない高い快適性をもたらす。

画像: 燃料タンクの容量は、600㏄クラスとしてはかなり大容量な19Lを確保。最大航続距離はかなり長目で、ツアラーとして使いやすいポイントとなっている。

燃料タンクの容量は、600㏄クラスとしてはかなり大容量な19Lを確保。最大航続距離はかなり長目で、ツアラーとして使いやすいポイントとなっている。

画像: シート高は805㎜とやや高いが、シートそのものはサンダーエースと同様に、タンデムでも快適そうな大きなサイズで、ライダー側・タンデム側を一体にしたデザインだ。

シート高は805㎜とやや高いが、シートそのものはサンダーエースと同様に、タンデムでも快適そうな大きなサイズで、ライダー側・タンデム側を一体にしたデザインだ。

画像: 1万5000rpmスケールのタコメーターを中心に、左側にスピードメーター、右側に水温計というメーターパネルの基本デザインもサンダーエースとよく似ている。

1万5000rpmスケールのタコメーターを中心に、左側にスピードメーター、右側に水温計というメーターパネルの基本デザインもサンダーエースとよく似ている。

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