画像: ドライのレースで今シーズン2勝目を挙げたクラッチロー。勝利数でロッシに並んじゃった!

ドライのレースで今シーズン2勝目を挙げたクラッチロー。勝利数でロッシに並んじゃった!

日本グランプリからわずか1週間。なのに!もう!第16戦オーストラリアGPが行なわれました。朝夕はちょっと寒いかな、っていう秋晴れに恵まれた日本から、オーストラリアは常夏……なワケはなく、オーストラリア、しかも開催地のフィリップアイランド(=PI)は、南氷洋のそば、つまりこれからだんだん春を迎える、まだ冬なんですね。僕も何度か行ったことがありますが、この時期のPIは、ちょっと天気が悪いと、もう寒くて寒くて! ウィークの金曜に、近くの水族館にペンギンパレードを見に行ったことがあるんですが、寒すぎてペンギンが出てこない、って言われたことがありますからね(笑)。ペンギンが寒いて! あれ、説明員のオージージョークだったのかなぁ…。
嫌な予感は的中。今年のオーストラリアGPは、その寒さがストライク! しかも走行初日の金曜から冷たい雨と強い風! こ…これは地獄の寒さだったろうなぁ。金曜はmoto2とMotoGPの午後のセッションが悪天候で中止(MotoGPは途中で中止)されるほどで、MotoGPクラスでは、ミシュランのスーパーソフトタイヤを履いたロッシが、そのタイヤを規定周回以上走ったから、ってタイム抹消。2番手タイムだったのに、20番グリッドまで降格されちゃうなんてこともありました。土曜には、moto2クラスの中上貴晶が、セッション中に転倒して右肩を脱臼>< もー、タカは2勝目目指しているのにジャマすんなよぉぉ、って気持ちでした。

画像: ウィングは小さめ、ナックルガード部分が別体のアッパーカウル使ってますね ビッグウイングだと横風の影響を受けやすいんでしょう

ウィングは小さめ、ナックルガード部分が別体のアッパーカウル使ってますね ビッグウイングだと横風の影響を受けやすいんでしょう

なのに決勝レースは、朝からカラッと晴れて、ドライコンディションでのレース。前戦もてぎでチャンピオンを決め「残りレースは、タイトルへのプレッシャーもないから、今まで以上にマルケス・スタイルで行くよ!」と話していたマルケスですが、予告通り(笑)トップを走行中にステーン、ガシャーンと転倒リタイヤ! こ…これがマルケススタイル!?(笑)
本人は自分のミスだ、ってチームに謝っていましたけど、転び方がね、もてぎのロッシやロレンソとそっくりでしたよね。コーナーエントリーでブレーキングして、最大バンクに行く前にズルッとフロント切れてステーン! ミシュランのフロントタイヤは温度変化に敏感で、レース中に路面温度が上がり下がりすると、その影響でタイヤがグリップを失って…なんてまことしやかに言われていますが、優勝したカル・クラッチローも、そう言っていました。「レース中、ちょっと雲が出てきて路面温度が下がったから、その間はちょっとペースを落としてたんだよ」って。クラッチローはフロントにハードタイヤを選択していました。このフロントタイヤ問題は、今シーズン、ライダーを悩ませるタネになっているようです。

画像: もてぎでのカルさん 低い声で英語をまくしたてるから聞き取りにくい聞き取りにくい(笑)

もてぎでのカルさん 低い声で英語をまくしたてるから聞き取りにくい聞き取りにくい(笑)

そう、ここで本題。実はもてぎの時にクラッチローにインタビュー出来ていたので、その内容をここでお届けしましょう。次号の月刊オートバイ誌で公開しようと思っていたんですが、オーストラリアGPで優勝した今、ドンピシャのタイミングでしょう!
まずは、今シーズンの序盤について。クラッチローはシーズン序盤どころか、中盤ともいえる第8戦オランダまで、サッパリの成績でした。フリーや予選も含めて転倒は数知れず、ノーポイントレースが実に8レース中5回! それまでの予選最高位はオランダの5番手、決勝最上位はカタルニアの6位。ほぼワークスマシンを手にしているライダーとしては、残念すぎる成績です。
「今年はエレクトロニクスとタイヤが大きく変わって、そこに苦労していたとしか言えないね。シーズンオフのテストでは、すごくいい感触だった。でもそれは、2015年仕様のエンジンで、16年仕様は厳しかったねぇ! エンジン本体じゃないんだ、電子制御が悪さしてたんだ」
開幕戦カタールは、いきなりの転倒ノーポイントレース。それからアルゼンチン、アメリカズ、フランス、オランダもノーポイント。な、何が起こっていたの?
「開幕戦は、電子制御のトラブルだ。スロットルを閉じても減速しないんだよ。コーナーによってトラクションコントロールが効いたり効かなかったり、転んだ瞬間も、スロットルを閉じているのに減速してくれていなかった。他の転倒は、うーん、そうだな、無理しすぎ、ってことだ。なかなかマシンが言うことを聞いてくれなくて無理してたのさ。Too push hard!」
シーズン序盤のクラッチローのマシンの状態は、コーナーの脱出、そこからの加速が悪い、ということだった。脱出で後れを取るならば、進入で無理をするのがレーシングライダー。ギリギリまでブレーキングをガマンして、限界を超えてステーン! クラッチローが、まさにこれだった。
「エンジン本体はすごくいいんだ。ただし、コーナー脱出できれいにパワーが立ち上がってくれないし、ドンとウイリーしてしまう。これは電子制御がうまくワークしなかったからだね。ECUの統一ソフトがアップデートされた後は、かなりこの症状が収まったけどね」
同じく、タイヤの問題もクラッチローを邪魔してしまっていた。タイヤに関しては、同じくインタビューしたペドロサも言っていたけれど、タイヤの特性をつかめてきたな、と思ったらガラッと新しいスペックが持ち込まれたり、またそれに慣れた頃に次のタイヤが……という状態だったようだ。
「タイヤに関しては、ただ走るには大きな問題じゃないんだけど、いい時と悪いときの差が激しいんだ。タイヤのことを早く理解したライダーが成績を上げていける、それを安定して持続できる、ってことだな。レース序盤は良かったけど、ガクッとワークしなくなって、マネジメントも難しい、特にフロントタイヤがそうなんだ。そんなシーズンだな」

画像: もてぎでのカルさん ビッグウイング、しかもPIの仕様とはウイングの取り付け位置も違うんですね

もてぎでのカルさん ビッグウイング、しかもPIの仕様とはウイングの取り付け位置も違うんですね

そんなクラッチローが、急激に覚醒したのがドイツグランプリ。初日フリー走行で4番手だったクラッチローは、予選こそ転倒で13番手に沈んだけれど、決勝ではマシンチェンジのあるフラッグtoフラッグで、ハーフウェットの前半も、スリックに履き替えた後半も速く、2位表彰台を獲得!
「あれもタイヤだな。金曜の走行から日曜の決勝に向けてマシンのセッティングとタイヤを組み合わせていくんだけど、うまくそのレースで使うタイヤのことを理解出来たら、まわりのみんなを出し抜いて上に上がれるんだ。オレ、雨だけが得意ってわけじゃないんだぜ」
続くオーストリアではジャンプスタートの裁定を取られて15位フィニッシュ。しかし、スタートで出遅れてからの追い上げも、ライドスルーペナルティからの追い上げも、トップグループと変わらないものだった。そして、ハイライトがやって来たのはチェコグランプリ。
「あのレースも、タイヤのことを理解したことで上手く走れたレースだった。グリッドでハードレインを履くことに決めたんだけれど、最初はまったくグリップしてくれなかったんだ。でも、路面が乾くにつれてオレはペースを上げることができて、まわりのみんなはタイヤがボロボロでペースを上げられずにいた。それで優勝できたんだよ」
続くイギリスは、母国グランプリ。ここでも雨に降られてしまったものの、雨の予選でポールポジションを獲得してからの決勝では2位フィニッシュ。決勝は、路面温度が低いドライコンディションでのレースで、マーベリック・ビニャーレスに逃げられてしまった。

画像: チェコもPIも、実は奥様がサーキットに来ていないとき。こういう時のカルは、走行が終わってもずっとピットにいて、いつまでも(スタッフがイヤになるほどに・笑)ミーティングをしてくるそう 勝利の秘訣じゃ?w

チェコもPIも、実は奥様がサーキットに来ていないとき。こういう時のカルは、走行が終わってもずっとピットにいて、いつまでも(スタッフがイヤになるほどに・笑)ミーティングをしてくるそう 勝利の秘訣じゃ?w

「強いて言えば、今年のオレの強みは、特にリアのグリップが出せないときに、まわりより上手く走れることかな。あとはハードブレーキングだ。チェコの後からは新しいシャシーを使っているんだけど、これはワークスのマルクとダニが使わなかったものをリユースしたもので、そう大きな違いがあるわけじゃない。今は、トップライダーのみんなに大きな差がないから、強みをいくつ持っているか、それをレースでうまく出せるか、ってことだろうな」
そのクラッチローの、PIでの2勝目。金曜土曜の冷たい雨と強い風、からの、晴天とドライコンディションでのレース。たしかに、みんなドライでの走行時間が少ない中で、クラッチローだけが抜け出してみせたのだ。マルケスが転ぶ前から、マルケスより速いペースで走り、終盤には2番手まで上がって来たロッシを、さらに突き放した!
「オレがいい成績を獲るレースがあるとすれば、サーキットの中で2つ3つのコーナーで、ライバルより強いブレーキングができた時だろうな。雨だけ強い、なんて言われないように、ドライでもいい走りをしてみせるよ」
有言実行。サテライトチームのライダーが2回勝つのは、2002年のアレックス・バロス以来。いつも同じライダーが勝つレースなんてつまらない、だからレースを面白くしてくれるのは、クラッチローであり、ビニャーレスであり、イアンノーネの存在なのだ。
グランプリの面々は、すでにオーストラリアを発って、今度は灼熱の国マレーシアへ。もてぎ、PI、そしてセパンのアジア・オセアニア3連戦って、いったい温度差、どんだけー?

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