旧車人気の昨今だが、純正部品の欠品に関しては不安は拭えないのが現状。そんな中、7 月10
日、ホンダがプレス向けに「旧型二輪車の部品供給試作説明会」を行ない、販売中止部品の再供
給について今後の展開を発表した。旧車ユーザーならずとも気になるその内容とは…?

ホンダは旧型パーツと共に絶版車に乗る喜びも供給する

車両生産中止後の保守部品供給期間は、法律で明確に定められているわけではなく、業界団体や経産省の指針によっておおまかに決められている。目安として生産中止後7〜10 年くらいはほとんどの部品が供給されるが、その後の供給はメーカーによって異なるのが実情だ。いくつかの絶版ショップで聞いた現場レベルでの話では、カワサキのZ1やZ2、Z400FX、ホンダのCB750/400FOURといった、一定の需要が見込める人気モデルは、純正および市販品で今も走行に必要なパーツは賄えるが、それ以外のモデルや2ストローク車、ヤマハとスズキの絶版車は厳しいという声が聞かれた。

NSR250R (MC16)
1983年のスズキRG 250Γ、1985年のヤマハTZR 250により、販売面で大きく水をあけられてしまうホンダ。1985年から市販レーサーRS 250 Rの販売を開始し、その1987年モデルと同時進行で一般市販車の開発を進める手法を導入する。基本設計をHRCが行い、ホンダがアレンジをしたレーサーレプリカ、それがNSR 250 Rだ。1986年に発売され、年間販売台数は計画の1万5000台を大きく上回った。当時新車価格55万9000円。

設備の老朽化や生産ロットの減少もあって、すべての絶版モデルの部品を永続的に供給することは企業として難しいのが現実だ。そんな状況の中、ホンダでは市場からの要望を受けて、昨年、廃番になっていたNSR250R(MC28)の部品を、エンジン系を中心に59点再生産し、車両維持に苦慮していた販売店やNSRユーザーから称賛の声を集めた。

そこでホンダは、廃番部品の再供給を重要なユーザーサービス、ひいては二輪文化醸成の一環として、パーツサプライヤーと協議を重ねて、新たにCB750FOURとNSR250R(MC16/
18/21/28)の廃番部品を再生産することを決定した。
 

画像: NSR250R (MC18) 初代NSRのMC16登場から約1年後、フルモデルチェンジで発表されたのがMC18。88年式=「ハチハチ」の愛称で親しまれる、歴代NSRの中でも最強と呼び声が高いモデル。当時新車価格は57万9000円。

NSR250R (MC18)
初代NSRのMC16登場から約1年後、フルモデルチェンジで発表されたのがMC18。88年式=「ハチハチ」の愛称で親しまれる、歴代NSRの中でも最強と呼び声が高いモデル。当時新車価格は57万9000円。

画像: NSR250R (MC21) MC18後期モデルを経て、1990年にフルモデルチェンジで登場。シリンダーやヘッド、クランクを新設計しただけでなく、ガルアームを新採用。異形角型2灯式ヘッドライトで顔つきも大きく変更。当時新車価格60万9000円。

NSR250R (MC21)
MC18後期モデルを経て、1990年にフルモデルチェンジで登場。シリンダーやヘッド、クランクを新設計しただけでなく、ガルアームを新採用。異形角型2灯式ヘッドライトで顔つきも大きく変更。当時新車価格60万9000円。

画像: NSR250R (MC28) 世界初のPGMメモリーカードシステムを採用し1993年に登場した最終型。カウル形状を見直し、ガルアームをプロアーム化したことで、スタイリングは一新された。当時新車価格68万円/72万円(SE)/80万円(SP)。

NSR250R (MC28)
世界初のPGMメモリーカードシステムを採用し1993年に登場した最終型。カウル形状を見直し、ガルアームをプロアーム化したことで、スタイリングは一新された。当時新車価格68万円/72万円(SE)/80万円(SP)。

ホンダでは、
・走るために必要
・商品性が高い
・問い合わせが多い
・市販品で代替えできない
部品を『対象部品』と定め、現状CB750FOURではその66%を、NSR250Rでは69%を供給しているが、今回の再生産によってさらにカバー比率を拡大。絶版車に安心して乗れる環境がさらに整うことになった。両車のオーナーにとっては非常にうれしいニュースと言っていいだろう。

受注は今年の8月31日まで! 2018年3月から供給を開始!!

今回再生産されるのは、NSR250R向けが29部品、CB750FOUR向けが10部品の計39部
品。詳細は下記リストで掲載しているが、NSR系はキャブレターやケーブル類、クラッチ、ミッション、エアクリーナー、ブレーキ系のパーツが中心。一方CB750FOURでは、ロッカーアームやクラッチ系、ピストンに加えて、前後スプロケットとタンクエンブレムが含まれている。スプロケットは市販品の流用が可能な部品の筆頭だが、デビューから半世紀近くを経過して、フルオリジナルにこだわるユーザーの声に応えての再生産とのこと。エンブレムも文字内と文字外がブラック仕上げとなった、初代K0のデザインとなっている。

CB750Four (K0)
世界の二輪車史上、最もエポックメイキングな存在の一台として認知されているのが、1969年デビューのCB 750 Fourだ。故本田宗一郎氏の至上命令として開発されたこのモデルだったが、CB 450の上位機種として開発されていたのは、650の排気量を持つ4気筒モデル。しかし、世界戦略モデルとしての性能に加え、カワサキが同コンセプトで750モデルを開発中との情報があったことから、急遽750モデルとして誕生させた。初期型のK 0のみエンジンが砂型鋳造。当時新車価格38万5000円。

画像: CB750Four (K1) 1970年、予想をはるかに上回るK 0のセールスに生産が追いつかず、生産性を向上させるためにエンジンを砂型鋳造からアルミダイキャストに切り替えて発売されたのがK 1。アクセルワイヤーも強制開閉式の2本ワイヤーに変更し、外装も見直し、足着き性も向上している。当時新車価格38万5000円。

CB750Four (K1)
1970年、予想をはるかに上回るK 0のセールスに生産が追いつかず、生産性を向上させるためにエンジンを砂型鋳造からアルミダイキャストに切り替えて発売されたのがK 1。アクセルワイヤーも強制開閉式の2本ワイヤーに変更し、外装も見直し、足着き性も向上している。当時新車価格38万5000円。

画像: CB750Four (K2) 1972年にK 2へとマイナーチェンジ。ヘッドライトステーがメッキタイプになった他、テールランプは大型化。ハンドルクランプ上にインジケーターパネルを装備。ヘルメットホルダーも追加された。

CB750Four (K2)
1972年にK 2へとマイナーチェンジ。ヘッドライトステーがメッキタイプになった他、テールランプは大型化。ハンドルクランプ上にインジケーターパネルを装備。ヘルメットホルダーも追加された。

画像: CB750Four (K4) 1974年、K 3は輸出車用のため、国内ではK 2からK 4へとチェンジ。カラー&グラフィックは大きく変更され、タンクには極太なラインを採用。速度警告計をメーター間からステアリングステム上面に移動した。当時新車価格39万5000円。

CB750Four (K4)
1974年、K 3は輸出車用のため、国内ではK 2からK 4へとチェンジ。カラー&グラフィックは大きく変更され、タンクには極太なラインを採用。速度警告計をメーター間からステアリングステム上面に移動した。当時新車価格39万5000円。

価格面では、NSR250R(MC28)の当時のパーツリストの価格に対しておおよそ2〜3倍。高いイメージを抱く人もいるかと思うが、筆者の経験則では25年前の絶版車の部品としては妥当な設定だ。キャブレターとエンジンをつなぐインシュレーターの価格が、当時の3500円に対して2万円となっているが、これは新たに型を起こしたため。経年劣化でひび割れることの多い重要部品で、なおかつ他では絶対に代用できないため、2万円でも飛び付くオーナーは少なくないだろう。
昨年は販売店に部品リストを提示したうえで、ホンダ側の判断で一定量が生産されたが、今回は5月
16日〜8月31日まで注文を受け、2018年3月から供給を開始する受注生産方式を採用。欲しい人は今すぐ最寄りのホンダ販売店に走ろう!
 

画像: ホンダモーターサイクルジャパン 部洋用品部 部長 川村 秀彦氏 「新しい機能やそれらを搭載した新型車を作っていくだけでなく、今回のこの取り組みを通じて、旧型二輪車でも安心して乗る、操るといった喜びを皆さんが感じていただけたら嬉しい。同時に、日本の二輪文化を高めて世界に大きく広めていければと思う」。

ホンダモーターサイクルジャパン
部洋用品部 部長 川村 秀彦氏
「新しい機能やそれらを搭載した新型車を作っていくだけでなく、今回のこの取り組みを通じて、旧型二輪車でも安心して乗る、操るといった喜びを皆さんが感じていただけたら嬉しい。同時に、日本の二輪文化を高めて世界に大きく広めていければと思う」。

気になる今後の態勢だが、まだ未定としながらも、ホンダを代表するモデルを中心に販売店やユーザーの声を聞いて検討していくとのこと。パーツがなくて困っている古いホンダ車のオーナーは、ホンダ主催のオーナーズミーティングやお客様相談室で声を上げてみてはいかがだろう?

                                       文:安藤佳正

画像1: 受注は今年の8月31日まで! 2018年3月から供給を開始!!
画像2: 受注は今年の8月31日まで! 2018年3月から供給を開始!!

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