美しきビンテージスポーツ、その魅力は色褪せない

カワサキが続々と発表しているファイナルエディションシリーズ、続いてはW800を紹介しよう。ベベルギア駆動の美しい空冷バーチカルツインを搭載するクラシカルなロードスターは、W3と同じ工程で塗られる特別仕上げのタンクを採用するなど、工芸品としての美しさにも磨きをかけている。ここで、万感の想いを込めて、改めて試乗する。

画像: 美しきビンテージスポーツ、その魅力は色褪せない

ライダーの心に響く存在感を改めて感じさせてくれる1台

またひとつ、カワサキの伝説が消えようとしている。次の排ガス規制をしっかりとした性能を維持したままクリアできない事が判明し、ファイナルとなったベベルギア駆動のW800だ。

もう、あえて説明する必要もないだろうが、このネオクラシックモデルは、かつてのW1シリーズをオマージュしている。そのかつてのバーチカルツインのOHV・650が持っている雰囲気を大切にしていた。でも17年前にW650として登場する際、どうせなら、と個性的で見た目もアピールのあるベベルギア駆動にしたのだ。もちろん、このエンジンは完全な新作だった。コストも掛かっているが、このモデルに使うこと以外考えていない、潔いエンジンだ。

画像1: ライダーの心に響く存在感を改めて感じさせてくれる1台

かつてのWと同じく、650でスタートした現在のWだが、このご時世で675㏄のマイルドツインは、かつての勇ましいイメージからはほど遠いものだった。そのため、2010年には773㏄にボアアップ、それも低中域トルクの充実を狙っての排気量アップを受け、W800となった。さすがに、いにしえのWのごとき弾けるような咆哮は発しないが、力量感は増し、粘りも強くなって質実ともに元気になった。

Wはもともと身軽で、ハンドリングやエンジンも素直。高速道路での連続走行を含む常用速度レンジが得意なモデルだ。コミューターとしての使いやすさは実利的な魅力である。さらに、ただ走っているだけで楽しくなる低中速型ツインの表情も魅力だ。それは低回転域でのツインのパルス感、中回転域からのビート感溢れる吹けなど、その演出はのどかだった時代の荒くれツインの雰囲気だ。もし、リプレイスもののマフラーなどに換装すると、力量感を含めて、その雰囲気は一段とノスタルジックなテイストを増す。

これが現在のW800だ。今回のファイナルエディションは、かつてのWシリーズ最終ブランドになぞった演出をまとった。Z2と同時に登場した650RS、つまりW3の前期モデルのタンクカラーとステッチの入ったシートをアクセントにしている。

改めてこのWの造形をじっくり眺めてみる。英国製のツインに追いつけ追い越せと必至に頑張っていた、50〜60年代のスリムだったビンテージツインのイメージを上手く醸し出している。造形も今時のバイクにしてはすばらしく丁寧だ。人が磨いて、眺めて、乗って満足できる「所有物」として惚れ込める要素をたくさん持ったバイクだと思う。

これから先、カワサキはこのWのような、乗り手の心に訴えるバイクを一生懸命に作ってくれるだろうか? 2年後か3年後か、何かWのようなバイクを作ってくれるかもしれないが、今のベベルのWはこのファイナルエディションで生産を終了する。かつてのWは、なくなってから趣のある存在感にみんな気がつき、今では高級クラシックモデルだ。このWもそんな人気が出るような気がする。

画像2: ライダーの心に響く存在感を改めて感じさせてくれる1台
画像: クラシカルで美しい造形のエンジン。ファイナルエディションは通常モデルと異なりブラック仕上げだ。

クラシカルで美しい造形のエンジン。ファイナルエディションは通常モデルと異なりブラック仕上げだ。

画像: 熟練の手作業による特別塗装で深みのある美しい色合い。質感の高いエンブレムもよく似合う。

熟練の手作業による特別塗装で深みのある美しい色合い。質感の高いエンブレムもよく似合う。

画像: タンク上面、給油口の後ろに控えめに「FINAL EDITION」ロゴがあしらわれている。

タンク上面、給油口の後ろに控えめに「FINAL EDITION」ロゴがあしらわれている。

画像: シートは白いパイピングとオリジナルの座面パターンでクラシカルさを強調した専用品。

シートは白いパイピングとオリジナルの座面パターンでクラシカルさを強調した専用品。

画像: サイドカバーのエンブレムも往年のW風デザイン。インジェクションカバーにはハンマートーン塗装を採用。

サイドカバーのエンブレムも往年のW風デザイン。インジェクションカバーにはハンマートーン塗装を採用。

RIDING POSITION(身長:176㎝ 体重:68㎏)

650時代にフロント周りのアライメントを見直されて、大型のアップハンドルを付けても落ち着きが良くなった。今の主流はこの低めのコンチ風ハンドルだが、見た目ほど低いハンドルではなく、低いシートと相対的には自然な繋がりでロングランも楽。ハンドルには少し強めの振動が出る。

画像1: RIDING POSITION(身長:176㎝ 体重:68㎏)
画像2: RIDING POSITION(身長:176㎝ 体重:68㎏)

主要諸元
全長×全幅×全高 2180×790×1075㎜
ホイールベース 1465㎜
シート高 790㎜
車両重量 216㎏
エンジン形式 空冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 773㏄
ボア×ストローク 77×83㎜
圧縮比 8.4
最高出力 48PS/6500rpm
最大トルク 6.3㎏-m/2500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 14ℓ
キャスター角/トレール 27度/108㎜
変速機形式 5速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ300㎜ディスク・φ160㎜ドラム
タイヤサイズ 前・後 100/90-19・130/80-18

W800ヒストリー

画像: 1998年に発表されたW650をベースにボアを5㎜拡大、773㏄として2010年にデビューを果たしたのがW800。W650の生産中止から2年を経て登場したW800は欧州でも高い人気を博した。現行モデルとしては世界にも類を見ない、ベベルギア駆動のバーチカルツインユニットは同時にFI化も施され、増強された中低域のトルクとあいまって、力強いダッシュと一層の扱いやすさを手に入れている。写真は1971年・W1SAとの1枚。

1998年に発表されたW650をベースにボアを5㎜拡大、773㏄として2010年にデビューを果たしたのがW800。W650の生産中止から2年を経て登場したW800は欧州でも高い人気を博した。現行モデルとしては世界にも類を見ない、ベベルギア駆動のバーチカルツインユニットは同時にFI化も施され、増強された中低域のトルクとあいまって、力強いダッシュと一層の扱いやすさを手に入れている。写真は1971年・W1SAとの1枚。

(PHOTO:松川 忍、南 孝幸)

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