画像: <MotoGP>第9戦 ドイツGP 決勝レポート【勝負の分かれ目は…】

ライダーもチームも、タイヤサプライヤーも大混乱!

MotoGPの2016年前半戦が終わりました。全18戦中の9レース、やっぱりな、というレースと、ええええマジか、っていうレースが相半ばしてやはり今シーズンから大きく変わったレギュレーションの影響が、いろんなところに出ているようです。

ドイツGPが行なわれたサクセンリンクは、決勝日の朝から雨になりました。金曜は肌寒く、土曜は暖かい明るい晴天、なのに日曜は朝から強い雨。こうなるともう、ライダーもチームも、タイヤサプライヤーも大混乱。決勝レースも、タイヤが勝負のカギになりました。

レーススタート時、雨はやんでいたものの、路面はヘビーウェットで、当然のように全車レインタイヤ。ポールシッターのマルク・マルケスと3番手のバレンティーノ・ロッシが好スタートを切って、ロッシが序盤のレースをリードしますが、アンドレア・ドビツィオーゾとダニロ・ペトルッチのドゥカティ軍団がロッシをパス。しばらくペトルッチがトップを走ります。ペトルッチ、雨速いねぇ! それどころか、ドビもいるし、バルベラもレディングも速かった。大パワーだって言われているドゥカティ・デスモセディチですが、雨のコントロール性がいいんですねぇ。

画像: AD and DP passed VR!

AD and DP passed VR!

徐々に乾き出す路面だったが…

そんな展開の中、ポイントリーダーのマルケスがチョイ苦戦。ランキングを考えても、雨で速いロッシの後ろにはいたいんだけど、こらえきれずズルズルと後退。8番手あたりを走っていた18周目くらいにはオーバーランを喫し、一時は14番手までポジションを落としてしまいます。

これで勝負あったか--いよいよドゥカティが初優勝するのか…と誰もが思い始めた頃、異変が起きはじめます。

14周目、アンドレア・イアンノーネがピットインし、マシンをチェンジ。そう、ウェット路面だったのに、走行ラインはどんどん乾いていって「これはスリックでも行けるんじゃない? いやまだまだレインだろ」って展開になっていったのです。乾いていく路面をレインタイヤで走ると、タイヤがぼろぼろになっちゃうんで、上位4~5人のトップグループは、マシンを寝かせない直線部分では意識して濡れている場所を走って、タイヤ温度を下げようと必死でした。

しかし、一方インターミディエットで再スタートしたイアンノーネも、タイヤ交換直後にはまだペースを上げられず、レインタイヤ勢より速く走り始めるのは4~5周たってから。ちょうどこの頃、マルケスが消耗しきったレインタイヤで、こらえきれずにオーバーランしちゃうんです。

画像: 久々に出た!マルケスの「猿飛佐助マシンチェンジ!」 2台の間隔が「すげぇな

久々に出た!マルケスの「猿飛佐助マシンチェンジ!」 2台の間隔が「すげぇな

マルケスの快進撃ショーがスタート!

マルケスにしてみたら、「こりゃもうレインじゃ駄目だ。でもスリックもまだグリップしてくれないかも……」って気持ちでピットに入ったんでしょう。そしてチームが用意していたのはスリックタイヤ! ライダーはもう、文句言えないもんね、ここから全力で追い上げにかからないと。

しかしこの交換タイミング、スリックの選択がドンピシャだったわけです。トップグループのペースはみるみる遅くなり、19周目にはついにスリックを履く15番手のイアンノーネがトップを走るドビツィオーゾを上回ります。ちょうどこの時点でスリックタイヤを履いたマルケスの快進撃ショーがスタートするんです!

マルケスがピットインする前の周、トップとの差は実に38秒0。これが19周に36秒3、20周目に31秒6、21周目は26秒2、22周目は19秒4、そしてこのあたりで上位陣もバタバタとピットインし、マルケスとトップのジャック・ミラーとの差は23周目に10秒7、24周目には2秒6、そしてその周のうちにトップに立ってしまうのです!

上位陣にしてみれば、スリックを履いているイアンノーネがタイムを上回ってきたらピットへ!が理想なんですが、4~5台のトップ争いで、ひとりだけピットに入るには勇気がいるものなんです。ロッシも「BOX」って表示されたサインボード、ずっと無視してましたからね。「ピットに入れ?冗談じゃない、ドビはまだ入ってないじゃないか」ってね。マルケスも、あのオーバーランがなくてトップ争いをしてたら、もっとピットに入るタイミング、迷ったはずです。

画像: 見てください、走行ラインだけ乾いてるこのコンディション! 幅2mくらいかな、ここにピタリとマシンを乗せてくるマルケスの走りがスゴい!

見てください、走行ラインだけ乾いてるこのコンディション! 幅2mくらいかな、ここにピタリとマシンを乗せてくるマルケスの走りがスゴい!

結果、いち早くスリックに履き換えたマルケスがガンガンに攻めていく中、レインタイヤを壊さないように細心の注意を払って、よろよろ根性比べをしていたトップグループは、マルケスに先行を許し、自分たちがスリックに変えたてでまだペースが上げられないあたりでも、すでにスリックを履いて5周6周しているマルケスのペースに追いつけるわけはありません。

結局、最大20秒以上のブッチギリでマルケスが優勝を飾りました。ロッシはどうした、ピットアウト後にもぜんぜんペースが上がらなかったじゃないか、と思ったら、ピットに用意されていたのは、前後にインターミディエット(=溝つきスリックタイヤ)を履いたマシンでした。ロッシがピットのタイミングを誤り、ピットはタイヤ選択を誤った、ってことですね。

画像: クールダウンラップ ロッシのタイヤがインターミディなのが見えますね スリックだったらもう少し…ね

クールダウンラップ ロッシのタイヤがインターミディなのが見えますね スリックだったらもう少し…ね

ちなみに、ミシュランが発表したピットアウト後に履いたタイヤは以下の通り。ほんのちょっとでも雨が降ったら、または乾くタイミングが違っていたら、また結果もがらりと変わったんだろうなぁ、と思わされたドイツGPでした。

ドンピシャのタイミングでマシン交換を済ませたのがマルケス。風は、またマルケスに吹き始めましたね。

順位 ライダー    ピットアウト後のタイヤ
1  マルケス    F/Rスリック
2  クラッチロー  F/Rスリック
3  ドビツィオーゾ Fインター/Rスリック
4  レディング   F/Rインター
5  イアンノーネ  F/Rインター
6  ペドロサ    F/Rスリック
7  ミラー     F/Rスリック
8  ロッシ     F/Rインター
9  バルベラ    Fインター/Rスリック
10  バウティスタ  F/Rインター

写真/Honda YAMAHA DUCATI motogp.com

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